トランプ氏 支持回復 “助け船”いつまで… 特別編集委員 山田優

 米農業雑誌『ファームジャーナル』が先週、9月分の米国農家のトランプ大統領支持率を発表した。農家の76%が大統領の仕事ぶりを支持した。そのうち55%は「強く支持する」と答えている。8月の「強く支持する」割合は43%で、トランプ氏に対する農家の信頼が盛り返していることを示した。

 2016年に大統領選挙で勝利して以来、トランプ氏は農家の間で高い人気を保ってきた。人種や女性への差別の発言を繰り返す薄っぺらで自信過剰の男と見えるが、米国の農家の目には違って映るらしい。

 ただ、農家の間では輸出先国との貿易戦争に不満がくすぶる。かつて海外最大のお得意さまだった中国向け農産物輸出が、減っているからだ。先行きが不透明な中、冒頭の調査で「強く支持する」割合が回復したことに、違和感を抱いた。

 同誌が農家の意向を調査したのは9月27日だ。実はこの日にちに意味があった。ニューヨークの日米首脳会談で、安倍晋三首相が環太平洋連携協定(TPP)並みに農産物市場を開放することで、トランプ氏と合意した2日後だったからだ。

 25日に開かれた首脳会談の場には、カウボーイハットをかぶった大勢の農業団体役員らが異例の形で招き入れられた。「(日米合意で)たくさんカネが入ってうれしいだろう」と語る上機嫌なトランプ氏と、次々と登場し大統領の「手腕」を褒めたたえる農業団体幹部のやりとりは、延々と10分以上も続いた。安倍氏の「決断」に感謝を表明する団体もあった。安倍氏はただ横に座り、一方的な手柄話の応酬を眺めていただけだ。

 農業団体は、日本市場をこじ開けたトランプ農政を評価する声明を一斉に出し、26日にはメディアでそれらが報じられた。懐疑的に傾きかけた農家の不信を吹き飛ばす効果があったはずだ。牛肉など農産物市場を差し出した安倍氏がトランプ氏の助け船になった。

 1年後の大統領選挙に向け、トランプ氏は支持基盤である農家を強く意識せざるを得なくなるだろう。日米交渉の成功体験は自信になったはずだ。「機会があればもう一度……」と考えても不思議ではない。

 きょう、ワシントンで日米貿易協定の署名式が予定されている。トランプ氏による際限のない要求に再び直面したとき、今度は安倍氏は立ち上がって断ってくれるのだろうか。
 

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