台風15号禍 ハウス復旧限界 撤去遅れ、二重ローン、作付け断念

倒壊したハウスを前に、被害の深刻さを訴える長谷川さん親子と伊藤さん(中)(千葉県旭市で)

 千葉や茨城など農業産地を襲った台風15号から1カ月が経過する中、ハウス被害が深刻だ。相次ぐハウスの倒壊で撤去が進まず、再建の手始めとなる片付けですら進んでいない状況。生産現場からは「営農計画が立たない」「来春の作付けが間に合わない」など悲痛の声が相次いでおり、行政のスピード感のある支援を求めている。

 農水省によると、台風15号の農林水産関係被害は7日午後5時現在で8都県に及び、被害額は503億円。このうち農業用ハウスなどが約271億円と半分以上を占め、被害件数は2万2000件を超える。

 全国屈指の農業産出額を誇る千葉県旭市。骨材が曲がり、倒壊した鉄骨の屋根型園芸ハウスを前に、ミニトマト農家の長谷川雅和さん(34)が胸中を明かす。「日がたつにつれ、ぺちゃんこのハウスを見るとショックが大きい。早く再建したいが、道筋は現状、立てられない」

 ハウスは父の功さん(62)が建て、2年前に補強、自動換気やかん水など最新設備も導入。土づくりを終え、台風襲来翌日の9月10日は定植予定だった。鉄骨ハウスが倒壊する暴風とは想定外。ハウス4分の1が被害に遭い、落胆している。

 業者に解体や資材確保を依頼するが、県南部の解体業務の最中で、いつ着手できるか分からない。解体も撤去も多くの負担がかかり、2年前の補強時のローンも残る。今後再建すると二重ローンになる。功さんは「後継者がいるので早く再開して返済し、復興に向かいたい」と焦る。

 JAちばみどり青年部委員長の伊藤慎吾さん(36)は「農家は教訓を踏まえ、災害に強い産地づくりを進める必要がある。前を目指すには行政のスピード感ある支援やレスポンス(返答)が欠かせない」と訴える。

 ハウスの廃プラスチックは「被災面積が大きく量も多く、敷地が限られ災害ごみとして受け入れられない」(同市)という状況。JAの向後忠信専務は「再建に向かう初めの一歩の片付けが重い課題。費用負担を最小限に抑え、撤去や再建できるように支援してほしい」と要望する。

 被災地では、JA職員らが倒壊ハウスの解体を手伝い、JA全農などが資材確保を県外のメーカーにも呼び掛けるが、限界がある。

 JA安房は「ハウスは諦めるという高齢農家もいる。問題が多く、順調に進んでいない」と訴える。JA千葉みらいは「多くの棟がつぶれた農家が複数いる。片付けも撤去も見通しが立ちにくい」と嘆く。JAきみつは「建てる人も片付ける人も足りず、見積もりも出ていない。連合会も頑張ってくれているが国の力が必要」と求める。

 茨城県のJAほこたでは、ハウス再建が遅れれば来春のメロンの作付けができない恐れがある。JAは「間に合わなければ営農の切実な問題」と政府を挙げた早急の対策を求める。

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