豚原皮 供給過剰で価格暴落 在庫山積み、業者窮地に 輸出頼み…廃業も

加工済みの豚原皮が積み上がる倉庫。世界的な供給過剰で価格は急落し、業者は危機的状況だ(東京都墨田区で)

 革靴製品などの原料となる豚原皮の価格が暴落し、加工業者が窮状を訴えている。国産の販売先は9割以上を海外に頼る中、世界的な供給過剰を受け、輸出価格はこの1年で半額以下に急落した。業者は加工費を賄えず、経営は赤字だ。豚コレラの国内発生で一部国への輸出停止も重なり、今後さらに厳しさを増す恐れがある。関係者からは事態の改善を求める声が上がっている。(鈴木薫子)
 

米国の牛皮需要を奪う


 国内有数の原皮製造量を誇る、東京都墨田区八広地区。荒川沿いに、原皮業者の倉庫が立ち並ぶ。倉庫内で原皮の加工作業が行われている横に、輸出を待つ在庫が積み上がる。

 財務省の貿易統計によると、1~6月の豚原皮の輸出量は640万枚(1枚1・1メートル×1・5メートル)。輸出量に大きな変動はないが、価格は2018年から暴落している。同期間の1枚当たり輸出単価は260円。前年同期(635円)の半額を大きく割り込んだ。老舗業者・大津屋の林英彦社長は「利益が残らない。こんな危機的な状況は初めてだ」と漏らす。

 時間と労力がかかる原皮加工費は1枚250円ほど。今の輸出単価ではもうけが出ず、輸送費など手数料(1枚約45円)を引くと赤字だ。原皮を脱脂塩蔵後、国際基準で28日間倉庫で保管し輸出する。原皮業者でつくる東京芝浦原皮協同組合の理事長も務める林社長は「中小規模の業者の負担が大きく、廃業しかねない状況だ」と切実な思いを訴える。

 飼料や肥料にするレンダリング加工や、産業廃棄物へ仕向ける業者もあるという。「豚原皮は25度を超えると脂が溶けだす」(同)ため、荷が滞留することへのリスクが大きいからだ。

 原皮価格の暴落は、米国で牛の生産量が増え、世界的に在庫があふれたことが背景にある。供給過多となった牛原皮に豚原皮の需要が奪われ、国際価格が大きく下がった。安くて使い勝手が良い人工合皮の出回りも増え、原皮自体の需要も伸び悩んでいる。
 

引き取り先「なくなる」 食肉市場も影響


 原皮業者の経営悪化は、食肉市場にも影響が出る恐れがある。東京食肉市場は「原皮業者が廃業や撤退するようになれば、原皮の引き取り先がなくなる」と懸念。処理など一連の作業工程の一部が機能しなくなる危険性があるためだ。

 各地の食肉市場は、原皮業者の買い取り価格を引き下げて対応する。東京食肉市場は22日のと畜分から改定。豚原皮(40キロ以上)を20円安の1枚10円とした。1年前は150円だった。生産者への支払額が減ってしまう課題はあるが、業者の負担軽減を優先した。市場関係者は「過去最安値に当たる限界価格だ」と話す。大阪市食肉市場は1月末、60円から30円に変更した。
 

豚コレラ発生で台湾は取引停止


 国内で発生が続く豚コレラも追い打ちをかける。一部の国・地域に対しては、岐阜、愛知、三重などで生産、処理された肉や原皮の輸出ができない。輸出先は2国間の家畜衛生条件などに沿って決められ、昨年11月からは販売先2位の台湾への輸出が全面停止している。現在、原皮は輸出可能なタイに8割近くが集中し、「現地で在庫が滞留している」(別の原皮業者)。今後の輸出鈍化が懸念される。

 今後、豚コレラがさらに拡大すれば、輸出量が大きく落ち込む恐れがある。日本畜産副産物協会の原皮部会とレンダリング部会は、8月から対応を協議していく。垣内利彦副会長は「補助金の要請など国への早期対応を求めていきたい」と話す。

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