普及事業への注文 持続可能な産地支援を

 農業者の減少が急速に進む中、各都道府県の普及指導員らが農業技術指導などを行う協同農業普及事業の重要性が増している。新規就農やスマート農業などへの対応に加えて、条件不利な中山間地域農業をどう守るか。各地の実態を踏まえた持続可能な産地づくり支援へ、普及事業をてこ入れすべきだ。

 普及事業は戦後の1948年に制定された農業改良助長法に基づき、国と都道府県が協同して実施。おおむね5年ごとに運営指針を策定し、その時代の農政と足並みをそろえる形で重点課題に取り組んできた。農業者からの多様な要望に応じるため、普及指導員の資質の向上や、高度で専門的な相談に対応する農業革新支援専門員の配置など、さまざまな体制整備も進めてきた。

 現行の重点課題は、農業の持続的な発展や食料の安定供給の確保、農村の振興、東日本大震災からの復旧・復興に関する支援。農業者の所得向上や地域農業の振興が目的で、新技術や新品種の実証導入や新規就農者の支援、6次産業化の推進、集落営農の組織化・法人化支援などにも取り組んでいる。

 とはいえ、農業者や農業分野の労働力不足は深刻で、従来の延長だけでは不十分だ。省力化や規模拡大に役立つスマート農業技術の開発と普及は加速すべきだ。規模拡大や法人化に十分対応できているのか、新規就農者の定着率をどう高めるのか。中長期的な視野で課題を洗い出し、普及事業を強化することが求められる。

 条件不利地域や離島への一層の目配りも必要だ。中山間地域では、高齢の農業者らが傾斜が急な畦畔(けいはん)の見回りなどをしている。その際、足を滑らせる恐れもある。だが、水田の水位や温度をスマートフォンで確認できる水位センサーを普及できれば、誰でも安全に管理できる。中山間地域など条件不利地で使えるスマート農業を広めることも重要だ。農業の持続的な発展や食料の安定供給の確保は、条件不利地域の農業も守ってこそ成し遂げられる。

 普及事業は、JAの営農指導と相まって地域農業を支えてきた。都道府県の普及職員数と協同農業普及事業費の確保も欠かせない。2019年度の普及職員数は7293人で、1998年度(1万634人)に比べ大幅に減った。事業費も98年度の713億円から2019年度には508億円まで落ち込んだ。職員数も事業費も近年は横ばい傾向にあるが、業務の負担は増えており、これ以上減らすことは許されない。

 農水省は、食料・農業・農村基本計画見直しの議論を秋にも本格化させる。地域に精通した普及指導員がさまざまな支援を行う普及事業は農政を推進する土台となるもので、基本計画とリンクした運営指針の策定が必要となる。生産現場の意見に耳を傾けながら時代の変化を見据えた事業の充実が求められる。
 

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