農業再建いつになったら… 台風21号から1年 ハウス復旧まだ6割 大阪 傷痕癒えぬまま

ハウスが再建できず作付けができない遊休地を見詰め、いら立ちをあらわにする杉本さん(大阪府富田林市で)

作業員不足が深刻 農家に負債ずしり


 近畿地方で200億円近い農業関連被害を出した昨年の台風21号から、4日で1年を迎える。農業用ハウスだけで50億円以上の損害を受けた大阪府では、いまだに再建できず作付けができない遊休地が目立つ。府によると、ハウスの復旧率は7月末現在で約6割(再建中含む)にとどまる。施設を建て直すための作業員が不足し再建への歩みが進まない現状に、地元農家らは「いつになったら元の姿に戻るのか」と、復旧を待ちわびている。(前田大介)

 「先が見えず、何度も農業をやめようと思った」。大阪府富田林市の園芸農家、杉本一義さん(43)は、いまだにハウスを建てることができない農地を見詰め、いら立ちをあらわにする。

 杉本さん方では55アールのビニールハウスが全・損壊。それも、300万円をかけハウスを修繕した矢先の台風襲来だった。ナスやキュウリなどを生産する施設は計19棟で、完全復旧するには約6000万円の費用が必要だ。ハウス建設は途上で、作付けができない遊休地が目立つ。

 「原状回復するまで待っていられない」と、杉本さんは傾いたハウスにビニールをかぶせ、一部ハウスで営農を再開。2018年度の売り上げは、例年より4割少ない1200万円だった。正社員やパートを含め約10人を雇用しており、減収でも給料を払い続ける。そのための運転資金として1200万円の借金をした。国などから補助が出るとはいえ、ハウス建設費の約2割に当たる1200万円は自己負担。借金と合わせると、計2400万円の負債がのしかかる計算だ。

 台風シーズンを迎えた今、「いつ台風が襲ってくるか分からない。次に被害を受けたら、離農は避けられないだろう」と、杉本さんは不安を募らせる。

 同府高槻市の農業ハウス施工業者は、今もハウスの建設に追われる。これまで大小約40経営体のハウスを施工。現在も依頼の多さに手が回らない状態だ。この業者は「農業が盛んとはいえない大阪には、もともとハウスを施工する従業員が少ない。その上、求人を出しても人が集まらない」と肩を落とす。

 大阪労働局によると、建設土木技術者の7月末の有効求人倍率は6・14倍。府内全産業の平均1・55倍に比べ、約4倍の開きがある。同局は「建設関係者によれば、東京五輪・パラリンピックによる建設需要で、待遇の良い東京へ施工業者が流れている」と言う。

 この業者のスケジュールは年末までびっしり。今年中に、大小約30経営体のハウスを建てる計画だ。「農家の求めに即応できないのが現状。このままでは年内に全てのハウスを施工できないかもしれない。民間企業だけでは人員確保も限界があり、行政の応援が必要だ」と訴える。府は「余力がある施工業者の情報をいち早くつかみ、農家に提供することで最善の支援をしたい」(農政室推進課)と強調する。
 

<メモ> 台風21号


 2018年9月4日に兵庫県に上陸。関空島(大阪府田尻町)で最大瞬間風速58・1メートルを観測するなど、風雨や高潮の影響で交通機関やライフラインに甚大な被害が出た。営農用施設や農作物など合わせた農業関連被害額は、近畿地方(2府4県)で193億3000万円に上った。中部地方も含めた死者は14人。 

 

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