台風支援策 現場の声聞いて―

浸水で傾いた矮化栽培のリンゴの木の横で資材を片付ける小滝さん(長野市で)

流れ着いた稲わらの下から収穫前の湿った稲を取り出す大内さん(宮城県丸森町で)

 相次ぐ台風で東日本を中心に甚大な農業被害が出ている。政府は週明けにも追加対策をまとめる方向だ。19号特有の浸水被害への対応が課題となる中、生産現場からはスピード感を持った万全な対策を求める声が高まっている。(川崎学、藤川千尋)
 

未収益期間長く リンゴ改植 長野市長沼地区


 台風19号で千曲川の堤防が決壊し、リンゴが大きな被害を受けた長野市長沼地区。復旧の動きが始まる中、生産者からは国が示す支援策では被害を受けたリンゴの木の改植後の費用や補償期間が不十分として、手厚い支援を求めている。

 同地区で約2ヘクタールのリンゴなどを矮化(わいか)栽培と慣行栽培していた小滝和宏さん(36)は、管理していた大半の木(約1500本)が被害を受け、改植する必要があるとみる。「植え替えができるのは春だけ。来春から営農再開するとしたら(改植するか判断する)リミットは近づいている」と強調する。

 現在の国の支援策である「持続的生産強化対策事業」は改植に必要な苗木代や樹体の撤去費用などで、リンゴの場合は10アール17万円を助成。植え替え後の未収益期間を4年と見積もり、その間必要な肥料や農薬の費用として10アール22万円を一括交付する。

 ただ、小滝さんは未収益期間が4年とされていることに疑問がある。矮化栽培は定植して約4年で収穫できるが、慣行栽培は7、8年かかる。小滝さんは「全ての農地が矮化栽培に適しているわけではない。費用、補償期間の両面で充実してほしい」と訴える。

 同地区の若手農家16人でつくる「長沼林檎(りんご)生産組合ぽんど童」組合長の徳永慎吾さん(38)は「収入がゼロで、復興するにも手元資金がない農家もいる。国はスピード感を持って一層の支援策を打ち出してほしい」と要望する。JAながの営農部の小林芳則次長は「復興に取り組み始めた農家もいれば、園地に入れない農家もいて被害の程度はさまざま。ケースに合わせて長い目での応援が重要だ」と話す。
 

収穫後も対象に 保管米浸水 宮城県丸森町


 宮城県丸森町の米農家、大内喜博さん(36)は、台風19号の豪雨で自宅近くを流れる阿武隈川があふれ、大きな農業被害を受けた。自宅や自宅横の米の乾燥調製施設が浸水。トラクターなどの農業機械は水没し、使えなくなった他、施設に保管していた米袋3000袋(1袋30キロ)が水に漬かった。

 大内さんは、水稲50ヘクタールを栽培する地域の担い手。農地集積し、延べ60戸の農家から乾燥調製作業も受託する。収入保険に来年、加入する準備を進めている中での被害だった。収穫予定の稲の多くは、周囲から流れてきた稲わらの下に沈む。農業共済制度に加入し、収穫前の被害は補償されるが、収穫後は対象外。水に漬かった3000袋分の収入は途絶えるため、保管米への支援を求めている。

 収入が見通せない一方、自宅の再建費や壊れた農機具の更新、集積農地の地権者への支払いなどが積み重なる。大内さんは「農業をやめようとは思わないが、元々あった農業機械をもう一度買い直すと、一生借金を返せなくなる」と苦しい胸の内を明かす。

 今後、懸念されるのが地域の生産基盤の維持。集落内に複数の担い手がいるが、兼業など小規模経営の農家も多い。大内さんは「兼業農家への支援もないと離農を招く」とみて、幅広い支援を訴える。
 

求む 飼料用稲わら 畜産で不足を懸念農水省がHP計画


 台風の影響で飼料向けの国産稲わら不足が懸念されることを踏まえ、農水省は希望する畜産農家と、収集・販売できる農家・組織とを結び付けるホームページ(HP)を立ち上げる。協力できる農家らの連絡先を掲載し、畜産農家が個別に連絡する仕組みを検討。同省は「近く公開したい」(畜産部飼料課)としている。

 稲わら収集に協力できる稲作農家は、市町村を通じるなどで同課に連絡先を伝える。協力農家には泥などの混入を避け、自脱型コンバインでの収穫時にはわらカッターを解除するよう求める。「収穫後に水田に置いてある稲わらも、利用できる場合がある。すき込み前に相談してほしい」という。また、専用の稲わら収集機械を持つ畜産農家やコントラクター(農作業受託組織)をリスト化し、作業を効率的にする他、稲わらの一時保管場所の確保にも取り組む。
 

おすすめ記事

地域の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは