閉鎖のJA支店 にぎわいの場として住民が“再生”

JA支店時代のカウンターやタイルを生かしたカフェの店内で作業する大谷さん(和歌山県海南市で)

 統廃合や経営合理化のために閉鎖し使われなくなったJAの支店が、地域活性化を目指す農家や住民たちによってにぎわいの場になった。和歌山県ではカフェに、福井県では住民の集いの場として活用。元JAの支店とあって住民の認知度も高く、人気スポットになっている。
 

カフェ開店 特産発信 和歌山県海南市


 和歌山県海南市にあるJAながみねの支店跡が、地域の農家らの手によってカフェに生まれ変わった。支店時代に使われていたタイル張りの床などをそのまま生かし、支店の雰囲気を残したデザインにしている。運営する農家らが、季節ごとにミカンやビワなど地場産果実を使ったジュースやパフェを提供。地元の農産物の情報発信や、地域内外の人が集まる交流の拠点を目指す。

 金融窓口のカウンターにタイル張りの床──。店内はJA支店の面影が残る。入り口には「ながみね農業協同組合大崎支店」と書かれたままだ。店舗名は「カモゴウ」。地元の農家らでつくる加茂川協議会が運営する。店の立ち上げや店内のデザインを考案したのが、協議会会長の大谷幸司さん(41)だ。大谷さんは同市出身で、2007年にUターン。県内の農産物を使ったドライフルーツの加工・販売をする他、ミカン農家と収穫を手伝う季節労働者のマッチングに取り組んでいる。

 「地域に飲食店が少ないため、人が集まれる場所をつくりたかった」と大谷さん。行政やJAに相談したところ、JAから10年以上も未利用となっていた大崎支店跡を紹介してもらい、借りてカフェにした。改装費用は約1000万円。1年ほどかけて改装した。

 店では旬の地元の農産物を使ったメニューが人気だ。ビワを盛り付けたパフェの他、ハッサクやミカンなどを店で搾ったジュースを1杯500円(税別)で提供。地元の豆腐店の豆乳を使ったドーナツや、和歌山市のコーヒー店から仕入れた豆を使ったコーヒーなども提供し、地場産を中心に県内産の食材にこだわる。

 3月に開店。40席あり、土・日曜日は約100人が来店する。店では、地元の農産物や、大谷さんが製造したドライフルーツなどの加工品も販売している。大谷さんは「地元の食材や景色など、地域の魅力を感じてもらえる場所にしたい」と意気込む。
 

気軽に集う 交流拠点 福井県あわら市 

  
 福井県あわら市のJR細呂木駅前にある「細呂木ふれあいセンター・らくーざ」は、地域住民が集まる憩いの場だ。2014年に営業が終了したJA花咲ふくいの旧細呂木支店を改修・整備し、16年7月にオープン。1日平均20人が訪れ、にぎわいをもたらしている。

 地元のNPO法人細呂木地区創成会が運営を担う。営業は月~金曜日の午前10時~午後4時。地元女性29人がボランティアで接客する。施設利用代は200円。食べ物の持ち込みは自由で、コーヒー、紅茶、ジュースを提供している。飲食スペースの横では、地元の農産物も販売する。

 2階にある36畳の和室は会議室として3時間1000円で貸し出す。落語会や音楽会の他、住民の絵や工作物を展示。特に毎年10月ごろ行われる、地元の山に落ちている小枝や木の実を使って人形や動物、城を模した作品を展示する「小枝アート」は評判が良く、多くの客が訪れる。

 JAは支店業務の終了後、建物を取り壊す予定だったが、細呂木地区創成会から賃貸依頼を受け、老朽化が進んでいたことや同会による大幅な改修工事が予定されていたことから、建物を無償譲渡することにした。

 改修費用は、既存施設を活用して交流拠点を整備する県の「福井ふるさと茶屋整備支援事業」を活用。同地区創成会の藤川龍七会長は「駅前で立地も良く、元JAということもあって住民の認知度も高い」と話す。

 JAは「支店として愛され続けた建物が再度命を吹き込まれ、地区の活性化や情報発信の場となっていることは素晴らしいこと。今後も笑顔が集まる場所として使われ続けてほしい」(企画管理課)と期待する。

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