荻原博子さん(経済評論家) 生産地とのつながり 安心 

荻原博子さん

 うちの子が生まれた時に、島根県の木次乳業というところから牛乳を取り始めました。元々うちは自然食への関心が高かったので、化学肥料を使わない牧草で育てた牛の乳で作っている点に引かれたんです。
 

農業視察で再開


 おいしくてずっと取り続けてるんですが、何年か前に農業視察で各地を回っている時に、ある看板が目に入ったんですよ。「このマーク、どこかで見たことがあるな」とよく見たら、木次のだったんです。そこで訪ねてみたところ、牛が本当にのんびりと草をはんでいました。ストレスのない育ち方というのはこのようなことかと感心。牛乳を作る過程も見せてもらって、とても安心しました。

 四国の友達のところに遊びに行った時も、同じような経験をしました。私が取り寄せている神山鶏の養鶏場が近くにあったので行ってみたら、山の中の実に良い環境。自由に動き回れる広い敷地で育てられていました。

 このように生産の現場を見ることで安心できるのですが、実際には生産者と消費者とが切り離されてしまっているのが現状です。

 消費者はスーパーなどで農産物を購入します。そこに並んでいるのは、同じサイズのキュウリだったり、同じ形のトマトだったり……。スーパーの規格に合わないものは、生産の段階で廃棄させられています。これは農家の方にとって、胸の痛む作業でしょう。

 世界中で飢えている人がたくさんいる中、生産段階で既に大量の食品ロスを出しているのです。

 幸いインターネットの時代で、消費者が直接、生産者から購入することが容易になりました。

 

直売所ならでは


 農家の方は、自分が育てたかわいい野菜、果物、畜産物を、自信を持って消費者に届ける方法を探ってください。道の駅や直売所を利用する手があります。

 静岡の直売所に行ったら、イチゴの生産者の写真と電話番号が出ていました。この方法なら、消費者は電話で問い合わせることができます。話すことで生産者の人となりや考え方も知ることができるでしょう。もし畑や農園が近くだったら、見学に行き、直接話すこともできるかもしれませんよね。

 生産者とつながることで、消費者は作物がどのように作られるのか学べます。逆に生産者は、消費者の嗜好(しこう)や考えを知ることができます。昔は食管制度があって、米は官制相場でした。自由化されたことでいろんな米が開発され、安い米や自分好みの味を選べるようになりましたよね。つながることで、両者がウィンウィンの関係をつくれるわけです。食べ物は人が生きていく力の源ですから、大事にしないといけません。

 残念なのは、農業を自由貿易協定(FTA)でアメリカに売り渡してしまおうという安倍首相の考えです。

 ヨーロッパやアメリカの農家こそ、“補助金漬け”です。というのも欧米の政府は農業を安全保障の一環として捉えていて、いざという時は自国で生産した食料で国民の生活を保障できる政策を取っているからです。

 21世紀は食料の世紀。世界的に食料が不足する事態が起きると予測されています。その時、食料を海外から買おうとしても売ってくれる国はありません。

 農業は本当に大切な産業です。生産者と消費者の双方が得をする仕組みが作られることを期待し、政府には自国民を守る政策を進めてほしいと願っています。(聞き手・菊地武顕)

 おぎわら・ひろこ 1954年、長野県生まれ。20代で満州引き揚げ者のルポ『満州・浅間開拓の記』を著したが、棄民政策の顛末(てんまつ)があまりに衝撃的過ぎ、ルポライターを断念。ビジネスの分野での執筆を開始した。経済の解説と家計の大切さを説くことで人気に。最新刊に『荻原博子の貯まる家計』(毎日新聞出版)。
 

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