玄米手軽さで再脚光 専用品種「金のいぶき」 炊飯器OK
2019年11月17日

玄米に特化した「玄米食堂あえん」の定食(東京都墨田区で)

白米と同じように炊ける玄米や、手軽なパックご飯
健康志向の消費者を中心に支持されてきた玄米に、手軽さが加わって人気が高まっている。「金のいぶき」など玄米食の専用品種や、白米と同じように炊ける玄米が続々と登場。コンビニおにぎりや外食などの業務用にも利用が広がる。栄養豊富だけど、炊くのが面倒──そんな玄米のイメージが変わりつつある。
「金のいぶき」は、宮城県が開発。γアミノ酪酸(GABA=ギャバ)や食物繊維などが豊富で、もっちりした食感に加え、炊飯のしやすさが特徴だ。炊飯時に吸水する入り口となる、胚芽部分の大きさが通常の玄米の約3倍。吸水しやすく、炊飯器の「白米モード」で炊ける。
ローソンは昨年から、健康関連食品を販売するナチュラルローソンで「金のいぶき」を使ったおにぎりを販売し、ファミリーマートも期間限定でおにぎり原料に採用するなど、業務用に浸透する。
家庭用の2キロ袋やパックご飯の販売も好調で、他県産も含む「金のいぶき」の販売量は今年上半期で昨年1年間分に到達したという。JA全農みやぎは「生産が需要に追い付かない状況」と話す。
パックご飯で、中食需要もつかんでいる。ベンチャー企業「結わえる」(東京都千代田区)は、独自製法の「寝かせ玄米」のパックご飯(180グラム)の販売が累計500万パックを突破した。女優やモデルが紹介したことで、「30、40代の女性の利用が最も多い」(同社)。
玄米は、ビタミンや食物繊維を豊富に含む。ただ表面が蝋層(ろうそう)で覆われ、炊飯時に吸水しにくいという難点がある。
東洋ライスが独自技術で蝋層を取り除いた「金芽ロウカット玄米」は、2018年度の販売量が前年比65%増の2800トンと急拡大した。昨年9月からローソンがおにぎり原料に使い、外食チェーン「ぎょうざの満洲(まんしゅう)」(埼玉県川越市)でも提供する。東洋ライスは「おいしさと炊きやすさで知名度が高まり、ここ1、2年で外食にも広がってきた」という。
モスフードサービスは11月、JR錦糸町駅(東京都墨田区)直結の商業施設に、玄米に特化した定食やおにぎりを提供する「玄米食堂あえん」の2号店をオープンした。蝋層を磨く特殊技術で、炊飯しやすく食べやすい食感にしている。JR大宮駅(さいたま市)構内の1号店では、「女性だけでなく、健康を意識したサラリーマンにも選ばれている」という。
「金のいぶき」は、宮城県が開発。γアミノ酪酸(GABA=ギャバ)や食物繊維などが豊富で、もっちりした食感に加え、炊飯のしやすさが特徴だ。炊飯時に吸水する入り口となる、胚芽部分の大きさが通常の玄米の約3倍。吸水しやすく、炊飯器の「白米モード」で炊ける。
ローソンは昨年から、健康関連食品を販売するナチュラルローソンで「金のいぶき」を使ったおにぎりを販売し、ファミリーマートも期間限定でおにぎり原料に採用するなど、業務用に浸透する。
家庭用の2キロ袋やパックご飯の販売も好調で、他県産も含む「金のいぶき」の販売量は今年上半期で昨年1年間分に到達したという。JA全農みやぎは「生産が需要に追い付かない状況」と話す。
パックご飯で、中食需要もつかんでいる。ベンチャー企業「結わえる」(東京都千代田区)は、独自製法の「寝かせ玄米」のパックご飯(180グラム)の販売が累計500万パックを突破した。女優やモデルが紹介したことで、「30、40代の女性の利用が最も多い」(同社)。
吸水改善 蝋層除く加工 外食に好評
玄米は、ビタミンや食物繊維を豊富に含む。ただ表面が蝋層(ろうそう)で覆われ、炊飯時に吸水しにくいという難点がある。
東洋ライスが独自技術で蝋層を取り除いた「金芽ロウカット玄米」は、2018年度の販売量が前年比65%増の2800トンと急拡大した。昨年9月からローソンがおにぎり原料に使い、外食チェーン「ぎょうざの満洲(まんしゅう)」(埼玉県川越市)でも提供する。東洋ライスは「おいしさと炊きやすさで知名度が高まり、ここ1、2年で外食にも広がってきた」という。
モスフードサービスは11月、JR錦糸町駅(東京都墨田区)直結の商業施設に、玄米に特化した定食やおにぎりを提供する「玄米食堂あえん」の2号店をオープンした。蝋層を磨く特殊技術で、炊飯しやすく食べやすい食感にしている。JR大宮駅(さいたま市)構内の1号店では、「女性だけでなく、健康を意識したサラリーマンにも選ばれている」という。
