持続可能な物流 顧客も“意識改革”を 立教大学経済学部教授 首藤若菜

首藤若菜氏

 スーパーには日々新鮮な食品が並ぶ。野菜や果物は、ほぼ毎日農家から市場へ、市場から小売店へと運ばれる。それを担うのが物流だ。トンベースで見ると、国内貨物の9割がトラックで運ばれている。

 だがここ数年、お盆や年末などの繁忙期には物流の滞りが懸念され、年度末には「引っ越し難民」が社会問題となってきた。これらは、人手不足によって引き起こされている。荷物もトラックもあるのに、ドライバーが足りないのだ。

 多くの産業で人手不足が指摘される。だが、全産業平均の有効求人倍率1・40に対し、自動車運転の職業は3・05(2019年7月現在)であり、この業界の労働力不足は深刻である。

 かつてトラックドライバーは「キツいが、稼げる仕事」と言われ、若者が多く参入する職業だった。しかし今は、新規求職者の2人に1人が45歳以上であり、営業用大型貨物自動車運転者の平均年齢は、男性労働者の平均を5歳上回る。

 背景には、この業界の労働条件の低下がある。そもそもトラックドライバーの仕事は、早朝・深夜を含む運行が多く、就業時間が不規則になりがちで、運転以外にも荷役など身体的負荷のかかる業務が多い。にもかかわらず、それに見合った賃金を受け取ることが難しくなった。1990年代、運賃が低下し、それに伴いドライバーの賃金が下がっていった。現在は、男性労働者平均と比べて、トラックドライバーの賃金は2割低く、労働時間は2割長い。
 

労働時間短縮へ


 このままでは、物流が持たない──との危機感から、業界団体、労働組合、国土交通省・厚生労働省などが中心となり、労働環境の改善に本格的に取り組み始めた。

 従来、労働問題の解決は、労使間で話し合い、政府がルールを作ることが主だった。しかしこの業界では、荷主を巻き込んで問題を解決しようとしている。適正な運賃の収受や長時間労働の是正にも荷主の協力が必要だと考えられている。多くのドライバーが荷主からの指示により、荷積みなどの付帯業務を請け負い、荷待ちしている結果、長時間労働となっているためだ。むろん荷主は、他社で雇用されるドライバーの長時間労働に法的責任はない。しかし、荷主の行動とドライバーの労働の在り方は、無関係ではない。

 特に農水産品の輸送は、負荷が高いといわれてきた。国交省・厚労省の調査によれば、農水産品輸送は、検品などの荷役時間や手待ち時間が長く、1運行当たりの拘束時間が最も長い。昨今では、物流市場が逼迫(ひっぱく)する中で運送会社も仕事を選ぶようになり、「キツい」輸送から手を引くところも出てきている。

 物流機能を持続させていくためには、荷主や顧客である私たちも、自身が依頼した業務の先に発生する労働に気付き、考えていくことが求められている。
 

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