台風19号 畜産に大打撃

溺死した牛を牛舎の外に運び出す芳賀さん(左)。餌や機械は泥まみれになった(16日、福島県郡山市で=高内杏奈写す)

 台風19号の大雨による河川の氾濫は、東日本各地の畜産に大きな被害をもたらした。福島県郡山市では阿武隈川の氾濫で牛舎が浸水、牛が濁流にのみ込まれ多数が死んだ。栃木県茂木町でも那珂川の氾濫で多数の牛が流された。営農再開の見通しの立たない状況に農家は途方に暮れている。(高内杏奈、中村元則)
 

濁流猛威愛牛失う 福島


 「手塩にかけて育てたのに……。泥水を飲み、ガスがたまって球のように膨れ上がった牛が転がっていた」

 福島県郡山市の阿武隈川沿いで酪農を営む芳賀義春さん(55)は涙ぐむ。27頭のうち19頭が溺れ、窒息・衰弱で絶命した。「こんなに被害が大きいとは。まだ混乱している」と肩を落とす。

 12日に避難指示が発令。妻と息子と牛舎から車で3分の高台のわら小屋に避難し、一晩過ごしたが、激しい雨風で寝られなかった。午前4時に牛舎を見に行ったところ、黒く濁った川水にのまれ、水没。屋根しか見えなかった。「何もできない。濁流音だけが響き、心が押しつぶされそうだった」と話す。

 水が引いた15日、牛舎に足を踏み入れると「地獄絵図だった」。牛は泥水で腹がパンパンに膨らみ、柵に引っ掛かったり、牛舎外の柿の木の根に絡まったりしていた。

 生き残った8頭は県内農家に預け、15日から牛舎の掃除、牛の運び出しを始めた。牛1頭の体重は約700キロで、クレーンでつって運び出すため1頭約30分かかる。真空ポンプやバルククーラーも浸水、故障した。「再開の見通しは立っていない。好きな酪農業を続けたいが、廃業もやむを得ないかもしれない」。自宅も浸水し、生活するのがやっとだという。

 県内は、洪水で牛舎や飼料倉庫に土砂が流入する被害が相次いで発生。被害の全貌は分からず、県は懸命に調査している。
 

無事願い捜索続く 栃木


 栃木県茂木町の肉用牛の繁殖・肥育農家、瀬尾亮さん(65)は、台風19号による那珂川の氾濫で飼っていた牛23頭が流された。23頭は全て那珂川沿いの放牧地にいて、台風襲来後に川の越水が起こり、濁流にのみ込まれた。15頭は見つけたが、残る8頭を今も懸命に探している。

 瀬尾さんは、13日に警察に被害届を提出。その後、那珂川沿いで「牛がいる」という問い合わせが相次いだ。JAはが野の職員が手伝うなどし、懸命の捜索が続いた。

 16日午後3時までには15頭の無事を確認した。「体をなでると土ぼこりが舞い、泥水に漬かっていたのが分かった。苦しかったと思う」と瀬尾さん。ただ、親牛2頭、子牛6頭が見つかっておらず、無事に見つかることを祈っている。
 

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