酪農乳業将来戦略 生乳800万トンへ基盤強化

 Jミルクは、農水省の新たな酪農肉用牛近代化方針(酪肉近)に反映させるため、酪農乳業将来戦略ビジョンを発表した。10年後の生乳生産を現行の1割増の最大800万トンと明記したことがポイント。酪農の生産基盤をどう維持・強化するか。国は政策支援の拡充に踏み込むべきだ。

 食生活にとって牛乳・乳製品は、欠かせない重要食品の一つ。国内生乳需要量は年間1200万トンで、品目では最も多い。だが、酪農後継者不足に加え相次ぐ貿易自由化で、国内生乳生産は約730万トンにまで落ち込んでいる。牛乳・乳製品の自給率も低迷している。果たして、酪農乳業が産業として将来的にも生き残っていけるのか。危機感が業界を覆う中で、Jミルクは今回の戦略ビジョンをまとめた。重点は家族酪農と都府県の生産基盤の支援だ。

 会見で川村和夫会長(明治ホールディングス社長)は「強い危機感を持つ。特に都府県酪農の生産基盤の立て直しは緊急課題だ」と強調した。戦略ビジョン発表と同時に実施した農水省への要請でも、最重点事項に①生乳需給バランス②国際化対応③自給飼料──確保を挙げた。先の食料・農業・農村政策審議会畜産部会でも乳業側から「酪農なくして乳業の存続もない」と、特に都府県の生産基盤の弱体化を憂慮する意見が出た。

 ビジョンの提言タイトルは「力強く成長し信頼される持続可能な産業を目指して」。キーワードは持続可能性。国連が進める持続可能な17の開発目標を定めたSDGsへの対応も踏まえた。生活と健康に欠かせない食品を提供する酪農乳業を次世代に引き継ぐため、業界が行うことや必要な政策支援を項目ごとに明記した。酪農乳業を生産者、乳業、国の“三位一体”で守り、発展させる方向性を示したものと言っていい。

 酪農と乳業はこれまで、飲用乳価交渉などで激しく対立してきた歴史も持つ。だが、国産需要に生産が追い付かず、結果的に輸入乳製品の増大を招く悪循環の中で、業界全体の発展を目指す機運が高まっている。2019年度の飲用乳価交渉で、酪農団体側のキロ7円以上の要求には届かなかったが、大手乳業が同4円の引き上げに応じたのは生産基盤の弱体化に配慮したことが大きい。酪農乳業の「運命共同体論」が比重を増す。

 今後とも持続的発展に欠かせない視点は成長性、強靭(きょうじん)性、社会性の三つ。令和の時代は頭文字から「Rの時代」ともされるが、強靭性(レジリエンス)の「R」とみていい。むしろ、度重なる災害や需給変動に耐え対応する柔軟性と言い換えることもできる。

 戦略ビジョンでは、10年後の生乳生産目標を775万~800万トンと明記した。今後の畜産部会の酪肉近論議でも焦点となる。国は、増産を担保する環境整備、政策支援に重大な責任を持つことは言うまでもない。
 

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