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輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
財務省が発表した貿易統計を基に日本農業新聞が調べた。
農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
輸出額が伸び悩む背景には、最大の輸出先・香港の政情不安定化や、韓国との関係悪化などもあるとみられる。
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2019年12月08日
今年は俳聖・松尾芭蕉がみちのく・東北へ旅立ってから330年
今年は俳聖・松尾芭蕉がみちのく・東北へ旅立ってから330年。紀行文『おくのほそ道』で珠玉の句を残す▼東京の出光美術館で開かれた特別展「奥の細道330年 芭蕉」を見て驚いた。最晩年に旅の情景を描いた「旅路の画巻」の公開は実に四半世紀ぶり。細く連なるリズミカルな文字は繊細な感性を裏付ける。当初の俳号・桃青(とうせい)の名もある。句に添えた絵は「蕉門十哲(しょうもんじってつ)」の一人、森川許六(きょりく)による。近江・彦根藩士で絵師、俳人、やり使いの名人でもあった▼『ほそ道』を軸に、数百年前後して日本の文学史に残る詩歌が残った。芭蕉は漂泊の歌人・西行500回忌に、歌枕の追体験に旅立つ。明治には短歌革新の正岡子規も同じ行路をたどり多くの名句を詠む▼謎多き人である。門下には武士も多い。旅に同行した弟子の河合曾良(そら)は幕府の巡見、情報収集役。大勢力を持つ伊達・仙台藩の動向を探る役割も担う。公称60万石だが実際は200万石近く。藩領内に入ると緊張が走る。〈夏草や兵 (つわもの) どもが〉など名句を残すが、身の危険を感じていたのか実際の滞在はわずか。『影の日本史にせまる』(嵐山光三郎、磯田道史著)に学ぶ▼600里の長旅から〈不易流行〉の境地に。絶え間ない変化は、“未知の細道”みちのくの情感がもたらしたのか。
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2019年12月11日
温暖化で植物適地移動 VoCCで分析 果樹転換参考に 長野県など研究
地球温暖化が現在のペースで進むと、国内の高山帯に生息する野生動植物は、21世紀末に生息適地がなくなる可能性がある──。長野県環境保全研究所などでつくる研究グループが発表した。全国1キロ四方ごとに温暖化の影響を推計したのは初めて。影響は市町村ごとに閲覧できるようにし、農業分野では作物転換の検討に使ってもらう。
推計には、気候変動速度(VoCC)という指標を用いた。現在のペースで温暖化が進むと、VoCCの全国平均は1年当たり249メートルとなる。樹木の移動は、最大で同40メートルといわれており、気候変動に追い付けない。これは、身近な自然が将来、緯度の高い所や標高の高い所でしか見られなくなるということを示唆する。
都道府県ごとに影響を見ると、沖縄が同2174・3メートルで、最も速度が速かった。次いで千葉、長崎となった。自治体ごとの影響は、環境省のホームページ内で確認できるよう準備を進めている。
農業分野では、将来の地域の気候がどの地域と同じになるのか判断でき、転換する品目・品種や転換のスケジュールの検討で参考になる。同研究所の高野宏平研究員は「果樹などの永年作物は栽培や転換に時間がかかる。苗木の準備計画に役立ててもらいたい」と話す。
<ことば> VoCC
ある地点で気候が変化した場合、将来同じ気温になる場所の最短距離を、変化した時間で割った速度のこと。例えば、年平均気温15度の場所が100年間で100キロ北上したら、VoCCは1年当たり1キロとなる。
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2019年12月10日

手造り赤ワイン塩 山梨県甲州市
山梨県甲州市が運営する「甲州市勝沼ぶどうの丘」が、市内で醸造された赤ワインを使って作った塩。施設内の売店で販売し「和食料理に合う」などと好評だ。
