心を亡くすと書く「忘」は、この人たちのためにあるのかもしれない
2019年08月09日
心を亡くすと書く「忘」は、この人たちのためにあるのかもしれない。多くの反対の声をよそに核兵器拡大に踏み出す▼米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領である。今月、中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄し、失効した。相互不信や軍事増強する中国への脅威を口実にするが、かつて米ソで演じた核競争の恐怖を忘れたか▼唯一の被爆国である日本がこういう時にこそ毅然(きぜん)と意見すべきなのに“無言”である。「核保有国と非保有国の橋渡しに努力する」と安倍晋三首相は言う。しかし、保有や使用を全面禁止する核兵器禁止条約にすら背を向けたままでは、被爆者から「ごまかしだ」との批判を浴びても仕方あるまい▼先日「原爆稲」を見た。74年前に長崎の爆心地に近い浦上天主堂横の水田で奇跡的に実ったもみを九州大学農学部の調査団が採取した。その“子孫”を心ある人たちが保存し続ける。放射線の影響で傷ついた稲は、出来秋になっても半分の穂が実らない。14年前から保存する上野長一さん(栃木県上三川町)は、「毎年空のもみを見るたびに原爆の怖さを思い起こす。大事な生き証人です」▼きょうは長崎原爆の日。無謀な為政者が忘れ去ろうとも、「原爆稲」は核の恐ろしさを伝え続ける。これからもずっと。
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農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
担い手育成対策などには64億円を計上。40歳前後の就職氷河期世代に就農準備交付金を支給する他、50代の就農研修にも助成する。
棚田地域振興法の制定を受け、棚田・中山間地域対策に282億円を盛り込む。
公共事業費は2991億円。うち農地の大区画化・汎用化に270億円、水田の畑地化などに566億円を計上する。台風19号などの復旧対策は公共、非公共合わせて2144億円。
危害分析重要管理点(HACCP)に対応した輸出施設整備などに108億円、豚コレラ(CSF)やアフリカ豚コレラ(ASF)などの家畜伝染病予防費に57億円、先端技術を活用したスマート農業技術の開発・実証プロジェクトに72億円を計上する。
農林水産関係補正予算案は同日、農水省が自民党農林合同会議に示し、了承された。政府は13日にも補正予算案を閣議決定し、年明けの通常国会に提出する。
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2019年12月13日

Kura Gelate(クラ ジェラート) 宮城県大崎市
日本酒「宮寒梅」の醸造元である宮城県大崎市古川の合名会社、寒梅酒造が販売するオリジナルアイス。味は「古川いちごジェラート」「大吟醸酒粕(さけかす)ジェラート」「大吟醸酒粕&古川いちごジェラート」の3種類。同酒造の酒粕とJA古川いちご部会が生産した「古川いちご」を使用する。
商品開発をした同酒造の岩崎真奈さんは「古川にもおいしいイチゴがあることを知ってもらい、大人だけでなく、子どもにも喜んでもらえればうれしい」と話す。
1個(90ミリリットル)350円(税別)。同酒造で販売。全国発送もしている。問い合わせは合名会社寒梅酒造、(電)0229(26)2037。
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2019年12月10日

基盤強化プログラム 生産拡大へ数値目標
政府は10日、安倍晋三首相をトップとする農林水産業・地域の活力創造本部の会合を開き、輸出向けの産地形成や担い手不足などに対応する「農業生産基盤強化プログラム」を決定した。輸出拡大をにらんだ和牛生産の倍増や水田農業の高収益作物産地500カ所創設などの新たな数値目標を設定。2019年度補正予算や20年度予算に達成に向けた経費を計上するが、万全の財源が確保できるかが問われる。
