世界食料デー 飽食日本 「食い改めよ」

 世界は二分されている。食べ物を捨てる人と食べられず飢える人に。今日は国連の「世界食料デー」。いびつな食の現実を見つめ、何ができるかを考えたい。国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)は、飢餓のない世界を目指す。世界中から大量に食べ物を買いあさり、捨てている日本の罪は重い。“食い改め”世直しを進めよう。

 飽食の向こう側で、一体何が起きているのか。国連などによると、世界の穀物生産量は毎年26億トンを超す。在庫もあり、人類の胃袋を満たすのに十分な生産がある。なのに9人に1人が慢性的な栄養不足に苦しむ。アジアやアフリカに集中し、3年前から増加に転じている。気候変動や政情不安が危機に拍車を掛ける。

 この世界では、8億人が飢え、19億人が食べ過ぎで、うち6億人は肥満である。なぜこんな食の偏在が起きるのか。

 先進国を中心に世界の食料の3分の1、13億トンが毎年廃棄されている。日本も「フードロス大国」で、年間約640万トンが捨てられている。国民1人が毎日、茶わん1杯分のご飯を捨てているのに等しい。37%と過去最低の食料自給率しかない国で、この大量消費・廃棄である。

 食べ物を捨てることは、生産に要した大量の水や土壌などの資源を無駄にすることでもある。長距離輸送に伴う二酸化炭素(CO2)排出など環境にも負荷を与える。

 飽食の裏側にある途上国の貧困と飢餓の現実を直視し、“食い改め”よう。それには食育が重要だ。食べ物の成り立ち、口に届くまでの道のりをきちんと教えることが欠かせない。グローバル時代の食卓を取り巻く環境、国内農業の生産基盤弱体化の実態を正しく伝えたい。

 そして、公正で倫理的な買い物を意味する「エシカル消費」につなげることが求められている。何をどう選択するか。賢い買い物が、世界の食料問題解決の一助になる。そんな自覚的消費者を増やしていこう。流通段階では、商慣行の見直しなどサプライチェーン全体でフードロス削減に取り組むことが、今や企業の社会的責任である。

 生産現場でもさまざまな貢献ができる。食品廃棄物を畜産の飼料として活用するエコフィードはその代表例だ。年間2000万トン近い食品廃棄物の再生利用率は7割程度にとどまっている。近年普及が進むエコフィードを伸ばすことは、世界の食料問題の解決にも寄与できる。

 併せて、世界の食料生産の8割を担う家族農業への支援が欠かせない。今年から始まった国連「家族農業の10年」は、貧困・飢餓の改善に大きな役割を果たす家族農業の振興を呼び掛けている。

 日本もいま一度、家族農業の役割を再評価し、政策の中軸に据えるべきだ。「世界食料デー」を契機に、世界に目を向け、食の主権や食料安全保障の大切さを考えていきたい。

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