甚大な台風被害 防災対策 抜本見直しを

 台風19号は、記録的な豪雨で未曽有の被害を広域で多発的にもたらした。地球温暖化に伴い今回のようなスーパー台風が常態化するとの指摘がある。政府は危機感を持って防災対策を根底から見直すべきだ。地震や台風などの防災対策は国家の安全保障である。

 台風19号による被害の全容はまだ分かっていない。だが、神奈川県箱根町の12日の24時間の雨量は922・5ミリで、それまで最多だった高知県馬路村の851・5ミリを上回った。東海から東北にかけて、24時間雨量の記録を更新する地点が続出した。

 河川の堤防の決壊や土石流などの土砂災害も相次いだ。堤防が決壊したのは、吉田川(宮城県)、宇多川(福島県)、久慈川(茨城県)、越辺川(埼玉県)、秋山川(栃木県)、千曲川(長野県)などで、死者・行方不明者は80人を超える。住宅の床上、床下浸水などの住宅被害は2万棟以上に上り、停電などインフラにも大きな影響が生じた。

 農業関連でも田畑の冠水、イチゴやトマトのハウスの水没の他、JA支店や農機センター、果樹園、ガソリンスタンドなどに濁流が押し寄せ、大きな被害が出ている。停電や道路の寸断による物流の混乱は酪農や青果物に影響を与え、生乳の廃棄も発生している。

 こうした状況を受けて、政府は補正予算の検討も含め財源を確保し、復旧を急ぐ方針だ。だが、課題は多い。政府の中央防災会議が今年5月に修正した防災基本計画は、少子高齢化や人口の偏在を踏まえて「一極集中の是正」を掲げたが、首都圏へのいびつな人口増には歯止めがかかっていない。

 同基本計画は「人口減少が進む中山間地域や漁村等では、集落の衰退、行政職員の不足、地域経済力の低下等」が生じているとも指摘した。老朽化した農業用ため池については、自治体の管理権限を強化する農業用ため池管理保全法が先の国会で成立したが、緒に就いたばかりだ。ハード、ソフト両面から防災対策を見直す必要がある。地方自治体任せではなく、防災対策は国家の安全保障に関わる問題として、国が主導するような対応も検討すべきである。

 台風19号は発生直後、一気に勢力を強め、そのまま日本列島に襲来した。日本のすぐ南の海水温が27度以上で平年より1、2度高く、水蒸気をたくさん取り込んだためとされる。基本計画を修正した際の資料では、日本の年平均気温が長期的には100年当たり約1・21度の割合で上昇し、特に1990年以降、高温となる年が続出していることにも警鐘を鳴らした。

 温室効果ガス排出削減にどう向き合うか。台風19号は地球温暖化対策への姿勢も問う。温暖化が進めば、スーパー台風の襲来は常態化しかねない。防災対策の抜本見直しとセットで、温暖化対策も待ったなしで取り組む必要がある。
 

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