施設内の和食店の総料理長が赤ワインを鍋で煮詰め、塩と混ぜて造った手作り。料理に添えて提供したところ好評だったことから、商品化した。
商品は、赤紫色でほのかにワインの香りがする。天ぷらや白身魚・ステーキ料理に合う。同施設内でワイン塩と共に提供している昆布を使った「昆布塩」とセットで販売。各100グラム入りで、1セット700円。送料別途。
問い合わせは甲州市勝沼ぶどうの丘、(電)0553(44)2111。
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2019年12月11日

中小・家族目配りを 自民畜酪委熊本を視察 畜産農家ら訴え
自民党畜産・酪農対策委員会は7日、2020年度の畜産・酪農対策の決定に向け、九州の酪農・畜産現場へ視察に入った。意見交換で畜産農家は、中小や家族経営も安定的に農業を続けられる環境づくりを要望。ヘルパーの確保や、豚コレラ(CSF)などの防疫強化を求めた。
熊本県JA菊池で開いた意見交換には、井野俊郎同委員会委員長代理、農林・食料戦略調査会の坂本哲志副会長、藤木眞也農水政務官らが出席。JA熊本中央会の宮本隆幸会長は、相次ぐ国際貿易交渉の結果「農家は先が見えず不安になっている。次世代が安心して農業ができる対策をしてもらいたい」と訴えた。
繁殖農家の源義通さん(69)は生産力の維持・向上には「定休型ヘルパーの導入で、農家が休めるようにしなくてはいけない」と指摘。ヘルパー確保につながる支援を求めた。肥育農家の斉藤秀生さん(59)はアジア諸国から日本への観光客の増加で「豚コレラや口蹄(こうてい)疫の侵入リスクが高まっている」と懸念。農家ごとの対策は限界があるとして、国主導の水際対策の強化が「最重要課題」と強調した。同委の宮路拓馬事務局長は北海道、関東、九州での視察内容を踏まえ、11日にも対策をまとめる考えを示した。
8日は鹿児島、宮崎県での現場視察、農家らとの意見交換を予定する。
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2019年12月08日
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新米販売が苦戦 10月支出額前年割れ 消費増税影響か
新米の販売が苦戦している。消費動向が分かる総務省の10月の家計調査で、米の1世帯当たりの支出額が3年ぶりに前年を下回った。米離れに加えて、消費税増税による節約志向が影響したためとみられる。現状の小売価格は前年並みだが、米卸やスーパーは売れ行きの動向を見極めながら、価格の居所を探っている。
小売 動向探る
10月の家計調査では1世帯(2人以上)当たりの米の支出額は2944円と、前年同月を3・9%(実質)下回った。米の支出が年間で最も多くなる時期に販売が鈍化した。
消費税増税前の駆け込み需要の反動によって、消費支出全体が同5・1%減と11カ月ぶりに前年割れする中、軽減税率が適用される米でも減少が見られ、増税による節約志向が影響したもようだ。
米穀機構の11月調査でも、前年と比べた現状の販売数量の指数は、小売りや中食・外食業者が42で基準点の50を下回った。「減った」と回答する業者が多かった。
現在、スーパーなどの小売価格は前年からほぼ横ばいの展開となっている。全国のスーパー約1000店の販売データに基づく農水省公表の精米5キロの小売平均価格(10月)は、前年同月比0・5%安の2031円。秋田「あきたこまち」は1・8%安の1987円、新潟・一般「コシヒカリ」は1・4%高の2202円など小幅な上げ下げはあるが、前年並みの水準が中心だ。
米卸やスーパーの対応はまちまちだ。「購入数が増えにくいので、単価を上げて売り上げ増を目指す」(東京都内の中堅スーパー)との声がある一方「これ以上の価格上昇は消費を低迷させる」と特売で集客を狙う動きがある。「安くしても、大幅には販売が伸びない」(大手卸)との見方もある。
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2019年12月11日

機能性食品 有機JAS… 日本規格を世界へ新たに推進プラン GFVC官民協
