季節にはさまざまな顔がある

 季節にはさまざまな顔がある。秋は「彩り」と「白」の二つの様相を持つという▼中国北宋の画家郭熙(かくき)は、〈秋山は明浄にして粧(よそお)ふが如(ごと)く〉(山水訓)と表現した。これが、俳句で秋の季語「山粧う」の出処である。紅、黄、緑の色とりどりに彩られた山の様子がまぶたに浮かぶ。俳人高浜虚子は、〈眼をつぶれば今日の錦の野山かな〉とあでやかな山の彩りを詠み切った。北国では山のカエデやツタが色づき、人の目を楽しませる頃である▼同じ中国でも、古い五行説では秋を表す色は白となる。白は全ての色を邪魔しない「色なき色」とされ、秋は「色なき季節」とも呼ばれる。天高く明るい空、柔らかい光、そしてススキの白銀の穂波が秋風を一層白く感じさせる。その趣を詩人北原白秋は名前に取った。矛盾するかのような二つの様相が違和感なく収まるのが秋という季節である▼11月は旧暦の霜月である。一般に霜降月が短縮されたとされるが、「食物月(をしものつき)」が略されたという説も捨て難い。収穫したばかりの幸が食卓に並べば、おのずと食欲が増す。宮内庁には14日からの大嘗祭(だいじょうさい)に供えられる全国の特産品「庭積机代物」のうち、米やアワが届いた▼秋は穀物の収穫が「飽き満ちる」から派生したとすれば、やはり「食物月」が似合う。
 

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