関東で記録的暴風 台風15号 各地に農業被害

風で押しつぶされたキウイフルーツの棚(9日、千葉県勝浦市で、輿香奈美特別通信員写す)

台風被害で落果した梨を土に埋めて捨てる作業をする石橋さん。収穫を目の前に「がっかりだ」とうつむく(9日、千葉県松戸市で)

 強い台風15号は午前5時前、千葉市付近に上陸した。関東に上陸した台風としては過去最強級で、最大瞬間風速が千葉市中央区で57・5メートル、木更津市49メートル、東京都大田区43・2メートルなど、関東を中心に記録的な暴風に見舞われた。収穫直前の梨やキウイフルーツなど果実の落果が相次ぎ、ハウスの倒壊など深刻な農業被害が多発。JAは被害状況の確認に追われた。

 15号は8日夜から9日にかけて伊豆諸島や関東を通過し、茨城県付近から太平洋側に抜けた。上陸直後の中心気圧は960ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は40メートルで、関東に上陸した台風としては統計開始から最強級だった。

 降水量は、千葉県市原市で9日午前6時までの6時間降水量が194ミリ、静岡県伊豆市の天城山で同日午前12時半までの1時間降水量が109ミリと、いずれも観測史上最大値を記録した。

 同庁によると台風15号は、10日夜に太平洋上で温帯低気圧に変わる見込みだ。台風に伴い、静岡、神奈川、千葉、埼玉、福島などで一時、土砂災害警戒情報が出された。

 9日は首都圏の交通網で大混乱が生じた。また、東京電力によると、順次解消したものの、千葉県や神奈川県を中心に午前8時時点で約93万戸が停電した。静岡や南関東、福島で暴風による農業や施設の被害が多発している。
 

キウイ無残に 千葉・JAいすみ


 JAいすみ管内(いすみ市、勝浦市、大多喜町、御宿町)では、梨など旬の農産物の落果、タケノコ用竹林の倒竹、ビニールハウスの破損など、さまざまな被害が全域で発生した。送電線のトラブルで停電も起こり、9日午後6時30分現在、約2700世帯がまだ復旧していない。

 生育中の農産物への被害も深刻だ。勝浦市でキウイフルーツを栽培する鈴木忍さん(70)の約25アールの園地では、果実の付いた棚を暴風が押しつぶした。

 大量に葉がちぎれて落ち、果実は大きく育ったものを中心に100~200個が落果。11月ごろの収穫に向け、果実を大玉に仕上げつつあった矢先の出来事だった。

 JAキウイフルーツ生産部会で部会長を務める鈴木さんは、大玉生産に熱意を持って取り組んでいただけに、「経験したことがないくらいに強い風で、大きく育った果実ばかり落ちてしまった。出荷まであと2カ月だが、大変な状況になり、今後に懸念が残る」と話す。
 

暴風15号 千葉、静岡、福島…秋の実りなぎ倒す 梨落果相次ぐ ハウスぐにゃり


 梨産地の千葉県松戸市で「新高」など梨30アールを栽培する石橋明さん(85)は、園地一帯で落果被害が発生。「全滅だ。もう今シーズンは駄目だよ。もうすぐ出荷だったのに……」と暗い表情で、梨が散らばった園地で作業をしていた。台風が過ぎ気温が35度近くにまで上がった炎天下、石橋さんは汗びっしょりになり、ひたすら落果した梨を拾い園地に掘った穴に捨てる作業を繰り返していた。

 今年は天候不順で、「豊水」に「蜜症」が発生するなど栽培には苦労した。それでも肥大は順調で、「新高」の収穫は来週を待つばかりとなった。その矢先に起きた、過去最強クラスの台風被害。梨は仕上がりを踏まえて収穫するため、前倒しで作業をすることが難しく、石橋さんは「本当にがっかりだ。捨てるのはつらい」と落ち込んだ。

 静岡県では伊豆半島を中心にハウス損壊などの被害を受けた。県によると、東伊豆町でビニールハウス10棟が損壊。JA伊豆太陽は、ビニールが吹き飛んだり骨組みがゆがんだりする被害が出ているとする。県は、露地野菜の冠水やワサビ田の損害なども確認した。

