[ゆらぐ基 危機のシグナル](4) 細る自治体の体制 個性発揮は二の次に

「越冬キャベツ」の畑を前に、町の展望を話すJAの小島課長(左)と町産業振興課の山口課長(北海道和寒町で)

 政府が目指す「地方分権」とは裏腹に、各地で個性を生かした農業・農村振興が難しくなっている。背景には自治体の財政難や農業担当者の人員減などがある。農業担当者は、国と生産現場を結び付ける重要な役割を担うだけに、自治体農政の弱体化は、農業・農村の衰退につながりかねない深刻な課題となる。

 広大なキャベツやカボチャの畑が広がる北海道和寒町。町の人口減と並行して役場職員数も減る中、町産業振興課の担当は農業に加え林業や商業、観光などと多岐に渡り、山口祐樹課長は「現場に行く回数が減っている」とため息をつく。

 キャベツとカボチャは農家と町、JA北ひびきが一体で育てた町の二大看板。しかし、ここ2年でカボチャの栽培面積は60ヘクタール減の790ヘクタール、キャベツは25ヘクタール減の118ヘクタールと作付け減に歯止めがかからない。農家の減少に加え、自治体やJA職員の減少が作付け減に影を落とす。
 

国とずれも…


 同町の農業担当者、鷲見幸一課長補佐の主な仕事は「農水省の補助事業事務」。国の事業は単年度で要件や予算が変わり、多種多様化している上、申請業務も複雑化している。「去年と今年で全く違う補助事業が多く、本当に苦労している」と鷲見課長補佐。国の農政に対応するのが手いっぱいの状況だ。

 一方、「大規模化を推奨する農水省の各種事業では、町の特徴を打ち出す農業展開が難しい」というのが町とJAの共通見解。家族経営で支えてきたカボチャやキャベツは面積など補助事業要件に合わないことが多く、担い手は規模拡大しやすいソバや麦の栽培に走る。

 JA和寒基幹支所営農課の小島憲昭課長は「担い手は限界近くまで栽培し、作付け増加は無理な状況。アルバイトもいない」と説明。食料自給率低迷やJA改革も踏まえ、JAの和賀覚支所長は「国の農政と現場が目指したい自治体農政の方向に矛盾があるのではないか」と感じている。

 ただ、人が減り、財政難でも役場とJAを中心とした連携体制や役割分担が町の強み。和賀支所長は「今より元気だった昔とは違う形でも、個性を生かした和寒農業の可能性を示したい」と話す。ブランド作物「越冬キャベツ」は農家の冬の貴重な収入源だ。現在は農家や関係機関で、新品種の導入やカボチャの種の特産化など人材が限られる中、知恵を絞りながら新たな展望を模索している。
 

今こそ「対話」


 人口1万4300人の新潟県聖籠町。町の産業観光課8人で、職員が協力しながら農林水産業や観光、雇用などの業務に当たる。自主財源が限られ、国の補助事業を活用するとその分、申請業務などの負担がのしかかる。萩原波春課長は「事務の効率化を目指すが、地域おこしの基本は町民との対話」と話す。自治体農政に携わる関係者は人口減が進んでいるからこそ、対話を基本とした現場の声を生かせる農政の在り方を求めている。(企画は尾原浩子、川崎学、木村泰之、鈴木健太郎、藤田一樹、松本大輔が担当しました)
 

歯止めかからぬ人員減


 地方公務員数は2018年が273万7000人。ピーク時の1994年に比べると鳥取県の人口に匹敵する55万人も減った。農業担当者数は食料供給地帯の北海道以上に本州の減少が目立ち、合併自治体で深刻だ。普及指導員数は全国で今年度6102。10年間で約3割減った。
 

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