万葉の昔から、皇族は歌を通し時代を見つめ思いを伝えてきた。そこには歴史の悲哀やロマンが漂う
2019年11月14日
万葉の昔から、皇族は歌を通し時代を見つめ思いを伝えてきた。そこには歴史の悲哀やロマンが漂う▼日本最初の和歌は新婚が題材だった。須佐之男命が〈八雲立つ出雲八重垣妻籠(ご)みに〉と。『日本史を動かした歌』(田中章義著)に学ぶ▼「大化の改新」を断行し天智天皇となる中大兄皇子は〈わたつ海の豊旗雲に入日さし今夜の月夜清明(あきらけく)こそ〉。大海原に旗のようにたなびく雲間に夕日が輝く。月はさぞ清く明るいだろうの意を込めた。だが発句後には唐・新羅連合軍に敗れ日本外交を一変させた「白村江(はくすきのえ)の戦い」へ▼202年前に生前退位した光格天皇は〈民草に露の情をかけよかし代々の守りの国の司は〉と詠む。「天明の大飢饉(ききん)」に際し将軍・徳川家斉に先の句を送り、民衆の救済を訴えた気骨も持つ。明治天皇は近代日本の心意気を〈あさみどり澄み渡りたる大空の広きをおのが心ともがな〉と歌う。清く果てしない大空の広さをわが心として生きたいと。〈大いなるまがのいたみに耐へて生くる人の言葉に心打たるる〉。「まが」とは災い。東日本大震災時に天皇陛下(現上皇さま)が詠まれた▼きょうの「大嘗祭(だいじょうさい)」で新天皇陛下は国家安寧と五穀豊穣(ほうじょう)を願う。国民の喜怒哀楽と歩む歌は象徴天皇の証し。「令和」でも引き継がれるだろう。
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街を歩けば、掲示板の何と多いことか
街を歩けば、掲示板の何と多いことか。標識、標語、宣伝。つい見てしまうのが、お寺の掲示板である▼近くの寺は、ほぼ毎月、更新する。「自分が変われば相手も変わっていく」「実践こそ現状を変える」。説教臭くもあるが、妙にしみる時もある。気になる存在だと思っていたら、なんと「輝け!お寺の掲示板大賞」なるものがあった▼仕掛け人は、仏教伝道協会の江田智昭さん。聞けば、昨年7月、お寺の掲示板の写真の投稿を呼び掛けたのが始まり。4カ月で約700作品が集まった。2018年の大賞は「おまえも死ぬぞ」。お釈迦(しゃか)様こと釈尊の教えだとされる。生と死の本質に迫り、インパクトは絶大。これで認知度が高まった▼掲示板の言葉は、仏の教えから人生訓、著名人の名言までさまざま。寺の個性がにじみ出る。「掲示板はお寺と一般の人の境目にあり、双方をつなぐ存在」と江田さん。今年は925作品が寄せられた。5日に発表された大賞は「衆生は不安よな。阿弥陀動きます」。松本人志さんの「後輩芸人たちは不安よな。松本動きます」をもじったもの。全ての生き物の身を案じた阿弥陀仏の教えを伝えた▼衝撃を受けたのは、大分の寺に掲げてあった一言。「ばれているぜ」。深くて怖い。官邸前に張り出したい。
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2019年12月06日

地元でもやりたいことできる “Uターン組”食で催し 新潟県糸魚川市
新潟県糸魚川市にUターンした若者らが、「つなぐKitchen Project(キッチンプロジェクト)」のメンバーとして、食を題材にしたイベントを企画・開催している。プロジェクトを通して、糸魚川を離れた若い世代に「糸魚川でも自分たちのやりたいことができる」ということを伝えていく。
メンバーは市役所職員の杉本晴一さん(26)、イタリアンシェフの渡辺光実さん(28)、米や果実などを栽培する生産者の横井藍さん(28)と、JAひすい営農指導員の小野岬さん(24)。
市の広報紙の取材で若手Uターン経験者として杉本さん、渡辺さん、横井さんが集まり、3人で意見を交わす中で「それぞれのやりたいことが3人ならできる」と意気投合し活動を始めた。
その後、女子メンバーが欲しいという横井さんの希望で、巡回で来ていたJAの小野さんが仲間に加わった。プロジェクトチームの名前には「糸魚川のいろいろなところで人・物・事をキッチンでつなぐ」という願いを込めた。
職種の異なるメンバーが、それぞれの得意分野を生かしながら活動。7月には「ハヤカワ夏のピザまつり」を開いた。親子連れ30人が参加し、夏野菜をトッピングしてピザを作った。11月には「ハヤカワ秋のイモまつり」を開いて親子20人が焼き芋などを楽しんだ。
補助金を頼りにせず、全てを参加費で賄えるよう工夫して企画・運営している。メンバーは7月のイベントに合わせて動画投稿サイト「ユーチューブ」を参考にピザ窯を手作りし、11月のイベントでも大活躍だった。
横井さんは「畑で作られた野菜を味わって土に触れる感動を子どもたちに伝え、食を通して農を知ってもらえるような活動をしたい」と意欲を見せた。今後は小学校で取り組む「キャリア教育」などを通して農業の現場と教育の現場をつなぐとともに、イベント依頼などに積極的に対応していく。
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2019年12月07日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 店頭PRボード 腕前は県トップ 池田支店 佐藤菜美さん
JA岡山西池田支店の佐藤菜美さん(32)が飾るJA情報を発信するブラックボードが好評だ。色鮮やかなマーカーや小物で飾り、必要な情報を効果的にPRする。今秋にはJAバンク岡山主催のボードPRコンテストで最優秀賞を受賞。ボードで来店者との会話も増え、地域とJAをつなぐ。
ボードはJAの全32支店に設置。信用・共済窓口の職員がボードを自作し、来店者に、ひと目見て情報が伝わるよう工夫する。
新商品があるときなど、興味を持ってもらえるよう意識しているという佐藤さん。「目を引く色を使い、イラストを入れ文字はなるべく増やさず、読みやすさを心掛ける」と話す。
佐藤さんは9月上旬にJA本店で開いた「JA岡山西ブラックボードPRコンテスト」で最優秀賞に選ばれ、JA代表として県のコンテストでも優勝。「ボードが会話のきっかけになり、お客さまとの触れ合いにもつながっている」という。
JA共済連岡山が11月に開いた「自動車共済ブラックボードコンテスト」では、JA代表として総社西支店の須山友美子さんが準優勝に選ばれるなど、職員同士でも工夫し合っている。
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2019年12月04日

所得向上に重点を 年内に論点まとめる 自民基本政策委
自民党の農業基本政策検討委員会(小野寺五典委員長)は4日、来年3月に改定を予定する政府の食料・農業・農村基本計画について、年内に一定の論点をまとめる方針を確認した。同委員会の顧問を務める宮腰光寛・前沖縄北方相は、農業の経営継承や農家の所得向上に重点を置くべきとする考えを示した。食料自給率目標だけにこだわらず、深刻化する農業の担い手不足などの課題に直結した内容に見直す狙いとみられる。
小野寺委員長は「年内に一定の論点をまとめ、具体的な内容について踏み込んだ政策を図っていきたい」と述べた。
宮腰氏は「今回は農家の高齢化や若い農業経営者の不足などを考えると農地を含めた経営継承が大きなテーマだ」と強調。その上で「農家の農業所得や農村での所得をどう上げていくかが基本計画の目玉になるべきではないか」と提起した。
現行計画ではカロリーベースの食料自給率目標を45%に掲げるが、直近の18年は37%と過去最低に落ち込んだ。45%達成に向けた品目別の生産努力目標も大半の品目で実現が難しい状況だ。
党内には自給率を目標にすることを疑問視する声は少なくない。米中心だった食生活が変化していることへの対応に加えて、自給率低下を招いたとの批判をかわしたい思惑も見え隠れする。
一方、農業就業者は2015年で196万人と、政府の見通しを7万人程度下回る。担い手不足を背景に農地面積も減り続け、直近の19年で439万7000ヘクタールとなり、政府の25年の確保目標440万ヘクタールを早くも下回る。
会合では「規模の大小を問わず、経営を継承している農家にはしっかり支援しないといけない」(進藤金日子氏)、「水田地域を維持するには兼業農家を含む関連人口が多くないと大規模農家が(過重負担で)苦しくなっていく」(鈴木憲和氏)などの意見が挙がった。
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2019年12月05日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 受託田の水管理住民がサポート
JA岡山西は、JAの作業受託組織を住民が支援する「稲作りサポーター」制度を導入し、JAと地域住民で農地を守る体制を整えた。条件不利地や飛び地などの農地は受託が難しいが、日常的に必要な水管理をサポーターが担うことで、受託能力を高める。2019年は7人が、サポーターとして約5ヘクタール分の管理を担う。
サポーター制度を取り入れたのはJAの子会社として13年に設立した岡山西アグリサポート。19年度は水稲24ヘクタール、タマネギ1ヘクタールを栽培する。
倉敷市を中心に農地中間管理機構(農地バンク)を通じて、高齢で農作業が難しい生産者らから農地を預かるが、受託地は170カ所に分散され、面積拡大にも限界が出ていた。対策として16年から、地元農家から「稲作りサポーター」を募集。水管理の委託を始めた。
赤木稔さん(76)は、同市で水稲80アールを栽培しながらサポーターとして80アールの水管理を請け負う。6月の田植え時期が最も忙しく、地区によってはポンプで水路から水をくみ上げる水田も多く、機械を運搬するため体力もいる。赤木さんは「耕作放棄地を見るのは残念。みんなで助け合い農地を守りたい。体力が続く限り稲作りサポーターを続ける」と話す。
同社の阿部晃治生産部長は「サポーターのおかげでよく水管理ができ、草も生えにくいため、米の品質が上がった。協力して地域農業を守っていきたい」と頼りにする。
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2019年12月07日
四季の新着記事
「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」
「帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」。78年前のきょう、太平洋戦争が始まったことを国民はラジオで知った▼歌人の斎藤茂吉はこう詠んだ。「たたかいは始まりたりというこえを聞けばすなわち勝のとどろき」。国民の多くが高揚していたという▼1931年9月18日、満州事変の勃発が世論の転機となる。近現代史作家の半藤一利氏は、戦争回避へ歴史を逆転させるチャンスが「(翌)十九日夜を起点とする二十四時間にあった」、鍵は「世論がどう動くかであった」(『戦う石橋湛山』)と書く。陸軍は警戒したが、新聞が号外戦を繰り広げ「マスコミは争って世論の先取りに狂奔」▼議会も翼賛化した。38年の国家総動員法の成立には抵抗を示したが、2年後には「反軍演説」を行った斎藤隆夫を除名。「議会は議論、討論する場であり、それを失っては国家はその骨格を失ってしまう」。ノンフィクション作家の保阪正康氏が『昭和史の教訓』に記す▼安倍政権は集団的自衛権の行使を認め、それを可能とする安保法制を強行、戦争に巻き込まれるリスクが高まった。いま海上自衛隊を中東に派遣しようとしている。報道と国会。権力監視の力が弱まれば歴史は繰り返す。次も悲劇として。肝に銘じたい。
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2019年12月08日
「月とスッポン」は非常に違いがあることの例えだが、月がスッポンの成長促進剤だとしたらどうだろう
「月とスッポン」は非常に違いがあることの例えだが、月がスッポンの成長促進剤だとしたらどうだろう▼月のリズムで餌を与えると早く育つことを、自動車部品大手トヨタ紡織新領域開発部の田畑和文グループ長に教わった。卵からかえって3カ月後のスッポンに、24時間ごとと24・8時間ごとに餌を与え3カ月間育てた。すると前者では体重が3倍に、後者では4・1倍に▼24・8時間は月が次の日に同じ方角に見えるまでの時間。地球の周りを月は地球の自転と同じ方向に回っている。なので1日よりも長く時間がかかる。月が潮の満ち引きを起こす力「起潮力」が影響しているのではないかという▼月のリズムとは起潮力の変化の周期。植物工場でのレタスの実験でも月のリズムに合わせて光を調節すると収量が増えた。起潮力の影響は車のドアの材料となる植物の生育を早める研究で発見した。名古屋大学と共同研究も行う。持続的な食料増産など「社会貢献」(田畑さん)を目的にしている▼内閣府は、農作業の完全自動化など挑戦的な技術を「ムーンショット(月を撃つ)」と名付け研究開発を後押しする。温室効果ガスの排出削減策を話し合うCOP25がスペインで開催中だ。“月を生かす”といった、地球にやさしい技術を目指す研究にも期待したい。
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2019年12月07日
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2019年12月06日
テレビドラマ「水戸黄門」で、悪代官役を演じた俳優の訃報に触れ、名場面がよみがえってきた
テレビドラマ「水戸黄門」で、悪代官役を演じた俳優の訃報に触れ、名場面がよみがえってきた▼白ひげをたくわえ、好々爺(や)然とした黄門さまが、助さん、格さんを従え、諸国を巡りながら悪事を懲らしめていく。決めぜりふは「この紋所が目に入らぬか」。言わずと知れた徳川家の家紋が入った印籠である。悪人たち、一斉にひれ伏し一件落着と相成る。さしずめ今なら「安倍官邸」の紋所が、絶大な威光を発揮する印籠か▼黄門さまこと水戸藩第2代藩主・徳川光圀には、逸話や俗説が多い。「恐れ多くも先の副将軍」というのはドラマ上の設定。諸国漫遊というが実は関東近県しか歩いていないとも。これは『大日本史』の編さんで家臣を各地に派遣したことから尾ひれがついたようだ▼光圀は子孫のために9カ条の訓戒を残した。1条は「苦は楽の種、楽は苦の種としるべし」。ドラマ主題歌の冒頭〈人生楽ありゃ苦もあるさ〉はここから来たのだろう。「主人と親は無理を言うものと思え」。これも納得。主人をトランプさんに置き換えればよく分かる。「おきてを恐れよ」は、決まり事や法令を守れとの戒めである▼あすは黄門忌。現代によみがえれば忙しかろう。ぜひとも「令和の不平等条約」に喝を入れてもらいたい。「国益を一体何と心得る」
