国産チーズ工房 個性で勝負

放牧から戻ったブラウンスイスを迎える宮嶋代表(北海道新得町で)

オリジナルの「ころ」の状態を確認する鈴永工場長(北海道足寄町で)

 中小規模の工房が国産生乳で造った個性的なチーズが消費者、実需者の注目を集め始めた。高級スーパーは、多彩な特徴や楽しみ方を店頭で伝え、消費の裾野を広げようとする。酪農の現場の近くでチーズを製造するローカルブランドの工房は、特徴ある牛品種や独自の製法を取り入れた商品作りで、輸入品との差別化を進める。日本の風土に合ったチーズの定着に取り組む生産・消費の現場を見た。(立石寧彦)
 

原料で差別化成功 北海道・共働学舎新得農場


 北海道新得町にある共働学舎新得農場は、ブラウンスイス種から搾った生乳でチーズを造る。フロマージュ・フレ、白カビ系、セミハード系など16種類もの多彩な商品を製造。季節限定品などで、消費者を飽きさせないよう工夫を凝らす。

 主力は「ラクレット」だ。年間販売数は3000玉(1玉5キロ)で、売り上げの3分の1を占める。日本人向けに臭みの少ない製法を編み出し、第1回オールジャパンナチュラルチーズコンテストで最高賞を受賞した。ソフト系の「さくら」は、チーズの上に桜の花を乗せた商品で、1~5月に限定販売する。国際的なコンテストでトップの成績を収め、国産でも世界に通じる本格チーズができることを国内外に示した。

 同農場は現在、放牧地50ヘクタールを活用しながら、ブラウンスイス100頭(うち経産牛60頭)を飼養する。年間340トンの生乳を生産し、うち300トンをチーズに仕向ける。

 原料の差別化に加え、歩留まりの高さがブラウンスイスのメリットだ。ホルスタインの生乳を加工すると、水分が抜け、重さが10%ほどになってしまう。一方のブラウンスイスは、脂肪やタンパク質含量が多いため、半年~1年ほど熟成するハードタイプでも20%ほどの歩留まりがある。

 宮嶋望代表は「傾斜が20度以上の山あいにあるこの地域で効率の良い放牧酪農をするには、山に強いブラウンスイスが最適だった」と、もう一つの導入の理由を説明する。放牧酪農やチーズ製造は、作業負担が小さく、同農場が積極的に受け入れる障害者ら社会的弱者が取り組みやすい仕事だ。
 

機内食にも採用 JAあしょろ


 北海道のJAあしょろは全国でも珍しいナチュラルチーズ工房を運営するJAだ。ゴーダやフロマージュ・ブラン、クリームチーズなど10種類を手掛ける。小規模工房の中でも安定した供給が見込めることや「ころ」や「大」といった独自商品が取引先に評価されている。

 独自商品の「ころ」は、棒状に伸ばしたモッツアレラチーズを2週間熟成させたもの。鈴永寛工場長が考案した。他にはない食感と手軽さで毎年、売り上げが毎年2割ずつ伸びている。かつおぶしや干しシイタケといった乾燥でうま味を増す日本らしい加工法を応用できないか考えたのがきっかけ。ナチュラルチーズを初めて食べる人でも手軽に手に取ってもらえるよう、50グラムの少量で280円(税別)の設定にした。「大」は、深みのある味が評価され、6~8月に日本航空国際線のファーストクラス機内食に採用。3カ月熟成の「結」はビジネスクラスで提供された。

 工房で使う生乳は放牧酪農のものが主体。酪農家88戸のうち半数が放牧酪農で、新津賀庸組合長は「険しい産地で生産した良い生乳をチーズにして、付加価値を高めている」と話す。評価の高まりを受けて、チーズ向け生乳は17年度が200トン、18年度が210トンと、年々増えている。新津組合長は「地域の特産にもなり、17戸の新規就農者が来てくれた」と話す。

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