豚コレラ発生1年…終息見えず 徹底管理に限界感 未発生でも募る不安

 豚コレラの発生が岐阜市で確認され、9月で1年が経過する。終息の兆しが見えず、感染イノシシが増える中で、養豚場での発生がない周辺県でも切迫感が高まってきた。衛生管理対策の徹底を急ぐものの、「限界がある」として離農も考え始める農家もいる。岐阜や愛知以外の養豚農家も苦悩しながら、経営の展望を模索する。
 

長野県飯田市


 長野県飯田市の「天龍峡黒豚」。母豚20頭を飼育する今村篤さん(48)が「名勝を生かしてこのふるさとをにぎやかにしたい」と考え、地域のイベントを企画する仲間や飲食店経営者と共に地域ぐるみで発展させてきたブランド豚だ。

 しかし、今村さんは今、苦悩の渦中にいる。「経営を続けられないかもしれないと離農の考えもよぎる。前にも後にも進みようがない」

 今村さんは35歳で両親が創業した養豚業を継いで以来、地域密着で養豚経営を進めてきた。母と2人で小規模ながら豚を育て、年間4分の1は地元向けに直売する。ブランド化をして10年、特別な営業はしたことがないが、口コミだけで広がり、人気の食材にまでなった。地域にとっても今村さんにとっても、天龍峡黒豚は誇りだ。

 しかし、両親が建てた豚舎は、築35年を超す。豚舎を張り巡らせるネットは、JAみなみ信州の協力で今年設置し、豚舎ごとに靴の履き替えも徹底するものの、不安点がいくつもある。生まれた子豚は豚舎から豚舎へ屋外を歩かせなければ移動できず、シャワーイン・アウトなどの設備もない。柵の設置もこれからだ。国の衛生基準に合致する豚舎の改修には多額の費用が掛かる上、岐阜などの最新鋭の豚舎でも発生していることを踏まえると、今村さんは「豚コレラが迫る中で投資はできない。1度感染したら再開できなくなる」とうつむく。

 4日現在、長野県内では養豚場での発生はないものの、県内でのイノシシの感染は80頭を超え、同市近隣の上伊那郡などでも見つかり、県内でいつどこで発生してもおかしくない。「覚悟はしているものの、発生すればどうなるか具体的には想像できない。感染し殺処分になれば地域に迷惑が掛かる」と今村さんは、不安を募らせている。

 JAでは感染イノシシの広がりを受けて7月に、豚コレラ対策本部を設置した。JAは養豚産業の県内屈指の産地で、管内のJA系統の養豚農家は10戸。JAによると管内の畜産の売り上げは30億円で、そのうち養豚は10億円に上る基幹産業だ。

 JAは豚コレラの感染リスクを少しでも軽減するため養豚農家が集まる部会などの開催を自粛する。農家からは「非常事態だからこそ、農家が集まるべきだ」などと声が上がるものの、侵入経路が分からない状況で集まることの危険性を踏まえ、苦渋の決断をしたという。JA対策本部は「集まらなくても、情報共有を綿密に進めていきたい」とする。
 

石川県かほく市


 石川県かほく市で母豚100頭を飼育する「河北畜産」は電気柵を8月に設置し、石灰をまき、今後はネットも張り巡らせて対策を進める。しかし、経営者の沢野明久さん(71)は、年齢などを考え来年で廃業する予定だ。豚舎は山から離れた住宅街付近にあるものの、侵入経路が分からないため感染の不安は拭えない。「岐阜や愛知などの状況を踏まえると若い農家は養豚に夢や希望も持てない。廃業は豚コレラとは関係ないが、こういう状況下で養豚業と離れるのは残念だ」と訴える。同県では4日現在、養豚農場の感染はないが、イノシシの感染が見つかっている。県内農家は、神経をとがらせて衛生管理対策を早急に進めている。
 

静岡県浜松市


 豚やイノシシの感染のない静岡県。それでも、養豚農家は不安を募らせる。母豚180頭を飼育し直売所も経営する浜松市の鈴木芳雄さん(70)は「神経をすり減らす日々だ」と疲れ切った様子で打ち明ける。柵の設置準備を急ピッチで進めている最中で、交差汚染もあるだけに、車両の消毒などでも厳戒態勢を敷く。

 「豚コレラのことを考えると投資もできない。気が気じゃない毎日だ」とため息をつく。 
 

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