[あんぐる] だんだん…秋衣装 実りの「くい掛け」 大蕨の棚田 (山形県山辺町)

秋の収穫を迎えた「大蕨の棚田」。農家らが作った稲を干す「くい掛け」が整然と並ぶ(山形県山辺町で)

 山形県山辺町の山間部にある「大蕨(おおわらび)の棚田」に、この秋も稲を干す「くい掛け」がずらりと並んだ。その数は約1000本。1本のくいを軸に稲束を積み上げる地域伝統の干し方と棚田の独特な景観を地元農家らが守っている。

 棚田ができた時期は不明だが、江戸時代初期に当たる寛永13(1636)年の領地目録などに記録が残る。高低差60メートルの斜面に26枚の水田が広がる。総面積3・4ヘクタールのうち、現在2・5ヘクタールを12戸の農家が耕作し、県が育成した品種「里のゆき」を作っている。

 くい掛けに使う棒は杉の木で、長さは約2メートル。これを、あぜに穴を掘って約2メートル間隔で立て、大人の膝と腰の高さに短い横棒を結び付けて軸にする。稲は両手でつかめるくらいの束にして、初めに横棒に掛け、続けて方向を変えながら、最終的に60束ほどを積み上げる。

   
くいに稲を干す農家。稲束を次々に掛ける

 農家らが協力し、10日間かけて大量のくい掛けを作り、10日置きに掛け替えながら約1カ月干す。稲作農家の武田二男さん(71)は「稲穂のまま乾かすので、おいしくなる。今年は天気に恵まれ、米の出来も良い」と作業に励んでいた。

 大蕨の棚田は、県内に三つある「日本の棚田百選」認定地区の一つ。1999年の認定時には全体が使われていたが、2011年には高齢化や担い手不足が響き、全体の3割に相当する1ヘクタールほどしか使われなくなった。

 この状況に対し、「景観を守り、くい掛けを次世代に継承しよう」と地元農家が奮起し、同年「中地区有志の会」を結成。くい掛け体験や、サッカーJリーグ・モンテディオ山形の選手と農作業をするイベントを催し、ボランティアとも協力して棚田の再生を進めている。

 同会とボランティア組織「グループ農夫の会」の発起人で、元JA全農山形職員の稲村和之さん(66)は「多くの人たちの力でここまできた。くい掛けが棚田の頂上まで並ぶ景色を取り戻したい」と話す。(富永健太郎)

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