 東北南部の太平洋側では9日朝から昼すぎにかけて風雨が強い状態が続き、福島県でも農業被害が確認された。台風が接近したいわき市を管内に持つJA福島さくらいわき地区本部によると、強風によって多くの水田で稲が倒伏した。JA夢みなみ管内では、一部で収穫期を迎えた梨やリンゴの落果が発生。JA東西しらかわでは、収穫中のキュウリやインゲンが強風によって実が擦れる被害が出た。
 

台風で落果、塩害恐れ 今後の入荷量懸念 青果市場 


 台風15号が上陸、通過した9日、首都圏の青果、花き市場では一部を除き、通常通りの取引が行われた。産地が前日から出荷体制を整え、当日の入荷量に大きな影響はなかった。ただ、被害が大きかった関東の産地を中心に、今後の入荷に影響が出る可能性が高い。さらに卸売会社は「一部で見られた物流の乱れは明日以降も続く」と警戒する。

 同日の東京都中央卸売市場大田市場の青果物の入荷量は4076トンと、前週月曜日と比べ4%減にとどまった。ただ、市場内では風雨の影響でタマネギなどの出荷箱が雨で濡れ、卸が荷物を移し替えるなど対応した。

 横浜丸中青果(横浜市)では、ジャガイモなどの野菜置き場に雨が吹き込む被害が発生。同社は「昼の時点で場内整理が進んでおらず、荷受けも一部遅らせている状況」と説明。千葉青果(千葉市)は「荷物の延着が発生した」という。 JR貨物でも運休が発生した。出荷物の3割を鉄道で運ぶホクレンは「運行状況を把握しながら、出荷の対応に当たる」と説明。船便も同日は一部運休となるなど、影響が出ている。

 関東近在産は今後の出荷に大きな影響が出る懸念がある。千葉県JAいちかわでは梨の3割が落果し、2割で擦れ果が発生したという。担当者は「明日の出荷から大きな影響が出そうだ」と話す。茨城県JA水郷つくばでは、今後出荷する梨「あきづき」「新高」などで落果被害が発生。担当者は「従来の台風被害よりかなりひどい」と話す。

 また、冬春作に向けた野菜の種まきが始まる時期で、「海沿いの地域では塩害なども考えられる。出荷シーズンの冬場に量が少なくなる恐れもある」(JA全農ちば)と、長期的な影響を指摘する声もある。
 

花きせり遅らせ対応


 花きでも、各市場とも9日の取引では大きな影響はなかった。しかし、関東を中心にハウス倒壊などの被害が発生し、今後は小菊や草花類の入荷に影響が出る見込み。秋の彼岸向け仕入れが活発化し、不足感のある取引が予想される。

 東京市場の花き各卸は買参人の到着遅れを考慮し、せり開始時間を1時間遅らせた。大手卸の同日の取引本数は117万本。平年より少ない状況は続く中、前市から2割ほど増え、影響は限定的だった。

 次回以降の取引には影響が出そうだ。卸売会社は「千葉の沿岸部や茨城で、ハウス被害が相次いだ」と話す。彼岸向け仕入れが来週にピークを迎え、16日の「敬老の日」、3連休の婚礼需要もある。「来週にかけ、婚礼の装飾で添え花に使う草花類を中心に品薄高となる」(同)と見通す。
 

関東・東海で生乳廃棄


 指定団体の関東生乳販売農業協同組合連合会(関東生乳販連)によると、9日午後3時現在、関東や東海地方などの一部地域で酪農家が停電のために搾乳できず、生乳の廃棄が発生しているという。

 千葉、茨城県では広域な範囲で停電が発生し、大量の生乳廃棄が懸念されている。千葉県内では一部乳業メーカーの一部施設などが停電し、生乳の受け入れができなかった。関東生乳販連は「停電の復旧状況によっては10日も廃棄が発生する可能性がある」と話す。

 静岡県でも、数戸の酪農家が生乳を廃棄したとみられる。



 

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは