熊 各地で被害相次ぐ 今年は厳重警戒 

放牧場の飼料タンクの中で見つかった熊3頭(栃木県塩谷町で=同町提供)

 各地で熊による被害や目撃情報が相次いでいる。人に危害を加えるだけでなく、北海道では放牧中の乳牛を襲う事件も発生。栃木では、飼料の貯蔵タンクに熊の親子が落ちるという被害も出ている。主食となるブナの大凶作が大きな要因とみられ、専門家は特に東北で「今年は熊が出る年だ」と言い切る。夏から秋にかけての入山には注意が必要だ。
 

山菜採り、散歩中に遭遇 人家や牧場にも


 栃木県内での熊の目撃情報は、4月から7月25日までで既に55件と、早くも昨年度1年間の61件に迫りつつある。5月中旬には塩谷町の山林で60代の男性が熊に太ももをかまれ、軽いけがをした。6月下旬からは日光市で目撃情報が相次ぐ。

 7月14日、塩谷町の町営豊月平放牧場で、飼料タンクの中に入り込んだ親子とみられる熊3頭が見つかった。町は熊を外に出そうと18日午後にクレーンを使い、高さ6メートルあるタンクを倒した。2頭は山に去ったが、親熊とみられる1頭はタンク内で死んでいたという。県や市町は、パトロールの強化やちらしの配布、小・中学校で熊に関する授業を展開するなどして注意を呼び掛けている。

 6月に入ってからは那須塩原市や那須町、足利市、矢板市、佐野市などで目撃情報が急増。日光市では6月下旬から20件以上目撃されている。民家や会社の敷地内などに出没しており、世界遺産の日光東照宮付近でも観光客に目撃された。

 県は「熊は臆病なので、まずは熊に出合わないようにする。1人での行動は避け、ラジオや鈴などで音を出し人の存在に気付かせ、近づかせないようにしてほしい」(自然環境課)と呼び掛ける。

 東北でも被害が続出している。岩手県北上市では7月14日、散歩中の50代男性が熊に遭遇し軽傷を負った。宮城県では同11日、蔵王山の山頂付近で山形市の80代の男性が足をかまれるけがをした。17日には、山形市の山林で山菜採りをしていた60代の男性が頭などをかまれる被害もあった。

 秋田県の4月から7月21日までの目撃件数は、前年同期より272件少ない359件だが、捕獲数が7月15日現在で前年同期より7頭多い116頭となっている。県は11日付でツキノワグマに関する注意報を発令、一部地域で入山規制を行うなど警戒を強めている。

 島根県鳥獣対策室によるとツキノワグマ捕獲数は7月24日現在で72頭、目撃は6月30日現在で334件と過去最多。島根、広島、山口の3県にまたがる西中国地域個体群は環境省が絶滅の恐れがあるとしてレッドデータブックに記載し、保護計画に基づき管理してきた。近年、若齢個体の捕獲が増えており、生息頭数が増えているとみている。

 

 

ブナ凶作予想 


 林野庁東北森林管理局管内(青森、岩手、宮城、秋田、山形)で毎年度行っているブナの結実予測によると、今年度は青森で凶作、それ以外の県は大凶作と予測されている。同庁によると、ブナは豊作の後は凶作になる傾向があり、前年度が豊作だった山形では、今年度は特に大凶作となる予測となっている。

 森林総合研究所東北支所動物生態遺伝チームの大西尚樹チーム長によると「ブナの結実と熊の出没は密接にリンクしている。東北では、今年は熊が出る年と断言できる」と分析する。東北以外でも山の実りと熊の出没は関係しており、山の実りが少ない年は出没が多くなるという。

 近年はハンターの減少や中山間地域の過疎化、耕作放棄地の増加などで熊が増えやすい環境にある。頭数そのものが増え、分布域が広がっているとの声もある。大西チーム長は「全国的に頻繁に出没する状況が普通になってきている」とみている。 
 

乳牛襲われる 北海道標茶町


 北海道標茶町下オソツベツ地区で放牧中のホルスタイン牛1頭がヒグマに襲われて死亡する事件が発生した。7月16日午後3時半ごろ見回り中の牧場主が発見し、地元警察署に届けた。乳牛は2歳の雌で、10月に分娩(ぶんべん)予定だった。襲われた乳牛にはヒグマの爪痕や腹部に裂かれた痕があった。同町は直ちにファクスとメールで注意を促した。

 地元猟友会によると、ヒグマが家畜を襲う事案はここ数十年聞いたことがないという。
 

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