和牛倍増 加工野菜の需要奪還
安倍首相は会合で「安心で安全な日本の農林水産物が世界に羽ばたくチャンスは今後ますます広がっていく」と強調。輸出拡大や先端技術を活用したスマート農業の推進には「しっかりとした生産基盤が欠かせない」との認識を示した。
江藤拓農相は、同日の閣議後会見で「最重要課題の生産基盤強化を目的に取りまとめた」と説明。現在検討している補正予算を含め「切れ目のない対策を講じていく」との考えを示した。
プログラムは11本の柱で構成。日米貿易協定による牛肉輸出枠の拡大などを念頭に「さらなる輸出拡大」を真っ先に掲げた。来年4月に農水省に輸出の司令塔組織を設置し、輸出拡大に向けた新戦略を定める。
和牛生産は、米国や中国への輸出拡大を見込み18年の14万9000トンから35年に30万トンまで増やす目標を設定。具体策として繁殖雌牛の増頭奨励金や和牛受精卵の利用促進などを打ち出した。
水田農業対策では、輸入品が多い加工・業務用野菜の国産化や輸出向けの果樹栽培を念頭に、主食用米から高収益作物への転換を促し、25年度までに500産地の創出を目指す。高収益作物を導入する産地に水田の基盤整備や機械・施設の導入、販路開拓などを一体的に支援する方針だ。
「中山間地域や中小・家族経営も含め、幅広く生産基盤の強化を図る」とも明記。24年度までに地域資源を活用して中山間地域の所得向上などに取り組む250地区を創出することも盛り込んだ。
他に、加工・業務用野菜の出荷量(直接取引分、18年度は98万トン)を30年度までに145万トンに拡大することや、25年までに担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することなども目標に据えた。
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2019年12月11日
JA事務効率化 デジタル化で職場改革
働き方改革が問われている。JAも企業と同様に、労働生産性と従業員満足度を高めていかなければ、経営の安定も意欲ある職員の確保も難しい。そのためにはまず、日常業務の効率化が必須だ。改善効果の高いロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を活用し、働きがいのある職場づくりを進めたい。
JA職員の仕事実態を見ると、紙と電話とファクスへの依存度が高い。これに対し企業の世界では、情報通信技術(ICT)を使った業務のデジタル化が急ピッチで進む。インターネット交流サイト(SNS)での従業員間の打ち合わせやネット会議は当たり前。パソコン事務の自動化、顧客データの活用、人工知能(AI)による業務改善にも積極的だ。このままではJAの職場はさながら「旧人類化」することが心配される。
業務のデジタル化に向けてやるべき課題は多いが、取り組みやすいのはRPAを使った効率化である。高齢の組合員が多いため、JAの業務は手書きの注文書でのやり取りが一般的だ。それを職員がパソコンで購買システムにデータ入力するが、繁忙期ではその作業に忙殺されるといったことが起こる。
こうした事務作業を軽減するのがRPAだ。手書きの注文書をスキャナーで読み取り、光学式文字読み取り装置(OCR)でデータ化する。これだけでも人力頼みの入力作業を大幅に効率化できる。データを使ってのさまざまなパソコン事務は、PRAを使えば自動化できる。
RPAは元々、ホワイトカラーの仕事を効率化するためのシステムである。データ入力以外にも、データの加工処理、正誤照合といった仕事で威力を発揮する。高度なプログラミングはできないが、やり方が決まっている定型業務、繰り返しの業務といった分野に向いている。
数年前にメガバンクの事務部門で活用が始まり、一般の企業でも広く導入が進む。JAでの普及は遅れていたが、JA山口県下関統括本部が2018年に始め、資材の予約注文の入力時間を8割削減するといった活用実績を上げた。現在、営農指導や信用渉外力の強化、内部統制の効率化など、幅広い業務の改善を目指すプロジェクトが稼働している。
メリットは事務効率化だけではない、同本部は生産部会の会員一人一人にその人だけの営農指導書を作成し、数字に基づく経営相談を実施。会員から喜ばれている。RPAで資料作成のプログラムを組み、営農指導員に負荷をかけずに作ることができる。資料作りに費やす時間を現場での営農指導の仕事に振り向けられることは、本人の意欲向上にもなる。働き方改革にまでつながった事例といえる。
国産のRPAなら、導入費用はさほど高くはない。同本部には全国各地のJAから視察が相次いでいる。横展開による意欲の高い職場づくりを期待する。
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2019年12月12日
全厚連 県段階支援で仕組み 経営早期改善へ
JA全厚連は、収支悪化が懸念される都道県郡厚生連の経営を早期に改善する仕組みを新たにつくり、支援強化に乗り出す。人口減などで経営悪化の厚生連が増える中、支援対象の基準を広げる。全厚連経営管理委員会会長が、収支が悪化する厚生連の会長に提言する仕組みを新設し、早期に警鐘を鳴らす。地域医療を提供し続けられる体制を整える。2020年度から実施する予定だ。……
2019年12月13日
四季の新着記事
師走も半ばになるとそわそわとし出すが、追い詰められないと筆が進まない
師走も半ばになるとそわそわとし出すが、追い詰められないと筆が進まない▼毎年恒例の年賀状である。日頃会えない旧友、お世話になった恩人への新年のあいさつだから、印刷文字だけでなく、何か一言書き加えたい。その作業に結構手間がかかる。最近は高齢を理由に「今年限り」を伝える「終活年賀状」が増えているという。絶縁状にしないためのポイントを本紙「くらし」面が紹介していた。皆に出したことを明記することが肝心だと▼長寿社会である。失礼にならないように元旦に届く期限日ぎりぎりまで賀状を出すのを控える人も増えたと聞く。当方に届く喪中はがきも80、90代がめっきり多くなった。それぞれの精いっぱいに生きた人生と大切な人を失った家族の悲しみを思う▼アフガニスタンで灌漑(かんがい)や農業指導に尽力しながら同国東部で殺害された医師中村哲さん(73)の遺体が帰国し、故郷福岡で告別式があった。深刻な干ばつと紛争で荒れた大地に井戸を掘り、命の水を引いた。「私たちの事業は確かに、水や食糧、最低限の医療という、単純に『生きるための戦い』である」(『医者井戸を掘る』)。その地道な取り組みが、すさんだ人々の心に信頼の種をまいた▼〈緑の大地計画〉は、きっと根付くだろう。せめてそう思いたい。
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2019年12月15日
生誕180年を迎えた近代絵画の祖、セザンヌの秀作がすごい
生誕180年を迎えた近代絵画の祖、セザンヌの秀作がすごい。今、フランス印象派の名品が来日中である▼英国が世界に誇る印象派の殿堂、コートールド美術館。あすまで東京都美術館で特別展を開いている。めったに国外に出ない傑作が多い。特にセザンヌの作品は故郷・南仏題材の物を中心に充実している。最晩年の未完の作「曲がり角」に驚く。画家の一徹さと執念が漂う▼来年、没後130年のゴッホ。オランダからパリに来て印象派に出会い、光と色彩の画風に変わる。死の前年の作「花咲く桃の木々」は穏やかで優しい。うろこ雲の空は点描画家スーラの影響か。農民の日々の営みを温かさを込め描く。浮世絵に刺激を受けたゴッホは、この作品にまだ見ぬ日本への憧憬(しょうけい)も重ねた▼印象派と言えば、モネと共に有名な〈幸せの画家〉ルノワール。今年で没後100年となり各地で特別展が相次ぐ。「靴紐(ひも)を結ぶ女」は、独特のふっくらとした女性が印象的で全体が赤みがかった色彩に。最後の情熱が絵に反映したのだろう。今回の特別展の目玉は印象派の父・マネの最晩年の傑作「フォリー・ベルジェールのバー」。絵には幾多の仕掛けや大胆な試み。印象派が花開く“起爆剤”となる▼圧巻の作品群に〈眼福〉の字が浮かぶ。そして感動が募る。