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2019年12月05日
マルチ作家の永六輔さんは、言葉集めの才人だった
マルチ作家の永六輔さんは、言葉集めの才人だった。普通の人々のなにげない言葉に耳を澄ました。一番書きたかったのが「職人」の世界だった▼同名の著書には、気っ風のいい職人たちの言葉が並ぶ。「職業に貴賤(きせん)はないと思うけど、生き方には貴賤がありますねェ」。その生き方を端的に表すのがお金。「いいかい、仕事は金脈じゃない、人脈だぞ。人脈の中から金脈を探せよ。金脈の中から人脈を探すなよ」▼永さんには、お金にまつわる原体験がある。中学生の時、NHKの番組に投書して、初めて謝礼をもらった。それを聞いた近所の職人、ほめた後に言った。「(大人になったら)なぜくれたのかわかる金だけをもらえよ。なぜくれるんだかわからない金は、絶対もらうんじゃないぞ」。そして永さんは思う。「この言葉を政治家と役人に伝えたい」と▼永さんが逝って3年。訳のわからない金が飛び交っている。不透明な原発マネー、企業談合の裏金、「政治とカネ」の不祥事も後を絶たない。極めつけは、首相による公金を使った支持者接待の「桜疑惑」。供応を受ける側に反社会的勢力やマルチ商法の張本人がいたらしい▼公と私のけじめなく、金脈と人脈が入り乱れる花見の宴(うたげ)である。〈花開けば風雨多し〉。政権に冬の花嵐が吹き荒れる。
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2019年12月04日
ヒット中の映画を見に行った
ヒット中の映画を見に行った。ほぼ満席。期待にたがわず導入から息をのむ。圧倒的な映像世界に引き込まれる▼とその時、突然、画面が消え、場内が明るくなった。一瞬、往時の映写機を思い出した。デジタル全盛時代の珍事に客席がざわつく。おもむろに係員が現れ、説明し始めた。「先ほど販売したポップコーンに異物混入の疑いがあります。決して食べないでください、後ほど払い戻しに応じます」▼係員は不手際をわび、程なく映画は再開された。上映後は、観客全員に無料の映画券が配られ、スタッフ総出で頭を下げた。その機敏な対応と誠実な姿勢は、映画の余韻と相まってすがすがしかった。幸い体調不良の人もなく、クレームもなかった▼福沢諭吉が、「事小なるにもって決して小ならず」という言葉を残している。福沢家は、病院から牛乳を取り寄せていた。ある朝、牛乳瓶が汚れているのに気付き、病院に衛生管理を正す。たとえ小さな汚れであっても信頼を大きく損ねる。健康を預かる病院であってはならぬことだと叱る▼往々にして小さなミスが命取りになる。事実を説明し、迅速に対応すれば致命傷には至らない。こちら花見酒に酔って「小事」と高をくくっていたか。ほころびが広がり、最長政権の「大事」になりつつある。
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2019年12月03日
暑さを逃れる生き物が大移動する
暑さを逃れる生き物が大移動する。そんなSF小説のような現象につながる前兆かもしれない▼地球温暖化に伴う異変である。ヒートアップした地球上で異常気象が相次ぐ。南半球のオーストラリアでは、空気が乾燥した南東部を大規模な森林火災が襲った。北半球でも、経験したことのない大雨や高温に悩まされている。日本が頼る農産物が気に掛かる▼“ゆでガエル”の例えでもないが、金もうけに忙しい指導者の危機感は高まらない。国連の報告書では、昨年の温室効果ガス排出量はCO2換算で、過去最高だった。このペースで出し続けたら「破壊的な影響」が出ると警告する。にもかかわらず、米国は温室効果ガスを減らす「パリ協定」から離脱すると通告した。トランプ大統領の気が知れぬ▼楽観できないのは日本も同じ。今世紀末には、温暖化のスピードに生物の移動が間に合わず、絶滅の可能性が高まる。長野県環境保全研究所や国の農研機構等の試算で分かった。気候変動は全国平均で年249メートルの速さで進むが、年間移動がせいぜい40メートルの植物は適応できないという。野菜や果樹の産地地図ががらりと塗り替わることも考えなければならないのだろう▼既に米に高温障害が目立ち始めている。「飽食ニッポン」。うかうかできない。
