台風19号 農業に甚大な被害 全容把握には時間

久慈川からあふれた水が押し寄せた園地。収量減を抑えるため、園主の塙さんが消毒作業に追われていた(15日、茨城県大子町で=木村泰之写す)

 東日本を中心に各地を襲った台風19号の被害が15日、明らかになってきた。河川の氾濫が相次ぎ、濁流が家屋や農地、ハウスをのみ込んだ。自治体などによると、11県で死者は60人を超え、行方不明者も多数出ている。浸水被害は東日本の広範囲にわたり、各地で警察や消防による行方不明者の捜索などが続けられた。甚大な農業被害が見込まれるが、全容把握には時間がかかる見通しだ。
 

茨城 復旧見通し立たず


 国土交通省によると、47河川で堤防66カ所の決壊が確認されるなど、各地で甚大な浸水被害が出た。千曲川流域では長野県内の26カ所のうち25カ所で浸水が解消。堤防が決壊した長野市の穂保地区では学校や病院があるエリアを含む8割超が解消した。総務省消防庁によると、15日午後3時現在、栃木、福島両県などで引き続き約36万人に避難指示が続いた。同日午前5時現在で13都県の約5500人が避難所に身を寄せている。

 茨城県を流れる那珂川が決壊し、JA常陸管内ではイチゴ農家などの、JA水戸管内ではネギ農家などのビニールハウスに水が押し寄せ、ハウスの骨組みが曲がったり、泥が入って作付けが困難になったりするなどの被害が起きている。

 JA常陸管内の常陸大宮市でイチゴ25アールを栽培する菅野大志さん(39)のビニールハウスは高さ約2メートルが水に漬かった。「いばらキッス」など6品種全てが泥に覆われた。苗や直売所、事務所、農機などの設備も使えなくなった。菅野さんは「台風15号被害で農業用施設を担う業者が少ない中、復旧はいつになるか分からない。費用面も人手も十分な支援がほしい」と求める。

 同JA管内の大子町では、久慈川からあふれた水が収穫間近のリンゴを襲った。リンゴ狩りや直売をする塙正比古さん(70)は消毒作業に追われる。自宅は高さ3メートルまで水に漬かった。園地は、泥や上流から流れてきたがれきが押し寄せた。塙さんは「諦めようと思ったが、14日にリンゴ狩りを毎年楽しみにくる幼稚園の関係者が来た。園児のためにリンゴを守りたいという思いになった」と気張る。同町は48戸が50ヘクタールでリンゴを作る。塙さんは「泥やがれきを片付ける人手がなく、手が回らない」と嘆く。
 

宮城 収穫間近も全滅


 台風19号による豪雨で阿武隈川が氾濫し、町役場が水没した宮城県丸森町では14日夕方から中心部の水が引き、山間部を中心に崖崩れや道路の陥没が分かった。収穫を間近に控えた野菜も水に漬かった。町の中山間地では用水路に泥や石が押し寄せ、農家は来春の田植えへ不安を訴える。

   
台風の被害で倒れたハウスを指差す椿井さん(15日、宮城県丸森町で=川崎学写す)

 「ここまでの水量は初めて。秋の農業収入は無くなるかもしれない」と同町の椿井繁美さん(69)は嘆く。椿井さんは阿武隈川と五福谷川の合流地点に近い場所でハクサイやキャベツ、水稲などを計2ヘクタール栽培する。1986年8月に東北を中心に大きな被害が出た「8・5水害」以上の水位の高さだったという。

 12日夜から川が増水し、泥水が畑やハウスを襲った。自宅は海抜が高く、浸水は免れたが、ハクサイやキャベツ、ダイコンなど秋以降に収穫するものは全滅だという。椿井さんは「やる気がなくなる。営農の継続は息子と相談する」と話す。

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