来るぞ!雨・風 警報級 対策急げ 台風19号
2019年10月10日

台風前に急ピッチで柿を収穫する井上さん(9日、和歌山県九度山町で)

昨年被害を受けたナスのハウスの跡地で台風を心配する松下さん(同、高知県室戸市で)
暴風雨に早めの備えを──。大型で猛烈な台風19号が強い勢力を保ったままやってくる。千葉県などに被害をもたらした9月の台風15号と進路が似ているとされ、気象庁は9日、厳重な警戒を呼び掛けた。四国から関東にかけての果樹産地などでは、早期の収穫や防除の準備に追われている。
気象庁は9日、19号が週末にかけて広範囲に大きな影響をもたらすとして、緊急の記者会見を開いた。関東などで果樹の倒木や住宅の倒壊の恐れがあるほどの暴風となる見通しで、11日までに備えるよう厳重な警戒を呼び掛けた。同庁は「命を守るための早めの対策をお願いする」と強調した。
19号は非常に強い勢力を保ったまま、12日にかけて、関東から近畿の広い範囲に接近、または上陸する見込み。同日は警報級の大雨となる可能性が高い地域は東北、関東甲信、伊豆諸島、北陸、東海、四国地方。警報級の暴風となる可能性が高い地域は東北、関東甲信、伊豆諸島、北陸、東海、近畿地方になる。
13日までは北海道、東北、関東甲信、北陸、東海で暴風や警報級の大雨となる可能性がある。15号に匹敵する記録的な暴風となる見込みだ。
気象庁は「風が強くなるので、広い範囲で果樹の落果対策が必要。場所によって倒木の恐れもある。暴風域になると急激に危なくなるので、週末の田畑の見回りは絶対にやめてほしい」と注意を呼び掛けている。
高知県室戸市の松下勉さん(55)は昨年9月、台風24号でナスのハウスに高波の被害を受けた。「昨年は収穫を始めて最初のピークを迎えたばかりのときに、10アールで大きな被害を受けた。今回も室戸沖を通過することが予想され、心配でたまらない。被害がないことを祈っている」と警戒した。
「高温続きで収穫が遅れた上に台風がくれば、踏んだり蹴ったりだ」。和歌山県九度山町の柿農家、井上靖雄さん(56)は採果ばさみを握り締め、急ピッチで「刀根早生」の収穫作業に精を出す。
井上さんは2ヘクタールの園地を管理。今年は高温が続き色付きが進まなかったため、例年より1週間ほど遅い4日から収穫のピークを迎えた。
台風前にできるだけ収穫を済ませようと、作業員を増員。1時間程度早い午前6時台から作業している。「今は収穫のことで頭がいっぱい。強風から守る竹製の支柱を立てる暇もない」(井上さん)
昨年は9月に台風21号の被害に遭った。風雨にさらされ多くの柿が擦れ、3、4割の出荷を見送った。ブランド柿「富有」の収穫も控えるが、「台風が直撃すれば、かなりの枝折れや落果が出るだろう」と懸念する。
東海地方の果樹産地でも備えを急ぐ。
愛知県のJAあいち三河は特産「筆柿」の収穫を進めている。JA営農企画課は「台風通過後の塩害も心配だ」と話す。静岡県のJAみっかびは、強風で温州ミカンに傷果ができ病害が広がらないよう、事前に防除剤の使用を管内の有線放送などで呼び掛けた。
同県のJA伊豆太陽は9月の15号でワサビ沢への土砂流入やビニールハウスの損壊などの被害を受け、復旧作業を進めている最中だ。
19号の進路が15号に近いため、JAの営農指導担当者は「さらに被害が拡大して営農の再開まで時間がかかるのではないか」と心配する。ハウスではカーネーションが一番花の出荷を迎えており、ビニールが風で飛ばないよう補強を進めている。
千葉県内の農家も対応を急いだ。
白井市で75アールの梨園を経営する中村喜一さん(70)は9日、園を風などから守る多目的防災網の緩みを直し、締め直す作業をした。15号では「新高」などが落果する被害が出たばかり。「15号以上の風と聞いた。木を守らないといけないと思い網を締め直した」と話す。
館山市にある33アールの園地でカーネーションやキンギョソウなどを施設栽培する鈴木政孝さん(43)は、15号の被害を免れたハウス5棟のビニールを10日にはがす。「ハウスの骨組みがやられたら大変だ。ハウス内には花も残るが、やらざるを得ない」と声を振り絞る。
気象庁 あすまでに備えて
気象庁は9日、19号が週末にかけて広範囲に大きな影響をもたらすとして、緊急の記者会見を開いた。関東などで果樹の倒木や住宅の倒壊の恐れがあるほどの暴風となる見通しで、11日までに備えるよう厳重な警戒を呼び掛けた。同庁は「命を守るための早めの対策をお願いする」と強調した。
19号は非常に強い勢力を保ったまま、12日にかけて、関東から近畿の広い範囲に接近、または上陸する見込み。同日は警報級の大雨となる可能性が高い地域は東北、関東甲信、伊豆諸島、北陸、東海、四国地方。警報級の暴風となる可能性が高い地域は東北、関東甲信、伊豆諸島、北陸、東海、近畿地方になる。
13日までは北海道、東北、関東甲信、北陸、東海で暴風や警報級の大雨となる可能性がある。15号に匹敵する記録的な暴風となる見込みだ。
