越境性害虫・疾病 国際協調で水際対策を

 ツマジロクサヨトウやトビイロウンカ、豚コレラ、高病原性鳥インフルエンザといった越境性の害虫や疾病による被害が増えている。感染などの拡大をなかなか食い止められない事例も出てきた。正確な知識と防除の周知に加えて、水際対策の徹底や国境を越えた協調対策の強化を急ぐべきだ。

 トビイロウンカが記録的な多発となっている。4日現在で西日本を中心とした警報が8県8件、注意報が20府県延べ27件となっている。直近の大発生だった2013年を上回る状況で、米の収量減が懸念される。この害虫は、梅雨時期に東南アジアから飛来し、本田で増殖。稲を吸汁し、坪枯れ被害などを引き起こす。対策には薬剤防除や適期の刈り取りなどがある。海外では一部の薬剤に抵抗性を持つものもいるとされており、国家間の情報共有が重要だ。

 飼料用トウモロコシなどを加害するツマジロクサヨトウは4日現在で西日本を中心とした20府県に広がった。国内初確認の7月からあっという間の拡大だ。今のところ大きな被害の情報はないが、定着の恐れがある。発生農場での徹底した防除が求められる。なぜ海外で大きな被害が出たのかも、再点検する必要がある。

 豚コレラは、関東での発生が確認され、大きな転換点を迎えた。29年ぶりの発生となった昨年9月以来、岐阜や愛知、三重、埼玉などに拡大した。ウイルスは海外から侵入し、広がったとみられている。韓国でアフリカ豚コレラの発生が確認されたこともあり、万全の防疫対策が不可欠だ。

 越境性の害虫や疾病が広がる背景には、世界的な人や物の移動があるとみられる。インバウンド(訪日外国人)は3000万人を突破し、外国人研修生数も右肩上がりだ。病原菌やウイルスが侵入しやすい状況といえる。旅行者が持ち込もうとした肉製品からは、アフリカ豚コレラウイルスの遺伝子が見つかったこともある。

 気候変動の影響で、暖かい地方の病害虫が定着しやすくなっている。トビイロウンカなど、これまで日本で越冬しないとされていた害虫が、気温上昇で越冬できるようになる恐れもある。

 生産者がしっかりとした対策に取り組めるよう、指導機関はこれまで以上に丁寧で分かりやすい情報提供を心掛けるべきだ。隣り合った都道府県にとどまらず幅広く情報の共有と連携を深めることが、早く広く移動する病害虫や疾病に対抗する大前提となる。

 国際的な研究や対策も極めて重要だ。水際対策は、海外の病害虫・疾病の発生情報の的確な収集が鍵を握る。国内に侵入してしまった場合でも、発生国が持っている診断技術や侵入経路の調査方法が参考となる。国際的なセミナーやワークショップなどの場を活用して交流と情報共有を深め、臨機応変な国際連携に備えてもらいたい。
 

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