全て泥水に 豪雨禍の佐賀 水稲5000ヘクタール、大豆2650ヘクタール冠水

水没したままの農地や鶏舎、家屋など。水田があるのが分からないほど冠水している(29日、佐賀県白石町から大町町を撮影)

 九州北部を襲った大雨から一夜明けた29日、佐賀県内で大きな農業被害が出ていることが分かってきた。JAさがによると同日までに水稲5000ヘクタール超、大豆2650ヘクタールが冠水。野菜や農機などにも被害が出ている。県内には水に沈んだまま立ち入れない場所もある。農家らは、泥水に長く漬かったことで作物の生育に悪影響が出かねないと不安視する。被害の全容はなお分かっていない。
 

「経験ない」 全容見えず 大町町

 
 「ひどい」。JAみどり地区杵島支所営農経済課の福田昇悟さん(39)は水没した故郷を不安そうに見つめた。大町町福母地区は29日正午現在、水が引かず、農地が見えないほど冠水したままになっている。ヘリコプターが上空を飛び交う中、自衛隊員らが住民を次々とゴムボートで救助しており、周辺には緊張感が漂う。

 家族が地区の水田6ヘクタールを管理している福田さんは「1990年にも冠水被害があったが、今回はさらにひどい。作物への影響が心配だ」と眉間にしわを寄せる。福田さんによると、地区全体では20戸弱が水稲約27ヘクタールや大豆約16ヘクタール、キュウリ約20アールを栽培する他、養鶏を営む農家もいる。

 地区の水田1・2ヘクタールを担い手に貸し出しているという住民は「みるみるうちに水位が上がった」と災害発生の瞬間を振り返る。迫る水から逃げるように自宅の2階に上がり、28日午後6時ごろにボートで救助されたという。「農作物は泥水でかなりの被害が出るのではないか。農機も車も家も漬かった。経験のないことで、今後どうなるか心配だ」と訴える。

 同地区以外でも農業被害が相次いでいる。武雄市でイチゴ17アール、ブドウ30アールを手掛ける橋口康則さん(50)は「作物の被害は免れたが、かん水装置や加温機などのハウス付帯設備が水に漬かってしまった」と、険しい表情を見せる。周辺は家屋や商店などの浸水被害も深刻で、水が引いた後も土ぼこりが舞う。「百姓仕事だけではない。家の片付けなども大変だ」と嘆く。

 JA杵島支所の相島浩一郎支所長代理は「作物が水に漬かったことで窒息状態になり、収穫まで1カ月を切った水稲や開花期を迎える大豆の生育に響く恐れがある。病害も心配だ」と不安を口にする。「農機の故障でも思わぬ出費を強いられる。営農意欲を失いかねない」と農家の窮状を代弁する。

 JA営農部によると、県内では29日午後5時までに確認できた範囲でも、水稲は5018ヘクタールが冠水し635ヘクタールは完全に水没した。大豆は2650ヘクタールが冠水し561ヘクタールが完全に水没した。その他、アスパラガスやキュウリなどでも冠水被害が出ている。被害面積は拡大する可能性がある。

 佐賀県は28日に立ち上げた災害対策本部を中心に情報収集を進めている。ただ、29日午後の時点でははっきりした農業被害の報告は市町村から上がっていない。被害額・面積は不明という。

 県やJA職員の目視では園芸用ハウスが浸水した場所が複数あった。今後、アスパラガス、ナス、キュウリなどに生育不良が生じる恐れがある。水稲や大豆は冠水しているが、漬かった時間や深さにもよるため「影響は分からない」(農政企画課)という。

 県はJAと連携しながら「長雨・冠水対策の技術情報を農家に提供していく」(同)考えだ。

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