気象庁は「風が強くなるので、広い範囲で果樹の落果対策が必要。場所によって倒木の恐れもある。暴風域になると急激に危なくなるので、週末の田畑の見回りは絶対にやめてほしい」と注意を呼び掛けている。
「またか…」各地で警戒感
高知県室戸市の松下勉さん(55)は昨年9月、台風24号でナスのハウスに高波の被害を受けた。「昨年は収穫を始めて最初のピークを迎えたばかりのときに、10アールで大きな被害を受けた。今回も室戸沖を通過することが予想され、心配でたまらない。被害がないことを祈っている」と警戒した。
「高温続きで収穫が遅れた上に台風がくれば、踏んだり蹴ったりだ」。和歌山県九度山町の柿農家、井上靖雄さん(56)は採果ばさみを握り締め、急ピッチで「刀根早生」の収穫作業に精を出す。
井上さんは2ヘクタールの園地を管理。今年は高温が続き色付きが進まなかったため、例年より1週間ほど遅い4日から収穫のピークを迎えた。
台風前にできるだけ収穫を済ませようと、作業員を増員。1時間程度早い午前6時台から作業している。「今は収穫のことで頭がいっぱい。強風から守る竹製の支柱を立てる暇もない」(井上さん)
昨年は9月に台風21号の被害に遭った。風雨にさらされ多くの柿が擦れ、3、4割の出荷を見送った。ブランド柿「富有」の収穫も控えるが、「台風が直撃すれば、かなりの枝折れや落果が出るだろう」と懸念する。
東海地方の果樹産地でも備えを急ぐ。
愛知県のJAあいち三河は特産「筆柿」の収穫を進めている。JA営農企画課は「台風通過後の塩害も心配だ」と話す。静岡県のJAみっかびは、強風で温州ミカンに傷果ができ病害が広がらないよう、事前に防除剤の使用を管内の有線放送などで呼び掛けた。
同県のJA伊豆太陽は9月の15号でワサビ沢への土砂流入やビニールハウスの損壊などの被害を受け、復旧作業を進めている最中だ。
19号の進路が15号に近いため、JAの営農指導担当者は「さらに被害が拡大して営農の再開まで時間がかかるのではないか」と心配する。ハウスではカーネーションが一番花の出荷を迎えており、ビニールが風で飛ばないよう補強を進めている。
千葉県内の農家も対応を急いだ。
白井市で75アールの梨園を経営する中村喜一さん(70)は9日、園を風などから守る多目的防災網の緩みを直し、締め直す作業をした。15号では「新高」などが落果する被害が出たばかり。「15号以上の風と聞いた。木を守らないといけないと思い網を締め直した」と話す。
館山市にある33アールの園地でカーネーションやキンギョソウなどを施設栽培する鈴木政孝さん(43)は、15号の被害を免れたハウス5棟のビニールを10日にはがす。「ハウスの骨組みがやられたら大変だ。ハウス内には花も残るが、やらざるを得ない」と声を振り絞る。
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気候非常事態 長野県が宣言 都道府県で初
長野県は6日、世界的な気候変動への危機感と地球温暖化対策への決意を示す「気候非常事態宣言」を都道府県として初めて発表した。2050年までに県内の二酸化炭素(CO2)排出量を実質的にゼロにすることを目指す。
県議会が同日、台風19号被害やスペインでの国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)開催などを背景に、宣言を出すよう県に求める決議を全会一致で採択。これを受けて県が宣言を発表した。宣言では、国内で頻発する気象災害と世界的な異常気象、気候変動に触れ、「この非常事態を座視すれば、未来を担う世代に持続可能な社会を引き継ぐことはできない」と強い危機感を示した。
県は、太陽光発電や小水力発電といった再生可能エネルギーの拡大、省エネ対策の強化などで、CO2排出量の実質ゼロを実現したい考え。阿部守一知事は会見で「広く県民一丸となって気候変動対策を進めていきたい」と強調した。インターネット中継で阿部知事と会談した小泉進次郎環境相は「台風で大きな被害を受けた長野県が宣言したことは象徴的。来週参加するCOP25で発信したい」とエールを送った。
宣言は、地球温暖化対策を加速させようと欧米諸国を中心に広がっている。欧州連合(EU)の欧州議会が11月に採択した他、国内では長崎県壱岐市、長野県白馬村などが宣言している。
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2019年12月07日

農業、仲間…動画に魅力凝縮 JA栃木青年部連盟が作成
JA栃木青年部連盟は、農業や青年部の魅力をおよそ1分間にまとめたPR動画を作成した。動画で自然や家族、部員への感謝や尊敬の気持ちを表すとともに、JA栃木青年部連盟の知名度を上げることが狙いだ。
動画は動画投稿サイト「ユーチューブ」のJA栃木青年部連盟公式チャンネル、インターネット交流サイト(SNS)の公式フェイスブックで公開している他、JAグループ栃木のホームページでも公開する予定だ。
