豚コレラ3県に拡大 三重県の養豚場 国内32例目

 三重県は24日、いなべ市の養豚場で豚コレラの発生が確認されたと発表した。同県の養豚場での豚コレラの発生は初めて。養豚場での発生は岐阜、愛知県と同県の3県に広がった。昨年9月の岐阜市での発生から数えて国内32例目。

 三重県は、鈴木英敬知事を本部長とする本部員会議を開き、対応を協議した。陸上自衛隊にも災害派遣を要請。県職員らで防疫措置に当たる他、疑似患畜を確認した養豚場が飼養している約4000頭を殺処分する。

 県などによると、22日午前にこの養豚場から「豚2頭が死んでいる」と通報があった。同日、県の検査で豚コレラの疑いが生じ、23日に国の研究機関で遺伝子解析したが、臨床症状と検査結果が一致せず、再検査をした。再度検体し検査したところ、24日に疑似患畜であることが判明した。

 豚コレラは昨年9月以降、岐阜と愛知の両県でこれまで31例発生。殺処分となった頭数は約12万頭に上る。感染拡大の要因とみられる野生イノシシからの陽性反応はこれら3県の他に、長野や福井の近隣県にも広がっている。
 

防疫措置で「重大局面」 日本養豚協会 香川雅彦会長


 三重の養豚場での感染を受け、日本養豚協会の香川雅彦会長(宮崎県川南町)は「これまでとは異なる重大局面となったと認識している。豚への地域限定でのワクチンを要請せざるを得ない」と受け止める。ワクチン接種後の流通体制が防疫指針に明記されていないことから混乱を招く恐れがあるといった複数の懸念事項は残るが、流れが変わってきたとみる。香川会長は「個人的には農相が言うワクチン接種の判断の時期にきていると考える。ワクチン接種後の課題を一つずつ精査していかなければならない」と強調する。

 会員農家内ではワクチンへの慎重論もある。現在、同協会は全会員農家に地域限定ワクチンへの賛否を調査中で、結果を踏まえ8月初旬には農水省に要請したい考え。
 

[解説] ワクチン検討 声高まる


 養豚場での豚コレラ発生が3県に拡大した。県をまたいでの新たな発生は、2月の愛知県以来。ウイルス陽性の野生イノシシは福井県、長野県にも広がっている。昨年9月の岐阜県での発生から間もなく11カ月だが、歯止めがかからない。農場の被害防止と発生農家の経営再開に向け、防疫指針では想定していない豚への予防的ワクチンを使うかどうかの検討を求める声が強まるのは必至だ。

 野生イノシシには経口ワクチンと捕獲で対応を進めているが、範囲は広がり、成果の確認には時間がかかる。豚へ予防的ワクチンを使うことで、万一、養豚場にウイルスが侵入した場合でも、まん延を防げる。陽性イノシシが多発する地域でも経営が可能になるメリットがある。一方でデメリットもある。特に①清浄国認定②接種範囲③接種豚の流通──の3点が整理すべき事項だ。

 ①について国際獣疫事務局(OIE)の清浄国認定は、豚へのワクチンを使うと無効になり、輸出入に影響が出る恐れがある。ただ、②の接種範囲を全国ではなく地域限定にした場合は「清浄地域」の申請が可能となり、貿易の影響は最少減にできる期待がある。

 ③は、地域限定の豚ワクチンを選択した場合だ。豚ワクチンは10頭に1頭の割合で抗体が不十分になり、その豚はウイルスに感染してしまう。OIEはワクチンを打った豚も食用にして良いとする。

 しかし、万一感染豚が流通すれば、生体、肉ともに他の農場や野生イノシシへの汚染を引き起こす恐れがある。そのため、「清浄地域」を目指すには、と畜場や流通の範囲をワクチン接種地域内に限定する必要がある。豚のワクチン利用には、慎重な議論の上での決定が求められる。 
 

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