農業用ため池 防災へ補強工事を急げ

 農業用水を確保するため池の防災工事がなかなか進まない。1カ月前の台風19号の豪雨でも決壊が発生し、住宅浸水をもたらした。補強工事を急ぐべきである。

 ため池は全国で約16万7000カ所に上り、所有者らの情報がきちんと登録されているのは受益面積50アール以上で9万6000カ所にとどまる。7割は江戸時代以前に造られた。

 多くは地元の水利組合や土地改良区、集落・農家などが管理しているが、農家の減少や高齢化から管理が行き届かず、堤の崩れや排水部の詰まりなどが指摘されている。昨年夏の西日本豪雨では2府4県で32カ所が決壊し、死傷者を出した。

 政府は、今年4月にため池管理保全法を制定。都道府県に対して、警戒が必要な「特定農業用ため池」を指定し補強などを急ぐよう指導している。所有者や管理者は12月末までに県に届けを出す必要があるが、思い通りには進んでいない。

 災害は待ってくれない。台風19号とその後の大雨で、127の農業用ため池が損傷し、12カ所が決壊した。幸い死傷者は出なかったが、近くの住宅が浸水被害を受けた。ため池の補強工事はこれからだった。

 会計検査院はため池の耐久性を調査。豪雨を対象にした7860カ所のうち約5割で、対策工事の必要性が適切に判定されていないと指摘した。国は「200年に1回起きる洪水流量」に対応できる耐久性を求めていたが、「10年に1回起きる洪水流量」と緩い基準で判定していた県があった。地震への対応も甘い。同院は、耐震性を調査した3199カ所のうち142カ所が適切に判定されていないと指摘した。決壊時の下流域への影響が十分に検討されていないという。

 会計検査院の指摘は、ため池管理保全法が成立する前のものだが、危機感の薄さを物語るものだ。ハザードマップすら作っていない市町村も多い。人的被害が頻発しているのに対応が鈍いと言わざるを得ない。農水省は指導を強めるべきだ。

 2008年から10年間のため池被災は、7割が豪雨、3割が地震。一昨年夏の九州北部豪雨災害で大きな被害を受けた福岡県朝倉市では、市内にあるため池の1割が決壊した。耐久性を高め、洪水防止策を強めることは防災上欠かせないはずだ。利用する農業者も危機意識を向上させる必要がある。

 農家が減る中で受益農家にかかる工事費用の負担が重く、改修工事の合意形成が容易ではないとの指摘がある。県からは「一気に補強するには財源も人も足りない。優先順位を決めて改修するしか方法がない」との声が上がっている。農水省の事業だけでは対応が難しいなら、政府全体で必要な財源を確保すべきだ。

 命を守ることを最優先に、ため池の改修・補強工事を急がなければならない。
 

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