「プロフェッショナル~俺たちJA栃木青年部連盟~」のタイトルで、JA栃木青年部連盟の役員14人が全員出演。一人一人が手作りのスケッチブックを使って農業の魅力や青年部活動への思いを伝えている。
撮影に当たっては、収穫期の農地や自慢の農機具をバックに、家族や家畜と共に出演するなど、工夫を凝らした。
自身も出演した船山和洋委員長は「動画を作る中で、連盟役員の新たな一面を見ることができた。われわれの思いが詰まった見応えのある動画になっているので、ぜひたくさんの人に見てもらいたい」と太鼓判を押す。
JA全国青年協議会では、その視覚的効果から動画を用いたPRを推進しており、同連盟も継続して作成し、県内の各JA青(壮)年部段階でも作っていく考えだ。
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2019年12月13日

無洗米「SAKURA RICE」世界に 業務向けで高評価 全農子会社
農畜産物を輸出するJA全農の子会社、JA全農インターナショナルは、業務需要に開発したブレンドの無洗米「SAKURA RICE」(サクラライス)の輸出に乗り出した。世界で日本食の注目が高まる中、業務用を開拓、輸出拡大を狙う。日本産や無洗米による調理作業の効率化が売り。日本食店が多くあるシンガポールで今年から、複数のチェーン店が同ブランドの扱いを始め、手応えを得ている。
これまで同社の輸出米は家庭用主体だったが、業務需要に応えるブランドとして「サクラライス」を企画した。同社によると①国産のブランド価値②品質③無洗米による作業性の効率化──を売りに営業している。品質が一定化し、多くの用途に使えるようにブレンド米とした。東南アジア数カ国で販売している。
シンガポールの海鮮丼チェーン店「哲平食堂」では、現地法人の全農インターナショナルアジアの提案を受け、全7店舗で10月からサクラライスを使う。量は毎月約1トン。山下哲平オーナーシェフは「粒がしっかりして時間がたっても冷えてもおいしい」と強調する。山下シェフが展開するうなぎの専門店など、他店舗でも今後使っていく予定だ。
哲平食堂のフランチャイズを手掛けるYCPダイニングシンガポールのショーン・タン代表は「在住日本人も当地の客も満足している。無洗米は店員の作業が楽で、現地で手に入れにくいので助かる」と評価する。
シンガポールでは哲平食堂の他、日本式の焼き肉レストラン「牛角」9店舗でも、サクラライスの使用が始まった。
全農インターナショナルは「米の輸出を増やすには業務需要を取り込むことが有効。全農のルートを生かし、青果など他品目とセットで販売拡大も期待できる」とサクラライスを起爆剤に、輸出拡大につなげる考えだ。
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2019年12月12日

事業協同組合 各地で設立へ 農業、飲食店、介護業…人口急減地域に働き手 若者定住受け皿に
過疎地や離島など人口が急減する地域のさまざまな職場や作業場に、事業協同組合が若者を“人材供給”できる新法が成立した。集落営農組織、飲食店、介護業者、農家など、若者は組合に出資した多様な組織や個人事業主に出向いて通年雇用され、行政が運営費を補助する。新法の活用では若者がやりがいを持って働ける環境づくりや地域内の連携が鍵になる。
複数の仕事通年で提供
新たな法律は「特定地域づくり事業推進法」。先の臨時国会で11月27日に成立した。都道府県知事が認定し、人口が急減している各地域に、特定地域づくり事業協同組合を設立するものだ。
組合は、地域の四つ以上の会社や個人事業主などが出資して発足。出資できる組織は資本金や従業員数などの上限がある。同組合では社会保障や給与を保障して若者らを通年雇用し、基本的に出資先の組織や個人事業主に人材を供給する。
総務省によると、山間部の一つの中小企業で雇用を1年間継続するのは難しくても、地域の企業や個人が連携し同組合を設立すれば人材を確保できる。同省は「夏場だけ忙しい農業、冬場だけ忙しいスキー場など、年間の需要の変動を、組合でうまく調整すれば年間通じた仕事が確保できる」と説明する。
政府・与党は組合運営費の2分の1を基本的に公費から支援する方針だが、特別交付税措置も含めて国がそのうちの4分の3を財政支援をする見通し。来年6月の施行までに同省が詳細を決める。
組合が雇用する従業員は若者を想定するが、法律には年齢制限を明記していない。厚生労働省の労働局に労働者派遣の届け出をして、各職場に出向くことになる。
JAの場合、資本金や従業員数の上限があるため、事業協同組合に出資できない組織が多い見通し。ただ、同組合の事務局になり地域の連携を後押しするなど、関わる手立ては多い。事務局は公務員やNPOなど多様な主体を想定する。
環境づくり話し合いを
同法に、既に大きな関心を示す地域もある。農山村に移住したい若者はいても、安定した仕事の確保が移住や定住の壁の一つ。同法の運用次第では若者の定住対策も見込める。今後は、雇用される若者がやりがいを持って出向く環境づくりが問われる。
