和牛放牧 新規参入者へ道筋示せ

 農研機構が放牧活用型畜産に関する情報交換会を東京都内で開いた。初期投資が多額で新規参入が難しい畜産だが、放牧を利用した和牛繁殖経営は比較的参入しやすい。畜産に興味を持っている人に、和牛の放牧経営を知ってもらうため、参入の手順を示し、優良事例を発信するこうした取り組みが必要だ。

 独特の風味がある和牛肉は、安価な輸入牛肉に対抗し得る資源だ。しかし、土台を支える和牛の繁殖経営は、高齢化に伴い農家戸数が減っている。肥育もと牛の供給量を確保するには既存の経営体の規模を拡大するだけでなく、若手の新規参入を促したい。

 和牛肥育農家や酪農家が事業の多角化として和牛繁殖に取り組む例もあるが、最近は全くの異業種から参入する例も出てきた。農研機構が都内で開いた情報交換会では山梨県や岡山県で新規参入した例が報告された。それ以外にも農業外から参入した例は各地に生まれている。

 自衛隊を除隊し、離農した酪農家の施設を借りて繁殖経営を始めた北海道の経営者は「和牛繁殖経営は競合する相手がいない」と新規参入した理由を話す。高齢農家がやめていく中、和牛子牛の需要は強く、繁殖技術がしっかりしていれば、確実に収益が見込めるという。他の畜種より参入の壁が低い。

 大分県豊後高田市では、農業未経験者が相次いで和牛繁殖経営をスタートさせている。いずれも放牧を取り入れている点が特徴だ。耕作放棄地に牛を入れ、冬も牛を放す。荒れた農地に侵入した樹木の伐採には助成措置もあり、放牧を使った和牛繁殖経営は、畜産の中では「比較的、入っていきやすい」と同市では受け止めている。

 乳牛の場合、飼養頭数に占める放牧の割合は22%前後になるが、肉用牛繁殖では16~18%と少ない。乳用初妊牛の高騰で、地域によっては公共育成牧場が混んで利用しにくくなっているが、耕作放棄地なら地権者の同意を取り付ければ利用可能だ。

 荒れた耕作放棄地が、放牧を取り入れることで美しい草地に生まれ変わる。農地の保全ができ、和牛の生産基盤も拡充できる。各地で誕生し始めた新たな和牛繁殖経営の担い手を参考に、さらに新規参入者を増やす手だてを考えたい。

 農業高校や農業大学校の畜産科には、農家出身ではないが動物が好きだという若者が集まっている。農村暮らしに憧れる都会人もいる。こうした和牛繁殖経営への新規参入が期待できそうな層に、具体的な道筋を示す必要がある。

 近年は最新の情報通信技術(ICT)を放牧に導入する取り組みもある。新技術も含め、初心者にも分かりやすく放牧技術を伝えることが重要だ。実践事例も交え、資金の調達方法、助成措置、相談窓口などを網羅したマニュアルを整備するなどで、和牛繁殖経営へ新規参入者を導く道筋をつくってほしい。
 

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