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2019年12月14日
現政権とは〈似て非なるもの〉だろう
現政権とは〈似て非なるもの〉だろう。句をたしなむ文化人でもあった。心に残るのは、首相退任時に詠んだ〈暮れてなほ命の限り蝉(せみ)しぐれ〉である▼中曽根康弘元首相は、功罪あるが戦後政治に大きな足跡を残した。小欄でも何度か取り上げ、5月29日付では衆参ダブル選も念頭に亥(い)年選挙と101歳の誕生日に触れた。それからちょうど半年後、11月29日の「議会開設記念日」に亡くなるとは、やはり政治の“申し子”だったのか。今につながる政治の源流で、官邸主導の礎を築く▼旧制静岡高校から東京帝大法学部、内務省とエリート街道を進み、海軍主計中尉として敗戦を迎える。一転して政治を志し戦後初の衆院選に28歳の若さで当選した。リーダーシップの根底には旧制高校時代の古典的教養があった。読書と思索を欠かさず文化人、学者らの幅広い見識を求めた▼親米路線、改憲、政治主導と中曽根、安倍両氏は一見似ているが中身と手法が違う。言い訳に終始する現政権とは異なり、中曽根氏は真っ向勝負の論戦こそ求めた。半面で農業面では両政権に大差はない。市場開放問題に直面し農協批判も表面化した▼今年の漢字一字は「令」に。改元を踏まえたこの1年を表す。きょうは正月事始め、すす払い。政治の“大掃除”も急がねば。
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2019年12月13日
笑顔がはじけた
笑顔がはじけた。そして誇らしい。きのうの〈桜の戦士〉凱旋(がいせん)パレードは、多くの人の祝福と共にあった▼まず印象的だったのは、〈ぐーくん〉こと韓国出身の具智元選手の全身から伝わる喜び。大仕事を終えた充実感だろう。巨漢を生かしスクラムの最前線で戦い、強豪チームを相手に一歩も引かない。日本代表は外国人が半分近い。日韓関係が最悪の中で、具選手への温かな拍手と声援に、スポーツを通した友好復活の芽を見た▼ラグビーは体の大きさもさまざま。多様性こそこの競技の素晴らしさの一つ。小柄なだけに逆に目立ったのが、スクラムハーフを担った田中史朗と流大の2選手。攻守逆転を何度も演じ、ベスト8につながる。共に166センチと一般人と変わらない体格だが、パスの達人で敬称の〈小さな巨人〉に納得する▼感極まったのは、やはりリーチ・マイケル主将の勇姿である。ピンチを何度も救った切れ味鋭いタックルに多くの勇気をもらう。高速ウイングで〈ダブル・フェラーリ〉の異名を持つ福岡堅樹と松島幸太朗の両選手は華やかそのもの。俊足は“チータ”に例えられる▼合言葉はワンチーム。先日の会見で中家徹JA全中会長も連帯や多様性など「協同組合にも通じるものがある」と。〈桜の戦士〉よ、感動をありがとう。
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2019年12月12日
今年は俳聖・松尾芭蕉がみちのく・東北へ旅立ってから330年
今年は俳聖・松尾芭蕉がみちのく・東北へ旅立ってから330年。紀行文『おくのほそ道』で珠玉の句を残す▼東京の出光美術館で開かれた特別展「奥の細道330年 芭蕉」を見て驚いた。最晩年に旅の情景を描いた「旅路の画巻」の公開は実に四半世紀ぶり。細く連なるリズミカルな文字は繊細な感性を裏付ける。当初の俳号・桃青(とうせい)の名もある。句に添えた絵は「蕉門十哲(しょうもんじってつ)」の一人、森川許六(きょりく)による。近江・彦根藩士で絵師、俳人、やり使いの名人でもあった▼『ほそ道』を軸に、数百年前後して日本の文学史に残る詩歌が残った。芭蕉は漂泊の歌人・西行500回忌に、歌枕の追体験に旅立つ。明治には短歌革新の正岡子規も同じ行路をたどり多くの名句を詠む▼謎多き人である。門下には武士も多い。旅に同行した弟子の河合曾良(そら)は幕府の巡見、情報収集役。大勢力を持つ伊達・仙台藩の動向を探る役割も担う。公称60万石だが実際は200万石近く。藩領内に入ると緊張が走る。〈夏草や兵 (つわもの) どもが〉など名句を残すが、身の危険を感じていたのか実際の滞在はわずか。『影の日本史にせまる』(嵐山光三郎、磯田道史著)に学ぶ▼600里の長旅から〈不易流行〉の境地に。絶え間ない変化は、“未知の細道”みちのくの情感がもたらしたのか。