島根県邑南町の石橋良治町長は「田舎で豊かに暮らしたい若者の活躍の場を作りたくても、難しい面があった。地域にも若者にも貴重な法となり得る。受け入れる側の責任が問われる法律」と認識する。今後は地域で時間をかけて話し合い、出資をしてもらう会社や組織を募り、若者を受け入れる考えだ。
子育て支援に力を入れる新潟県出雲崎町も関心を示す。小林則幸町長は「若い人を呼び込める起爆剤としたい」と強調する。一方、西日本のある県は「労働の穴埋めという考えではうまく機能しない。人手不足だからと安易に組合発足を(自治体に)促さず、話し合っていく」とする。
地域の“宝”呼び込む
法律の作成を主導した人口急減地域対策議員連盟会長、細田博之衆院議員の話
かつては田舎には仕事がなく都会に若者が向かっていた。しかし、働く環境や子育てする環境などを見ると、現代は都会が過疎地域に比べて豊かとは決して言えなくなった。ただ、農村に住みたい若者はたくさんいても仕事の確保が課題だ。
一方、農村では、農業や林業、雪かき、介護、草刈りなど仕事はたくさんあり、人手不足に悩む。ただ、何か専業では食べていけなかったり、一つの企業で雇用は難しかったりと課題がある。
新法はこの二つの課題を結びつけるもの。雇用保険や年金など社会保障も確保して通年雇用し、多業で働いてもらう。
法律に「派遣」との言葉があるので都会の派遣業のイメージを持つ人もいるが、全く異なる。来て働く若者は地域の宝。新法は地域の中核となる人材を安定雇用するものだ。派遣というより、人材供給と捉えてほしい。
国は財政支援をする。ただ、まずはJAや地域の中小企業などみんなで将来の地域の在り方も含めて話し合ってほしい。山間地の集落営農組織に活用してもらいたい。
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2019年12月11日
日米協定の宿題 不安除く責任 国会にも
日米貿易協定の元日発効が確実になった。大型自由貿易協定(メガFTA)によるかつてない自由化との闘いを農家は迫られている。臨時国会は9日が会期末だが、政府と国会が責任を果すのはこれからだ。通常国会が来月にも始まる。十分な国内対策をはじめ農家の不安払拭(ふっしょく)へ熟議を求める。
議論が深まらないまま国会は日米協定を承認した。審議時間が短過ぎた。その上、環太平洋連携協定(TPP)や日欧経済連携協定(EPA)も合わせた農林水産品の影響試算など、野党の資料請求に政府・与党は応じなかった。政府の答弁も踏み込み不足が目立った。所信表明演説で安倍晋三首相は「農家の皆さんの不安にもしっかり向き合う」と述べた。政府・国会ともに、不安払拭策は「継続審議」になったと認識すべきだ。
不安払拭はまず国内対策にかかっている。政府はTPP等関連政策大綱を改定し、大小問わず意欲的な農家を支援する方針を示した。対策費3250億円を盛り込んだ今年度補正予算案も決めた。予算規模を含め、同演説で首相が約束した「生産基盤の強化など十分な対策」になっているか。その検証は、日米協定を承認した国会の責務だ。
日米協定とTPPを合わせた農林水産物の生産減少額を政府は最大2000億円と試算。国内対策で農業所得と生産量が減らないことが前提だ。なら、対策は最低でも所得などを維持できる内容でなければならない。そうなる理由の説明責任もある。
国内対策には食料自給率向上の観点も必要だ。45%の目標を盛り込んだ食料・農業・農村基本計画は閣議決定しており、目標達成に必要な生産基盤の確保は政府の責務である。来年度当初予算案を含めて検討が必要だ。来年3月の閣議決定を予定している新たな基本計画も、メガFTA時代に、日本の農業・農村の持続的発展をどのようにして確保し、自給率を向上させるかが問われる。
国内対策が十分かを検証するには適正な影響試算が必要だ。政府は野党が要求した資料を作り示すべきだ。対策を前提に試算をするのは逆立ちした論理である。国の財政は厳しい。生産がこれだけ減るから、それを防ぎ、さらに自給率を引き上げるにはこうした対策が必要だ。こうした分かりやすい筋立ての方が、国民の理解も得られる。
国内対策を抜いた日米協定の試算を東京大学大学院の鈴木宣弘教授が行い、参考人とし国会で説明。価格が下がれば生産も減るとして、農産物の生産額が9500億円程度減少する可能性を示した。参考にすべきだ。
米国は追加交渉の予備協議に来年早々に入ると表明した。対象について政府の国会答弁は「農産品は想定していない」にとどまる。自由化が一層進むのではないかと農家は不安だ。払拭のために、農業を対象にするよう米国から要求されても「断固拒否する」と明言すべきだ。
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2019年12月07日
営農の新着記事

GA×BA 植調剤組み合わせるだけ コチョウラン高品質に 花茎伸び花数が増 愛知県農総試
