豚コレラ発生1年 万全の経営再建支援を

 国内26年ぶりの豚コレラ発生から9日で1年となったが、終息への道筋が依然見えない。農水省は徹底した消毒や着替えなど飼養衛生管理の徹底で抑え込む方針だ。だが、農家は経営面でも精神面でも追い詰められている。農家の早期経営再建に向けた万全の支援を急ぐべきだ。

 日本農業新聞が豚コレラの被害農家を対象に行った調査では、回答者の72%が、既に再開した農家を含めて復帰に前向きな姿勢を示した。ところが2割は廃業すると答えた。いつ終息するか見通せない中、将来の展望を描けないことが主な理由だ。養豚経営には多大な投資が必要となる。資金繰りが厳しいことも追い打ちを掛けている。

 復帰への道も険しい。例えば1万頭規模の養豚場はすぐにこれまで通りの売り上げを確保できるわけではない。子豚を買い増しながら規模を拡大する間、従業員の雇用をどう維持するのか。返済をどう進めるのか。農水省の指導通り飼養衛生管理を徹底しても、さまざまな要因で再発する恐れがある。先の見えない不安が農家に付きまとうのだ。

 ウイルス陽性の野生イノシシの確認は8月中旬に、岐阜、愛知、三重、福井の他、富山、長野の6県で合計1000頭を超えた。その後も感染拡大が止まらない。飼養衛生管理の徹底で本当に終息は見込めるのか。現場で対応できるものなのか。農家にはそういう心配もある。

 豚コレラ対策は、先進事例となる欧州がヒントになる。岐阜県などが8月後半に欧州で豚コレラ対策を調査したところ、ドイツは豚コレラ対策として、高いレベルの管理が必要な特定病原菌不在(SPF)豚農場と同レベルの防疫水準を農場で実施。リトアニアは農場内への食品の持ち込みを禁止。さらにシャワー室で一定時間、シャワーを浴びないと鍵が開かない仕組みを導入するなど、相当に厳格な対策を行っている。このため、陽性の野生イノシシが農場から30メートル先で見つかっても、感染を防げた例があるという。

 もちろんドイツやリトアニアと日本は土地条件や状況も異なる。現場が対応できない内容では絵に描いた餅に終わる。野生イノシシの経口ワクチンを帯状に集中的に散布する「経口ワクチンベルト」の構築や消毒の徹底など、まずは現状を踏まえた飼養衛生管理を徹底していくことが重要だ。農家からの要望が多い豚へのワクチン使用についても、地域限定・期間限定を含めて検討を急ぐ必要がある。

 アジアでは、脅威となるアフリカ豚コレラが拡大している。日本全体で野生動物や人などを通じたウイルス侵入対策を徹底させることは、アフリカ豚コレラの日本への侵入を防ぐ手だてともなる。養豚は日本の畜産業の柱で、国民への国産安定供給という大事な役割を担う。廃業に追い詰められず、農家が安心して復帰できる道筋を早く確立することが求められる。
 

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