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2019年12月11日
問題 次の文はある国会議員の雑誌への寄稿である
問題 次の文はある国会議員の雑誌への寄稿である。Aは誰か。「政府答弁のうちでも、総じてA首相の答弁が不親切で、しかも抽象的である。歴代首相でこれくらい答弁に誠意を欠き~」▼答えは吉田茂。議員は河野一郎である。寄稿では、衆院予算委員会での質問にまともに答えようとしなかった吉田を批判。経緯はこう。1953年7月、河野は、米国への日本の貸金約200億円がいつまでも返済されないことを「(政府の)怠慢」と非難した。お金は、米国が朝鮮に送った物資の代金。日本が立て替えた。吉田は交渉中だと反論し、詳しい説明を避けた。『忘れられない国会論戦』(中公新書)で知った▼「無い無い尽くし」のまま臨時国会が9日、閉幕した。日米貿易協定は、野党が求めた資料は出ず熟議もなしで承認。「桜問題」は名簿がなく、政権に疑惑を晴らす気もなく持ち越した。安倍首相は一問一答の委員会から雲隠れした▼河野は寄稿にこうも記した。「最高審議機関である国会が、茶番的な論議や政府のごまかし答弁ですむようなことは(中略)国政が腐敗するもと」▼河野は当時、鳩山一郎と共に吉田と凄(すさ)まじい権力闘争中だった。とはいえ、農相や副総理を歴任した自民党の大先輩。その言葉を首相はどう受け止めるか。
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2019年12月10日
「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」
「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」。78年前のきょう、太平洋戦争が始まったことを国民はラジオで知った▼歌人の斎藤茂吉はこう詠んだ。「たたかいは始まりたりというこえを聞けばすなわち勝のとどろき」。国民の多くが高揚していたという▼1931年9月18日、満州事変の勃発が世論の転機となる。近現代史作家の半藤一利氏は、戦争回避へ歴史を逆転させるチャンスが「(翌)十九日夜を起点とする二十四時間にあった」、鍵は「世論がどう動くかであった」(『戦う石橋湛山』)と書く。陸軍は警戒したが、新聞が号外戦を繰り広げ「マスコミは争って世論の先取りに狂奔」▼議会も翼賛化した。38年の国家総動員法の成立には抵抗を示したが、2年後には「反軍演説」を行った斎藤隆夫を除名。「議会は議論、討論する場であり、それを失っては国家はその骨格を失ってしまう」。ノンフィクション作家の保阪正康氏が『昭和史の教訓』に記す▼安倍政権は集団的自衛権の行使を認め、それを可能とする安保法制を強行、戦争に巻き込まれるリスクが高まった。いま海上自衛隊を中東に派遣しようとしている。報道と国会。権力監視の力が弱まれば歴史は繰り返す。次も悲劇として。肝に銘じたい。
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2019年12月08日
「月とスッポン」は非常に違いがあることの例えだが、月がスッポンの成長促進剤だとしたらどうだろう