愛知県農業総合試験場は、植物成長調整剤のジベレリン(GA)とベンジルアデニン(BA)の処理を組み合わせることでコチョウランの花茎を伸ばし、花数を増やす技術を確立した。1週間おきに、花茎にGA、花茎先端部にBAを噴霧することで、比較的簡単に高品質なコチョウランを生産できる。
コチョウランは、贈答用需要があり、花数が重要だ。計画的な開花に向け、5~10月の高温期の冷房処理が一般的だが、維持管理が難しく、花数の減少や花茎の伸長不良など品質低下対策が求められていた。
今回の技術はGA処理で花茎を伸ばし、BA処理で花数を増やす。GA処理は、長さ5~20ミリの花茎に1週間おきに、GA(濃度100ppm)を2回散布する。無処理に比べ、花茎長を6~7センチ伸ばせた。
BA処理は、つぼみが7個ほど付いた後、花茎の先端に1週間おきに、BA(濃度30ppm)を5回以上噴霧する。無処理では10輪程度だが、BA処理を3~5週続けると、3輪ほど増える。BA処理は続けるだけ花数が増えるが、花が小さくなることがあるので注意が必要だ。
同試験場は「12月にBAがコチョウランで農薬登録され、現場での普及が進みそうだ。技術の利用で生産者の所得向上が期待できる」としている。
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2019年12月13日

青パパイア スピード収穫 露地で4カ月越冬不要 メーカーが品種提案
健康食材として農家が直売所で販売する他、JAが産地化を進めている青パパイア。本州を中心に、果実ではなく野菜のように食べる栽培が広がる中、種苗メーカーが冬越ししない1年完結の栽培モデルの普及に乗り出した。成長の早い多収品種を育てて冬が来る前に収穫し終えるもので、露地栽培が難しかった本州でも産地化に向けた動きが活発化しそうだ。(北坂公紀)
本州産地化に期待
パパイアは中南米原産で、複数年にわたり実を付ける多年生植物。黄色く熟した実は果実として食べられる他、熟す前に収穫した青パパイアはサラダなどで食べられる。特に青パパイアは、ビタミンやポリフェノールといった栄養成分、ダイエット効果があるとされる酵素を豊富に含み、健康食材として注目されている。
一般的に、パパイアの収穫は定植の翌年以降に本格化する。ただ熱帯原産で凍害に弱く、気温が0度を下回ると枯死するため、国内では越冬が栽培上の大きな課題だ。そこで、種苗メーカーの丸種(京都市)は、パパイアを1年完結で栽培するモデルを示した。
この栽培で鍵を握るのが品種だ。同社では成長が早く多収の6品種を提案。苗木の定植1年目で1本当たり約30個の収量を実現し、単年での栽培を可能にした。
栽培モデルでは5月ごろに30センチ程度の苗木を定植。4カ月後には樹高が最大2メートルに達し、1個1キロ前後の実が収穫できる。実は秋にかけて断続的になり、本州では完熟しないため青パパイアとして利用する。収穫後、冬場になると木は低温で枯死し、さらに春先まで放置すれば腐敗が進み、土にすきこむことができる。
同社は「越冬が不要だと、従来は九州南部に限られていた露地栽培が、関東以西で可能になる」と説明。「越冬するための設備投資や燃料費が必要なハウス栽培に比べ、生産コストを大幅に抑えられる。手軽にパパイア栽培ができる」と強調する。
販売初年の2019年の苗木の販売量は約5000本。20年には大きい果実が収穫できる品種「フルーツタワー」を発売して品ぞろえを充実させ、販売を強化する。
機能性注目 生産が拡大
農水省によると、データがある直近の16年の国内生産量は487トンで、前年から倍増。過去10年で最多となった。県別では果実の生産が中心とみられる鹿児島県が364トンと最大で、全体の7割強を占めている。
果実の産地振興や消費拡大に取り組む中央果実協会の朝倉利員審議役は「パパイアは獣害や病害が少なく、生産に取り組みやすい。近年は機能性成分に注目が集まっており、消費は増加傾向にある。葉を茶に加工するなど、利用の幅も広がっている」と期待する。
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2019年12月13日

和子牛高騰「利益出ぬ」 家族経営にも「支援拡充を」 畜酪対策で佐賀の農家
2020年度の畜産・酪農対策を巡り、家族経営への支援策が焦点になっている。和牛子牛相場が高止まりする中、資金に余裕がない中小の肥育農家は経営改善に向けた新たな投資に踏み出しにくいのが実情だ。安定的な和牛生産を続けるため、家族経営でも利用できる支援の拡充を求めている。
肥育だけでは…慣れぬ繁殖も
佐賀県伊万里市で、家族と共に肥育経営をしてきた田口敬一郎さん(63)は、17年に繁殖雌牛を導入して一貫経営に乗り出した。肥育一本で生きてきた田口さん。繁殖の知識は少なく不安も大きかったが、踏み出したのは「市場で良い子牛を買えないからだ」と明かす。
田口さんが仕入れに行く長崎県や大分県の市場の子牛価格はここ数年、80万円以上で推移することが多かった。その相場で導入した牛を田口さんは現在、125万円ほどで出荷している。餌代や光熱費、資材費などを差し引くとほとんど利益が残らない計算だ。
