西日本豪雨禍 ミカン2期目の出荷 復興道半ばも…産地の意地実る “脱被災地”へ品質で勝負 愛媛県宇和島市

被災した園地を管理する山本平さん(愛媛県宇和島市で)

 愛媛県宇和島市のミカン農家が、西日本豪雨での被災から2度目の出荷シーズンを迎えた。極早生種からの切り替えが円滑に進み、主力の早生種は好調な滑り出しとなった。農家は今年、ブランド産地として味と品質で勝負しようと、“脱被災地”を目標に掲げる。一方、県内では国の事業で園地再整備にこれから着手する所も多く、復興は道半ばと言えそうだ。(丸草慶人)
 

早生種は順調


 「昨年は市場や小売り関係者に助けてもらった年だった。今年は本来の産地が持つ味と品質で評価してもらいたい」。JAえひめ南玉津共選の山本計夫共選長は、早生ミカンの出荷が本格化し意気込んでいる。

 市やJAは10月31日、東京都中央卸売市場大田市場で早生種の出回りに合わせ、トップセールスを開いた。試食コーナーは出荷を待ちわびた買参人でにぎわい、食味の良さを評価する声が相次いだ。

 同日の価格は1箱4860円(10キロ・高値)と前年比13%高。県産は極早生種からの切り替えがスムーズに進み、買参人の食味に対する期待感があったという。今後、被災した前年に比べ正品率も上回る見込みだ。

 卸売会社のせり人は、「産地で好天が続いているので食味はさらに良くなる。農家には品質の良いミカンの出荷を徹底してもらい、復興の歩みを消費者にPRしたい」とエールを送る。
 

困難乗り越え


 同市吉田町玉津地区は、西日本豪雨で被害が大きかった産地の一つだ。ミカン農家の山本平さん(32)は、栽培する4ヘクタールの1割で土砂の流入や園地が崩れる被害を受けた。ミカンを園地から作業道に運ぶモノレールが破損したり、防除やかん水に使うスプリンクラーが壊れたりしてシーズンを通して十分な管理ができなかった。

 家屋や生活道に流れ込んだ土砂の除去など地域の復旧活動に参加し、発災後の2カ月間は自らの園地に行けず、もどかしさを感じたという。今年に入っても梅雨明けが平年より1週間ほど遅れ、台風も相次いだ。一部の道路が不通でわなを仕掛けられず、イノシシの被害は例年になく多い。

 ただ、山本さんの表情は明るい。「今年は防除などで品質管理に励み、例年通りに作業ができた。被災した産地としてではなく、玉津本来のミカンをようやく出荷できる」と話す。
 

優良園地残す


 一方で、園地の復旧はこれからだ。県によると、国の災害復旧事業を活用した果樹園地の復旧には県内の419カ所から申請があったが、工事に着手したのは9月末時点で32カ所と、1割未満にとどまっている。

 西日本豪雨で被害を受けた果樹園地は、県全体で約300ヘクタール。このうち約160ヘクタールは国や自治体の事業を活用しながら、被災前に近い状態に復旧させる「原形復旧」や、区画の形状を整える「改良復旧」を予定する。

 被災園地を取り込んで大規模園地を造成、作業効率が良い園地に作り替える「再編復旧」には、県東、中、南部の四つの地域で検討が進む。山本さんらの園地がある同地区は、再編復旧へ乗り出すことが決まった。

 再編復旧では、高齢化が進む産地の現状を踏まえ、災害に備える意味でも計画的な産地基盤の強化策に期待が集まる。県内の果樹農家で組織する愛媛県果樹同志会の長岡隆浩会長は「若手農家が増えてきた今こそ、次の世代に優良園地を残すため、基盤整備の検討が必要だ」と指摘する。
 

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