「月とスッポン」は非常に違いがあることの例えだが、月がスッポンの成長促進剤だとしたらどうだろう▼月のリズムで餌を与えると早く育つことを、自動車部品大手トヨタ紡織新領域開拓部の田畑和文グループ長に教わった。卵からかえって3カ月後のスッポンに、24時間ごとと24・8時間ごとに餌を与え3カ月間育てた。すると前者では体重が3倍に、後者では4・1倍に▼24・8時間は月が次の日に同じ方角に見えるまでの時間。地球の周りを月は地球の自転と同じ方向に回っている。なので1日よりも長く時間がかかる。月が潮の満ち引きを起こす力「起潮力」が影響しているのではないかという▼月のリズムとは起潮力の変化の周期。植物工場でのレタスの実験でも月のリズムに合わせて光を調節すると収量が増えた。起潮力の影響は車のドアの材料となる植物の生育を早める研究で発見した。名古屋大学と共同研究も行う。持続的な食料増産など「社会貢献」(田畑さん)を目的にしている▼内閣府は、農作業の完全自動化など挑戦的な技術を「ムーンショット(月を撃つ)」と名付け研究開発を後押しする。温室効果ガスの排出削減策を話し合うCOP25がスペインで開催中だ。“月を生かす”といった、地球にやさしい技術を目指す研究にも期待したい。
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2019年12月07日
街を歩けば、掲示板の何と多いことか
街を歩けば、掲示板の何と多いことか。標識、標語、宣伝。つい見てしまうのが、お寺の掲示板である▼近くの寺は、ほぼ毎月、更新する。「自分が変われば相手も変わっていく」「実践こそ現状を変える」。説教臭くもあるが、妙にしみる時もある。気になる存在だと思っていたら、なんと「輝け!お寺の掲示板大賞」なるものがあった▼仕掛け人は、仏教伝道協会の江田智昭さん。聞けば、昨年7月、お寺の掲示板の写真の投稿を呼び掛けたのが始まり。4カ月で約700作品が集まった。2018年の大賞は「おまえも死ぬぞ」。お釈迦(しゃか)様こと釈尊の教えだとされる。生と死の本質に迫り、インパクトは絶大。これで認知度が高まった▼掲示板の言葉は、仏の教えから人生訓、著名人の名言までさまざま。寺の個性がにじみ出る。「掲示板はお寺と一般の人の境目にあり、双方をつなぐ存在」と江田さん。今年は925作品が寄せられた。5日に発表された大賞は「衆生は不安よな。阿弥陀動きます」。松本人志さんの「後輩芸人たちは不安よな。松本動きます」をもじったもの。全ての生き物の身を案じた阿弥陀仏の教えを伝えた▼衝撃を受けたのは、大分の寺に掲げてあった一言。「ばれているぜ」。深くて怖い。官邸前に張り出したい。
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2019年12月06日
テレビドラマ「水戸黄門」で、悪代官役を演じた俳優の訃報に触れ、名場面がよみがえってきた
テレビドラマ「水戸黄門」で、悪代官役を演じた俳優の訃報に触れ、名場面がよみがえってきた▼白ひげをたくわえ、好々爺(や)然とした黄門さまが、助さん、格さんを従え、諸国を巡りながら悪事を懲らしめていく。決めぜりふは「この紋所が目に入らぬか」。言わずと知れた徳川家の家紋が入った印籠である。悪人たち、一斉にひれ伏し一件落着と相成る。さしずめ今なら「安倍官邸」の紋所が、絶大な威光を発揮する印籠か▼黄門さまこと水戸藩第2代藩主・徳川光圀には、逸話や俗説が多い。「恐れ多くも先の副将軍」というのはドラマ上の設定。諸国漫遊というが実は関東近県しか歩いていないとも。これは『大日本史』の編さんで家臣を各地に派遣したことから尾ひれがついたようだ▼光圀は子孫のために9カ条の訓戒を残した。1条は「苦は楽の種、楽は苦の種としるべし」。ドラマ主題歌の冒頭〈人生楽ありゃ苦もあるさ〉はここから来たのだろう。「主人と親は無理を言うものと思え」。これも納得。主人をトランプさんに置き換えればよく分かる。「おきてを恐れよ」は、決まり事や法令を守れとの戒めである▼あすは黄門忌。現代によみがえれば忙しかろう。ぜひとも「令和の不平等条約」に喝を入れてもらいたい。「国益を一体何と心得る」
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2019年12月05日