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2019年12月02日
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どっちを向いているかを若者は敏感に感じ取る。政権を担うものは顔の向け方に気を付けなればならない▼観光都市香港で繰り広げられる反政府運動はどうなるのか気に掛かる。発端となった犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」は撤回されたが、学生や市民の怒りは収まらず、区議選では民主派が圧勝した。「一国二制度」が踏みにじられているのに“北京”の顔色をうかがう香港政府への不信は根深い▼半世紀ほど前の日本にも同じような光景があった。日米安保問題で米国の顔色をうかがう政府に若者が反発した。学生運動は燃え上がり、東京の新宿駅では騒乱罪が適用された。評価はいろいろだが、政治を正そうとするエネルギーはみなぎっていた▼その頃に人々の心を捉えたのが渥美清主演の『男はつらいよ』(山田洋次監督)である。第1作が出て今年でちょうど50年。50作目の『男はつらいよ お帰り 寅さん』が完成し、先日、試写会があった。寅さんのおいで作家となった満男を軸に、昭和と現代が交差する。はちゃめちゃな寅さんの小気味よい言いっぷりに、胸のつかえが吹っ飛ぶ。今月27日に全国で封切りされる▼そろそろ物言う若者が現れても良い頃だろう。政権が海の向こうに顔を向けっぱなしなのだから。
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2019年12月01日
人には思春期ならぬ思秋期があるという
人には思春期ならぬ思秋期があるという。40~60歳あたりの老人になる手前のことを指す。この過ごし方が老後を左右する▼精神科医和田秀樹さんの『「感情の老化」を防ぐ本』(朝日新聞出版)で知った。気が付かずに物事への意欲を失う「感情の老化」が始まり、どんどん加速する。知力や体力は意外と衰えないが、感情が老けると身も心も見た目も一気に老け込む▼同著には「感情老化度」を測るテストがある。試しにやってみると実年齢を10も上回ってしまった。あわてて若さを保つ秘訣( ひけつ)を探ると、脳の前頭葉を刺激することだという。いろいろな方法があるが、「食べる幸福」はその一つ。105歳で亡くなった医師の日野原重明さんは100歳を過ぎても週2回は肉料理を楽しんでいたという▼恋もいいらしい。きょうは「シルバーラブの日」。71年前のこの日、68歳の歌人川田順が30近くも年下の教授夫人と駆け落ちしたことにちなむ。川田が詠んだ「墓場に近き老いらくの恋は、怖(おそ)るる何ものもなし」から「老いらくの恋」が流行語となった。とてもまねできそうもないが▼戦後政治の総決算を掲げた中曽根康弘元首相が101歳の長寿で亡くなった。人生の総決算が豊かなものになるように、それぞれの思秋期をうまく乗り越えたい。
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2019年11月30日
国会が一段と騒々しくなってきた
国会が一段と騒々しくなってきた。渦中の安倍首相は首相在職日数を更新中で、来週には2900日台に▼安倍さんはきょうの「国会開設記念日」をどんな気持ちで迎えたろうか。記念日は明治23年、初の国会を開いたことに由来する。当時は帝国議会で衆議院、貴族院の2院制。時の首相は陸軍出身の山県有朋で、貴族院議長は伊藤博文だった。安倍、山県、伊藤3氏とも長州・山口出身である。初代首相となった伊藤も長期政権を担った▼安倍さんが先週、首相在職日数で抜いた桂太郎も同郷。改めてこの国の権力の系譜を思う。桂は人心掌握がうまく、にこにこ笑って背中をポンとたたき相手を丸め込む。だから〈ニコポン宰相〉と呼ばれた。先の山県の派閥で頭角を現す。日英同盟を締結し日露戦争勝利の実績を持つ▼きのうは「関税記念日」。明治の初めに名称を統一したことにちなむ。今も昔も、関税は国内産業の防波堤の役割を果たす。桂内閣の外相・小村寿太郎が関税自主権を回復したが、幕末の不平等条約から半世紀を過ぎていた。そして今、関税大幅削減・撤廃を伴うメガFTAが日本を覆う▼11月29日は語呂合わせから「いい肉の日」でもある。スーパーは輸入牛肉の大セールを行う。関係者挙げ「いい国産肉の日」で迎え撃たねば。
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2019年11月29日