日米交渉大枠合意 情報開示し早期審議を

 日米両政府が貿易協定交渉で大枠合意した。9月下旬の首脳会談で署名すれば、政府は10月にも始まる臨時国会に協定案を提出する。環太平洋連携協定(TPP)以内なのか、国益に沿うのかを十分に見極め、閉会中審査も含めて早い時期に国会審議を尽くすべきだ。

 焦点となったのは日本の農畜産物の市場開放と、米国の自動車分野の対応。これまでに分かった情報によると、いずれもおおむねTPP以内の決着になる見通しだ。米国の関心が高い牛肉と豚肉はTPPを踏襲。牛肉は現行38・5%の関税を発効時から一気にTPP参加国と同じ税率まで引き下げ、最終的に9%まで削減する。豚肉は差額関税制度を維持した上で、低価格品の従量税(現行1キロ482円)を段階的に50円まで下げ、従価税を最終的に撤廃する。

 小麦は米国向けの輸入枠を設けるが、TPPで設定した米国向けの国別枠(7年目・最大15万トン)以下の水準に抑えたい考えだ。米も調整中。TPPで参加国全体に一括で低関税輸入枠を設定していたバターや脱脂粉乳など33品目は、米国への枠設定を見送る。

 農家は日米貿易協定交渉で自由化の深掘りをされることを懸念していた。このため、自民党農林幹部をはじめ政府・与党がTPPを上限とする落としどころを探ることで歩調を合わせた。米国が強引な主張を繰り返す場面では、日本側が席を立つ寸前の緊迫したやりとりもあったと言う。関係者は「自動車のために農業を犠牲にしたとは言われない内容」と説明する。

 とはいえ、課題も多い。米国はTPPで、日本から輸出している自動車にかけている2・5%の関税を25年かけて段階的に撤廃するとしていた。だが、今回は自動車の関税の扱いは継続協議となる見込みだ。その代わりに、日本からの輸出を制限する数量規制や追加関税を日本に発動しないことを確認したい考えだが、米国の自動車の関税撤廃というメリットはTPP以下にとどまる。

 トランプ米大統領は、来年の大統領選に向けて早期に成果をアピールしたいと焦っていた。これに対し、安倍政権も交渉が長引いた場合、過熱する米中貿易戦争の二の舞になることを強く警戒していた。早期決着とTPPの範囲内の決着の背景には、両政府のそうした思惑があったとみられる。

 このため、トランプ氏が再選されれば日本への市場開放圧力が再燃。米国の対日赤字問題がある限り、時間稼ぎの“一時休戦協定”となる可能性がある。

 日本の大型通商交渉は、米国が途中から交渉参加したTPPに日本も乗っかったことから始まった。その時に政府が訴えたのが、米国が自動車にかける関税の撤廃だった。それを得られないまま、農畜産物のかつてない市場開放が進んだことをどう考えるのか。情報開示と交渉戦略の総括が必要だ。
 

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