戦後最長・安倍政権 官邸農政 再点検の時だ

 安倍晋三首相の通算在職日数が24日、大叔父でもある佐藤栄作を抜き、戦後最長の長期政権となる。一方で課題も山積みだ。特に農業では、空前の貿易自由化と規制改革推進で、生産現場の不安は募る。安倍農政は一体何をもたらしたのか。厳しく問われなければならない。

 安倍首相は24日、第1次内閣も含め首相在職日数が2799日となり戦後最長となる。さらに、11月19日には日露戦争時の首相だった桂太郎に並び、翌20日には2887日と憲政史上最長となる。

 安倍首相の力の源泉は二つ。まず、選挙に強い。政権は選挙に勝利するごとに求心力を増す。6年8カ月前に民主党から政権奪還を果たして以降、国政選挙に連戦連勝を重ねた。特に今年は、与党が苦戦を強いられる12年に1度の「亥(い)年選挙」で、参院選の行方が注目されたが、与党過半数確保で乗り切った。

 もう一つは、官僚を自在に操る仕組みを確立したことだ。官邸主導で官僚を束ねる人事の一元化を果たし、統治機構を確立した。首相と運命共同体の「官邸官僚」の存在は、政策面でも官邸主導を決定付けている。

 憲政史上最長も射程に入った長期政権だが、ではどんな政策を進め、どんな結果をもたらしたのか。政権の評価は長短ではなく、問われるのは何を成したかである。政治で最も大切なことは、希望と未来を国民は抱くことができているかだ。

 参院選で自公政権は改選過半数を獲得した。だが、内実は、選挙区での有権者に占める自民絶対得票率は初めて2割を切った。比例区は野党合計得票が与党を上回った。焦点となった32ある1人区は東北、信越を中心に4野党統一候補の健闘が目立ち、自民の22勝10敗。この底流には自由化、農協改革、米政策など安倍農政への根強い不信感がある。

 日本農業新聞「論点」で山口二郎法政大学教授は、「民主政治の最大の敵は諦めと無力感だ」と指摘。その上で、東北、信越の選挙結果を「政治を諦めない。日本の民主政治にとって一筋の光」と評価した。

 首相は選挙期間中、農業生産所得増、若手新規就農者の増加、農林水産物・食品輸出の拡大を挙げ、安倍農政の成果を強調した。だが、いくら都合の良い数字を示しても、生産現場の農業者には空虚に響くだけだったのでないか。産出額は畜産や野菜の供給力低下に伴う価格上昇が大きい。食料自給率は37%と最低水準に低下した。自給力の根幹である生産基盤が大きく揺らいでいる。

 「令和農政」は、これまでの農業成長産業化へ比重を置いた安倍農政のリセットこそ問われる。戦後最長となる首相の役割は、地方と農村の「現実」に向き合い、持続可能な地域社会づくりへと政策転換することだ。それが希望と未来を取り戻す道でもある。 
 

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