[あんぐる] 湧き、流れ、潤す 東山円筒分水槽(富山県魚津市)

片貝川右岸地域に64年間、農業用水を供給し続ける東山円筒分水槽。カメラのシャッターを3秒間開くと、独特な高い筒から流れ落ちる水が糸のように写った(富山県魚津市で)

 巨大な筒からあふれ続ける清らかな水──。富山県魚津市にある農業用水の分配施設「東山円筒分水槽」の美観が注目を集めている。円筒分水としては珍しい、地面から大きく突き出した高い筒状の分水槽から流れる水は、見る角度や訪れた時間で表情を変える。

 この円筒分水槽は、流れが急で枯れやすい地域の主な水源、片貝川の水を公平に分けるため1955年に作られた。

 水田に面した山裾にあり、鉄筋コンクリート製で筒の直径が約9メートル。高低差は約3メートルある。水しぶきが空気中の熱を奪うため、辺りは真夏でもひんやりとしている。

 今も現役で、湧き出す毎秒約2トンの水を三つの用水に配分し、水田など約270ヘクタールを潤す。まず片貝川の黒谷頭首工から取り入れた水を、別の円筒分水槽で分ける。その一筋が川底の地下を横断するパイプを通り、サイフォンの原理でここに吹き出している。

 魚津市土地改良区の吉田研士課長は「見た目が珍しいだけでなく、地域にとっては片貝川右岸を潤す、欠かせない大動脈のような存在」と大切さを表現する。

 
夕暮れ時、水面に空の色が映った分水槽

 観光資源としても存在感を増している。「高い筒から流れ落ちる滝のような水が美しい」とテレビやインターネット交流サイト(SNS)で話題になり、5年ほど前から少しずつ見物客が増えている。市観光協会もホームページで「パワースポット」とアピールする。

 美観を守ってきたのは、水槽の清掃などを長い間続けてきた地元農家だ。

 ここから流れる水を利用する農家、関口正志さん(82)は、昔起きた水の配分が発端の「水争い」を覚えている。「今は円筒分水のおかげで安心して農業ができる。集落にとって平和の象徴であり、命でもある」と、この施設に寄せる思いを語った。(釜江紗英)

「あんぐる」の写真(全5枚)は日本農業新聞の紙面とデータベースでご覧になれます

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