直売所、ネットが突然閉鎖 農家困った 販路失い憤り

宮原さんが利用していたアカウント。フォロワーは8000人を超える(佐賀県武雄市で)

 農家が突然、販路をなくして苦慮する事態が起きている。山梨県では農作物直売所が営業を停止し、出荷農家や新規就農者が影響を受けている。インターネットで商品を売買するサービスが突然終了を発表し、利用していた農家が苦境に立たされるケースもある。
 

就農の受け皿「早く再開を」 山梨県北杜市 道の駅直売所


 山梨県北杜市が8月から道の駅「はくしゅう」の農作物直売所を閉鎖したことで、農家に波紋が広がっている。昨年8月には6万6706人が利用していた人気の直売所で、休業を事前通告なしに知り、生産物の販路を閉ざされた農家らは困惑している。

 同市は、道の駅の運営を業者(指定管理業者)に委託していた。業者が度重なる業務改善命令を守らなかったことで、市は4月に業務取り消し命令を宣告。7月下旬には新たな管理業者が決まっていたが、レストラン部門の下請け企業が撤退せず、新規参入ができなくなった。業者とのトラブルから、市は安全に販売することができないとして7月30日、道の駅の一時休業を決定。翌日、利用者らへの説明会を実施した。

 道の駅ではレストラン部門だけが経営されている状況。市によると、レストラン部門の下請け企業が撤退しない限り、直売所など道の駅の他の施設は再開しないという。

 道の駅休業を直前に知らされた農家からは、疑問の声が上がる。60アールで米やきのこ、野菜を栽培する女性(41)は「農家にとって直売所は大切な場所。休業を知った時は、あぜんとした」と振り返る。同市は移住希望者が多く、直売所の休業で新規就農者の参入が鈍ることなどに、農家から懸念の声も出ている。「行政、管理者、生産者のコミュニケーションが円滑になれば解決する問題ではないか。新規就農者にも影響は大きく、早く再開してほしい」と訴える。

 市は直売所で農産物や加工品を販売していた生産者の代表者ら7人の利用申請を受け、3日から販売所の貸し出しを始めた。農家は従来のバーコードを読み取る「ポスレジ」は使えず、直接販売形式で農産物を販売している。貸し出しは9日まで。それ以降の利用について、市は「道の駅の再開めどはたっていない。貸し出しについては、再申請などがあれば対応していきたい」としている。
 

顧客、動画設備全て“水の泡” 「メルカリチャンネル」


 動画を配信しながら、視聴者に商品を買ってもらう「メルカリチャンネル」がサービスを中止し、農産物販売に利用していた農家が途方に暮れている。通知は終了の1カ月前。サービス終了は違法ではないものの、農家は用意していた農産物の販路を別に確保する猶予もなく、「常連客との連絡手段もなくなった」と憤っている。

 佐賀県武雄市で発芽ニンニクを生産する宮原龍磨さん(29)が、メルカリチャンネルで抱えていた固定客、フォロワー数は8000を超す。宮原さんが動画を配信すると、フォロワーのスマートフォンに通知が届き、購入を促す仕組み。7月8日にサービスが終了したことで、動画配信を繰り返して2年間積み上げてきた宮原さんの努力が水の泡になった。

 サービスは、フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京都港区)が運営する。メルカリはインターネット上で個人が品物を売買できるサービス。月に1000万人が利用しており、業界では最多。通常、商品紹介は文章と画像でまとめるが、動画で商品の説明をしながら販売するメルカリチャンネルを2017年12月に開始していた。社会的な信用度が高い上場企業とあって、宮原さんにとって終了は寝耳に水だった。慌てて運営側に連絡したが、「サービス中止は決まったことだ」の一点張り。動画配信のために自宅に設けたスタジオをはじめ、今後の販売を見込んで育てた農産物についても保証されなかった。

 同社が引き続きサービス提供をするフリーマーケットアプリのメルカリへの出品も認められなかった。個人間で取引するサービスのため、「法人として登録していたので利用資格がない」と通告があったという。「対応がひどい。8000人の顧客にどれだけ価値があると思っているのか」と宮原さんは憤慨する。

 宮原さんの他にも、福岡県久留米市の葉物農家など利用している生産者はいた。サービスを利用して収益を得る事例が繰り返しテレビで報道されたため、後を追う農家が多かったとみられる。

 メルカリは日本農業新聞の取材に対し、サービスを終了した理由を「経営資源を集中するため」と回答。急なサービス終了の理由は明かさなかった。影響を受けた農家の数や救済措置についても回答しなかった。

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