このままでは経営が危うい──。田口さんはそんな思いで一歩を踏み出した。自家繁殖すればせりで買うより、コストを半分近くまで抑えられるからだ。2棟あった肥育用牛舎の一つを、部分的に繁殖用に改築した。
肥育経営が順調とはいえない中で数百万円がかかり、資金の捻出に苦労したという。「中小の肥育農家ほど一貫経営に乗り出すべきだが、使えるお金は少ない」と指摘する田口さん。家族経営の規模でも維持・増産を目指せるような支援策の必要性を訴える。
クラスター事業 要件緩和を要請
国はこれまで、畜産クラスター事業で畜産の生産基盤の維持・拡充を進めてきた。ただし一般的な施設整備の場合、対象となるのは地域の平均規模以上に飼養頭数を増やすことや、生産効率を向上することが条件。余力のない中小経営は手を出しにくい例が多かった。
JA全中は20年度畜産・酪農対策の重点要請で、地域全体の生産力の底上げにつながるよう、畜産クラスター事業の規模拡大要件の緩和を求めている。この他、肉用子牛の高騰が続いているため、家畜の導入などへの支援拡充を提起。経営を継承した際の支援なども必要とする。
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2019年12月08日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 水稲品種 古参に脚光 多収の晩生「アケボノ」生産拡大 業務用、酒造で引き合い
JA岡山西は、もうかる米作りの一環で、70年ほど前に育種された水稲「アケボノ」の生産拡大を進めている。古い品種だが、業務用米や酒造原料米として実需者の引き合いが強く、栽培しやすい多収性の晩生種として、生産者にも人気が高い。ポスト「コシヒカリ」をにらんだ品種開発が盛んだが、実需のニーズを見極めて古い品種にも光を当てた形だ。2018年産の集荷数量は1278トンで、品種別では主食用米の3割を占める計算だ。19年産は1440トンの集荷を目指す。
「朝日」と「農林12号」を親とする「アケボノ」は1953年に品種登録された。多収で倒れにくいのが特徴。米は、炊くと粒が大きく、歯応えがあり、あっさりした食味が楽しめる。外食や中食用として使われ、県内の卸業者は「粘りが少なく加工に向く。特にすし飯の需要が大きい」と説明する。酒造用の掛け米としても人気があり、JAの川上勝之営農部長は「生産拡大を呼び掛けているが、需要に供給が追い付かない状況だ」と話している。
同県浅口市の平喜酒造は「アケボノ」を掛け米だけでなく、こうじ米としても使う。原潔巳部長は「タンパク質が少なく、きれいなこうじができる。造った日本酒は淡麗な味わいで、料理に合う。米の品質にばらつきがないのも良い」と分析する。
生産者からの評価も高い。15ヘクタールで水稲を育てる倉敷市の山地康弘さん(59)は「費用や手間がかからず、安定して多収が見込める。晩生種のため、コシヒカリやヒノヒカリなどと作期分散しやすい」と栽培の理由を話す。
10アール当たり収量は例年、約540キロで、「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」よりも約120キロ多いという。一方、肥料代は10アール当たりで2000円ほど安い。JAの概算金は、最も高い「コシヒカリ」に比べると、18年産で60キロ当たり約1100円安いが、利益は「アケボノ」の方が大きくなる。
地域では、9月上旬から10月上旬に「あきたこまち」「コシヒカリ」「ヒノヒカリ」「にこまる」を収穫し、「アケボノ」は例年11月5日ごろに刈り取っている。山地さんは「品質が落ちないので、作業を急がずに済む」と、融通の利く特性にも満足する。「生産者にとって頼もしい品種。作り続けたい」と意気込む。
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2019年12月05日

直播向き米品種 耐病・耐暑多収強み 農研機構
農研機構・東北農業研究センターは27日、倒伏しにくく、直播(ちょくは)栽培に適した水稲品種「しふくのみのり」を育成したと発表した。これまでの直播栽培向け品種「萌(も)えみのり」に比べて暑さやいもち病に強いのが特徴。良食味で多肥直播栽培の10アール当たり収量は750キロを超える。
2019年11月28日

ブドウ果肉まで赤 ワイン用品種出願 大阪府
大阪府立環境農林水産総合研究所は、果肉まで暗赤色で、濃い赤色のワインが造れる醸造用ブドウ「大阪R N―1」の品種登録を出願した。一般的な赤ワイン用品種に比べ、植物色素のアントシアニン含量が数倍になるという。地球温暖化の影響による高温で果皮の着色不良が問題となる西日本などの地域でも高品質なワイン造りにつなげられる有望品種として期待される。
