北海道地震1年 険しい営農再開 仮設から通いでも「諦めぬ」 厚真町

収穫したカボチャを確認する山本さん(北海道厚真町で)

新たに購入した自家発電機を確認する坂野下さん(北海道別海町で)

 最大震度7を記録した北海道地震から、6日で1年を迎える。震源に近い厚真町では、仮設住宅から通いで営農を続ける農家が多い。営農可能な農地は町内でまだ6割。漏水や高低差がついたままの水田は200ヘクタール以上あるとみられ、農家は一日も早い復旧を望んでいる。(川崎勇、望月悠希)

 「とりあえずほっとしている」。同町で米と畑作を約9ヘクタール経営する山本隆司さん(54)は、震災後初めてカボチャの収穫期を迎えた。1年前、地震で近くの山が崩れ自宅が土砂に流された。2階で寝ていた山本さんは約80メートル流されたが、一命を取り留めた。1階で寝ていた父・辰幸さん=当時(77)=と母・リツ子さん=同(77)、妹・ひろみさん=同(50)=の名前を呼んだが、返事はない。3人は犠牲になった。

 被災前の経営面積は20ヘクタールで、水田は13ヘクタール。うち3ヘクタールが土砂で埋まり、今も復旧作業が続く。ただ営農は諦めない。山本さんは「農業をやめたいという思いにはならなかった。周りの人たちも続けたいという思いに賛同してくれた」と振り返る。

 「みなし仮設住宅」のアパートから片道10キロ。工事車両で混雑する道路を25分以上かけて移動し、農地を管理している。燃料費がかかり負担は増す。山本さんは「長い1年だった。土砂を撤去したら全ての農地で営農再開したい」と話す。

 町によると、市街地の仮設住宅から農地に通う農家は25戸。山本さんのようにみなし仮設住宅から通う人も含めると、さらに増えるという。

 土砂流入などで災害復旧事業の対象となった田畑は厚真町を中心に4市町で約150ヘクタール。9割以上を同町が占める。道によると、町内の営農可能な農地は約6割にとどまる。今年中に工事が完了し、来春の作付けには間に合う見通しだ。課題は荒れた水田の解消。被害がなさそうでも、水田の高低差、漏水が発覚した田が目立つという。町は「時間が経過して分かる被害もある。関係機関と連携し対応を進めたい」と話す。
 

悪夢教訓に自家発電 JAが支援策 設置予定9割 酪農家・乳業 導入進む


 北海道では、酪農家が自家発電設備を導入する動きが広がっている。1年前の地震による大規模停電を受け、電気の復旧まで搾乳ができず、乳業メーカーも工場の稼働を停止したつらい経験があるからだ。酪農地帯のJAなどでは独自の支援策を実施し導入を後押し。普及率は今年度中に9割近く普及する見通しだ。

 全国一の生乳生産量を誇る北海道別海町。乳牛150頭を飼う坂野下貴志さん(52)は、6月末に200万円で自家発電機を購入した。北海道地震では父が10年以上前に設置した自家発電機で搾乳機械や生乳を冷やすバルククーラーなどを動かすことができた。しかし、停電によってメーカーの受け入れ態勢が整わず、生乳タンクの容量に限りがあり、1日半の停電で500キロの廃棄に追い込まれた。

 生乳生産を続けるには、乳業メーカーなど生乳の受け入れ側の稼働が前提となるが、「生産現場で、やれることはやらないといけない」と坂野下さん。そして、新旧の自家発電機を併用し、ふん尿処理施設も動かせる体制をつくり上げ、「自家発電機は、災害時に経営を維持するための最低限の備え」と話す。

 自家発電するには、自家発電機の他、電源を切り替える配電盤が必要だ。自身で両方を所有する他、配電盤だけを導入し、自家発電機は他の酪農家らと共有するケースもある。

 同町のJA道東あさひで、震災直後の昨年9月下旬に管内の酪農・畜産農家、約550戸を対象に行った調査(回答率60%)では、配電盤や自家発電機の設置は約3割にとどまっていた。震災後、導入農家は徐々に拡大。今年7月末時点で、全戸数に確認したところ、配電盤は66%で設置済みで、今年度中の設置予定も含めると92%に上る。自家発電機は56%が設置済みで、今年度中の設置予定を含めると86%だった。

 酪農家の意欲を、JAの支援策が後押しした。配電盤や自家発電機に対する国や道の設置費用の補助に加え、JAでは1戸当たり40万円を助成した。坂野下さんも「助成事業は助かった」と評価。JAは「今後も農家の営農と生活を守りたい」と強調する。同じ酪農地帯のJA摩周湖は配電盤の設置に掛かる費用のうち4分の1を補助するなど、独自の支援策を用意するJAもある。

 導入の動きは道内全域で広がり、北海道が4日に発表した調査結果によると、自家発電機や配電盤を入れた酪農家は8月末現在で40%、今年度中に85%に広がる見通しだ。

 乳業メーカーでも整備が進む。自家発電設備を整備し生乳の受け入れが可能な工場は今年度中に計7工場になる。2020年度以降はさらに4工場増え11工場となる。
 

流通も対策必要 北海道大・清水池氏


 北海道大学の清水池義治講師は「酪農家と乳業の自家発電設置は順調に進んでいる。今後は、工場から消費地への流通などサプライチェーン全体で地震などに構えた対策が求められる」と指摘し、酪農と乳業、スーパーなどが非常時に連携対応することを協議する必要性を提起した。

 

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