雪国でバナナ栽培加熱 町おこし、復興へ弾み

栽培しているバナナについて説明する大澤代表(岩手県北上市で)

 南国の果物、バナナの栽培が各地でブームだ。豪雪地帯の東北や北海道などでも栽培がスタートし、既に収穫が始まっている地域もある。新たな技術開発で寒冷地での栽培が可能になったことなどから、国産バナナ栽培に挑戦し、珍しさで話題を喚起して地域振興を目指す。今後は生産コストに対して見合った収益が挙げられるかが鍵となりそうだ。
 

話題性で高値販売


 岩手県北上市の農業法人ごろすけACファーム。ハウスにバナナ42本の苗木を植え、3年で5回の収穫を行う予定だ。収穫本数は合計3万7800本を見込む。

 法人の大澤啓造代表によると、バナナの販路は、静岡県の企業を通じての販売の他、栽培支援に1口2万円で協力したメンバーや市のふるさと納税の返礼品として流通させるという。大澤代表は「課題は販路と、加工品を含めロスなく出荷できるかどうか」とみる。同法人は9月末に初収穫を予定している。販売価格は1本1000円前後だという。

 福島県広野町は、バナナ栽培を東日本大震災からの復興の目玉に捉えている。同町振興公社が運営するフラワーパーク内に設置された高さ5・5メートルのハウスに計205本の苗木を植えている。

 一般にバナナ栽培は、1日に12時間以上の日照と水50~60リットル、20度以上の温度が必要とされているが、同町では気温15度以上で管理。特に冬場の温度維持が難しく、生産コストは1本約200円だが、同公社は同300円程度での販売を見込んでいる。

 同町は8月19日に収穫式を開き、町産バナナの愛称を「綺麗(きれい)」と発表した。今後はハウスの数を増やしていく方針。町内のサッカー施設「Jヴィレッジ」や近隣の直売所、いわき市のスパリゾートハワイアンズなど地元を中心に9月下旬以降に販売する予定だ。
 

苗作成方法が普及


 栽培拡大の背景にあるのは「凍結解凍覚醒法」と呼ばれる、氷点下60度まで温度を下げて種子を冷却し、解凍して培養する技術だ。岡山市の農業法人D&Tファームの田中節三取締役技術責任者が開発した新技術で、作られた苗は氷点下17度まで耐寒可能。病害虫にも強い。定植から収穫までの期間も約9カ月と通常の半分以下で、糖度が20以上と高いことも特徴の一つだ。

 9月現在、凍結解凍覚醒法の苗を扱う農場は全国約二十数カ所に上るという。栽培過程で農薬を使わず、外皮が薄いため、皮ごと食べられるのも特徴だ。

 北海道釧路市阿寒町の仁成ファームでも栽培を計画する。既にハウスは完成し、10月末から11月にかけて初めての定植を行う予定だ。

 千葉県成田市のGPファームでは、2年ほど前から凍結解凍覚醒法で作成した苗の温室ハウス栽培を始め、昨年からは地元の道の駅で販売している。

 完全無農薬栽培や糖度の高さが好評で、消費者から問い合わせが多いという。同社の担当者は「農薬を使用していないので特に食の安全に興味のある人に好評だ。地域おこしにもつながる」と期待を寄せる。この他、岐阜や新潟、秋田でも栽培が広がっている。

 山形県のJAおいしいもがみは、戸沢村の温泉施設に隣接するハウスで温泉熱を利用して栽培する。品種は主に酸味に特徴のある「アップルバナナ」を栽培。「雪バナナ」と名付け、6月に本格的な初収穫を迎えた。

 約80株を栽培し、8割以上の株に実が付いた。バナナのもぎ取り体験ができる観光農業の確立を目指し、バナナシェイクなどを商品化して、6次産業化にもつなげたい考えだ。
 

売る+体験で収益増を 大阪産業大学 佐藤靖明准教授


 国産バナナは珍しさもあって贈答品などの高級果実として利用されている。しかし、生産量が増え、安くならざるを得なくなったときに生産コストを下げられるかが課題。オーナー制度の導入や収穫体験を組み合わせている産地もあり、「売る」と「体験」を組み合わせれば収益は上がる。国産バナナだと葉など実以外の活用も可能で、多角的に活用することが発展のヒントになる。
 

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