赤ワインは原料のアントシアニン含量が多ければ、濃い赤色に仕上がる。「大阪R N―1」の果実のアントシアニン含量は、赤ワイン用品種として知られる「ピノ・ノワール」や「メルロー」を数倍以上に上回る。国内で栽培されている既存品種にも果肉まで赤色になるものはあるが、単独で醸造しても風味が優れなかった。「大阪R N―1」は果実品質が良く、単独で醸造しても風味が良いワインになる。
この品種は府内の醸造所(ワイナリー)が40年ほど前に育成した。2018年に同研究所が新設した「ぶどう・ワインラボ」が、既存品種と異なる特性を持つことを確認した。今年3月5日に出願した。親はまだ特定できておらず、解析を進める。
苗の生産体制を整え、府内を中心に普及を進める考えだ。同研究所は「西日本を中心に、温暖化による高温で原料ブドウの果皮色が出にくくなっている。新品種で課題に対応できる」と有望視する。
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2019年11月27日

冬の大輪 優しく満開 蜂も人も元気“満タン” 香川県三豊市生産者の団体
香川県三豊市山本町河内地区に、季節外れのヒマワリ畑が出現し、話題を呼んでいる。地元農家の団体「河内アグリ活動組織」が秋冬に不足しがちなミツバチの栄養源にしようと耕作放棄地や休耕田を利用し、10カ所、計約1・5ヘクタールで栽培した。寒い日が増える中、花はまだ咲く予定で、12月半ばまで楽しめる。
事務局の白川良三さん(68)は「ミツバチも喜ぶし、きれいな花は多くの人を喜ばせるので一石二鳥」と語る。タマネギの採種をしている白川さんは、養蜂家から「冬は花が少なく、栄養不足で蜂の群れが小さくなる」と聞いていた。
そこで耕作放棄地などを利用してヒマワリを育ててみることにした。組織では、夏に幼児向けのヒマワリ迷路を作っており、こぼれた種が発芽し秋冬に花を咲かせることがあったという。
一昨年、9月に種をまくと、花が咲く時期に霜が降り元気を失ってしまった。昨年は8月上旬に種まきしたところ、10月中旬から12月中旬まで見事に咲き続け、今春、蜂箱にたくさんのミツバチが確認できた。白川さんは「ヒマワリの蜜で体力を付けた多くの蜂が冬を越した」と推測する。
「冬にこんな大輪に育つとは」「夏より優しい黄色」「一面に咲いて圧巻」などと好評で、多くの人が見物に訪れている。「自由に摘み取り、持ち帰って楽しんで」と白川さんは話す。
開花に合わせ、日曜日にヒマワリ畑で農産物の販売やミカンの詰め放題(100円)なども行い、一層の地域活性化に力を注いでいる。
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2019年11月26日

世襲より人物本位 “伴走” 期間経て 経営・信頼つなぐ
米や大豆、麦などを栽培する土地利用型の農事組合法人や大規模農家が、地縁や血縁のない従業員や若者らに経営をバトンタッチする第三者経営継承に取り組むケースが出てきた。農機など有形資産だけでなく、地権者の信頼も継承。経営主が後継者に経営ノウハウを伝える伴走期間を経て、次世代の担い手確保に対応する。
土地利用型の第三者継承
富山県砺波市の農事組合法人「ガイアとなみ」。同市若林地区を中心に130ヘクタールで米や大豆、麦などを栽培する。2年前、組合長は同地区の紫藤康二さん(70)から、地縁や血縁のない従業員だった中島一利さん(43)になった。
同法人は、地区の二つの営農組織が合併して1995年に法人化した。稲作に興味のあった中島さんが就職したのは2000年。ハローワークで求人を知り、近隣の射水市から通勤してきた。当初、中島さんも紫藤さんも後継者候補という意識はなかった。
紫藤さんは60歳ごろから継承を考え始めたが、法人の構成農家の身内には希望者がいなかった。次第に、人柄が信頼でき勉強熱心な中島さんに継承したいと考えるようになった。他の役員と話し合い、「世襲でなく、若く意欲のある中島さんに後を継いでほしい」との思いを長年伝え続けた。
作業計画の立案など責任ある仕事を意識的に任せられた中島さんは、組合長になることを見据えて、12年に法人に出資して役員となった。「土地に縁のなかった自分が後を継いでよいのか悩み、即決できなかった。ただ、地域の財産である農地をつなぎたいという気持ちはあった」と中島さん。5年かけて準備し、組合長に就任した。
資産は全て法人所有で、手続きは組合長の名義変更だけで完了した。地権者には段階的に丁寧に説明し、反対する人はいなかった。
現在、役員3人全員が同地区以外の出身で、中島さんは今も通勤しながら組合長を務める。同法人は役員、従業員の平均年齢が30代。イチゴ経営を始めるなど新品目にも挑戦する。中島さんは「土地利用型は地域を守る意味があり、存続が地域問題に直結する。自分も次の継承を見据えて経営する」と強調。紫藤さんは「経営ノウハウや思い、悩みも共有し、信頼を築けたので第三者継承が実現できた」と考える。
地縁・血縁超え
新潟県村上市で米など66ヘクタールを経営する農業生産法人「神林カントリー農園」では3年前、前社長とは血縁関係のない吉村敏秀さん(55)が代表を引き継いだ。吉村さんは「従業員として30年以上働いた長い準備期間があった。経営を継承するのに、血縁は特に関係なかった」と話す。
埼玉県熊谷市で25ヘクタールで米麦などを栽培していた掛川久敬さん(74)は今年1月、知人に紹介されて手伝いに来た20代の若者に経営のバトンを渡した。掛川さんが3年間、農業技術などをみっちり伝授。農機などは減価償却で計算し、農地や作業場は賃借料を払ってもらう。掛川さんは「地権者には自分が責任を取ると了解してもらった。意見のずれはあっても、最終的に判断するのは経営者。若者の意欲を尊重したい」と見守る。
担い手確保へ多彩な手法を 東京農業大学の内山智裕教授の話
果樹や畜産に比べ、土地利用型は地権者との関係性を踏まえなければならず、第三者継承には難しさを伴う。ただ地域資源を守っていくためには、第三者を含め多様な形で土地利用型の後継者確保を考えなければならない。
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2019年11月25日

棚田「残したい」7割 多面的機能に評価 農水省 初の意向調査
農水省は、棚田地域振興法の成立を受けて、棚田に対する国民の意向を初めて調査し、「棚田を将来に残したい」という回答が7割に達した。棚田米の購入などによる支援を望む声も多い一方で、支援したいと思わない回答も一定数を占めた。条件不利地での営農継続に向けて、国民全体で棚田を支える機運をどう高めていくかが問われる。
「支援せぬ」働き掛けを
全国の20歳以上を対象に調査し、1102人から回答を得た。
棚田を将来に残したいと回答した割合は、「知名度は高くないが地域で守ろうと頑張っている棚田は残したい」が51%、「全ての棚田を残したい」が17%、「一部の有名な棚田だけは残したい」が8%で、合計で76%に上った。
棚田を維持、保全したい理由は「澄んだ空気や水、四季の変化などが癒しや安らぎをもたらす」、「農地や農作物などがきれいな景色を作る」がいずれも37%と最多だった。多くの回答者が棚田が生み出す多面的機能を評価した格好だ。
一方、棚田を将来残すべきかどうかについて、「残ってほしいが荒れるのは仕方ない」が19%、「全てなくなっても構わない」が6%と、棚田の維持に理解を示さない回答も一定割合を占めた。理由は「農業をするには効率が悪い」が43%と最も多かった。
棚田の維持や保全のために何かしたいかについては、「したいと思わない」が34%で最も多かった。
ただ、2番目は「インターネットなどで棚田米などの農産物や加工品を購入したい」が26%、次いで「棚田を訪問し、棚田米などの農産物や加工品を購入したい」が23%、「ふるさと納税を通じて支援したい」が20%と、一定数が自ら支援したい意向を示した。
同省は「棚田が必要で、支えるべきと考える国民は多いと言えるが、理解が浸透していない部分もある。保全に向けた支援に加えて、国民への一層の周知にも力を入れたい」(地域振興課)と話す。
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2019年11月24日

旅するチョウ 花で“誘致” フジバカマ 栽培広がり町活気 香川
日本列島を春は北上、秋は南下し、合わせて2000キロ以上を旅するといわれるチョウ「アサギマダラ」。5年ほど前、その渡りの途中で香川県内に飛来することが話題になり、花を植えて呼び寄せる活動が観音寺市を中心に島しょ部に広がっている。
羽を広げると10センチほどの大ぶりのチョウで、模様の一部が「あさぎ色」であることが名前の由来。2014年、同市の有明浜で地元の自然観察会グループがその姿を確認し、「有明浜の海浜植物とアサギマダラ飛翔会」を立ち上げた。
調べてみると、アサギマダラの成長には特定の植物の蜜の摂取が必要だった。春は有明浜の「スナビキソウ」に、秋は多年草「フジバカマ」を目当てに立ち寄るという。
会は同市伊吹島の遊休農地などに植栽しチョウの“誘致”に成功。その後、元農業改良普及員で同会の杉村勝司会長が、フジバカマを挿し芽で1年に1000株以上を増やし、希望する学校や団体に寄贈を続けてきた。
市内の介護複合型施設「大興和の杜(もり)」もその一つ。目の前にある休耕田約5アールに3年前からフジバカマを植えている。今年は暖冬で、平年より1週間ほど遅い10月中旬から飛来したという。
施設の高嶋一志事務長は「アサギマダラが来ると、利用者やスタッフが写真を撮ったり、散策に出たりして楽しんでいる。施設の利用者にとっては生きがい」と笑顔を見せる。
同会によると、フジバカマの栽培は、同市の吉原地区、三豊市の粟島、丸亀市の本島などの団体や施設にも広がっている。
杉村会長は「アサギマダラが、人と人とのつながりを強め、地域を元気にしてくれた。自然の大切さも伝えていきたい」と話す。同会では、季節になると伊吹島の港に案内板を立てるなど、観光客を呼び寄せる工夫もしていく。
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2019年11月20日