農水省やJA全農、食品関連企業で構成するグローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会は、食品産業の海外展開を加速させる新たな推進プランを策定した。2020年度から5年間の計画で、機能性食品や有機JASなど日本独自の食品認証の仕組みを海外に普及させることが柱。日本の食品企業が現地で販売しやすくし、日本産の食品や農林水産物の輸出拡大につなげる。
14~19年度の推進プランでは、海外市場の調査などを盛り込んでいた。今回の新プランでは、9の国・地域別に実践する具体的な取り組みを示した。協議会に参画する企業の海外進出数を現状の1・6倍(200社)に拡大する目標も掲げた。
新プランによると、企業進出数が多いタイやフィリピンなどでは、現地で高まる消費者の健康志向への対応を強める。現地に進出した日本企業が、日本と同基準の機能性食品を流通しやすくするため、輸出先国へ、日本に準ずる基準の整備などを働き掛ける。ベトナムなどでは、農業生産工程管理(GAP)や有機JASなど日本型の規格や制度を普及して、日本食品の高付加価値化を進める。
オーストラリアでは、日本と季節が逆転する地理的条件を生かし、日本で栽培されているアスパラガスやメロンなど青果物の生産を拡大。アジア圏など第三国への農産物の通年供給を推進する。
このほか、①複数企業が連携した海外進出計画の策定②日本食材の現地での加工や料理として提供③スマート農業技術の海外展開──で取り組みを支援する。
同省は「日本企業の海外進出支援は、農産物自体の輸出拡大にとって重要」(国際部)と説明。同省では来年4月、政府の農林水産物輸出の司令塔組織となる輸出部が設置されるなど、農産物輸出拡大に向けた動きが加速化している。
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2019年12月11日

機能性に魅力 実需が国産要望 もち麦1年で3・5倍
もち性大麦の2019年産生産量が8000トンを超え、前年産に比べ3・5倍と急増した。健康食品としての認知度が高く、国産志向もあり市場が拡大。機能性成分が多く、各地の気候に適した新品種の導入が進み、実需の要望で産地が形成されつつある。急増してもなお需要が供給を上回っている状況で、国産の増産への期待が高まっている。
19年8000トン超 需要伸び品種充実 産地追い風
農水省がまとめた大麦の農産物検査結果(10月末時点)によると、もち麦の検査数量は8581トン、18年産実績を6000トン上回った。
県別で最も多いのは福井県の2357トン。機能性成分が多い新品種「はねうまもち」を導入し、約800ヘクタールを作付けた。4JAが取り組み、大手精麦メーカーに仕向ける。「メーカーの強い要望に応じ、従来の大麦品種を転換した」とJA福井県経済連。交雑や異品種の混入を防ぐため、産地を限定する。
次いで増やしたのが福岡県。九州が栽培適地の「くすもち二条」を前年の4倍、1243トン生産する。うち、JA全農ふくれんは県内の精麦メーカーの求めで試験的に約70ヘクタール栽培した。20年産はこれを上回る注文があるが、「他の麦類の要望もあり、そうは広げられない」(全農ふくれん)と悩ましい現実もある。
宮城県はもち麦「ホワイトファイバー」を前年の11トンから764トンに拡大。実需の関心が高く、県は種子の生産体制を整え一般栽培に踏み切った。今後も増やす計画だ。
もち麦の普及は、県が奨励品種にして、産地品種銘柄として流通させることが欠かせない。産地品種銘柄の採用は、この3年間で6県から18道県に拡大した。大半が、健康機能性が多い品種への転換だ。ビール麦産地の栃木県は、ビール麦から県育成品種「もち絹香」に替えた。「健康志向で今後の需要が見込まれるため」(生産振興課)だ。
もち麦品種は、3年前の5品種から8品種に増えた。国内最大面積となった「はねうまもち」は農研機構が開発、17年に品種登録を出願した。寒冷地向きで、新潟県、北海道でも展開中。暖地向けは「くすもち二条」「ダイシモチ」がある。各地の気候に適した品種開発も、産地化を後押ししている。
農林水産政策研究所企画広報室の吉田行郷室長は「需要に対応するには産地がまとまって品種を統一したり、十分な生産量を確保したりする必要がある」と指摘する。
もち麦は食物繊維の一種、βグルカンを豊富に含む。腸内環境改善や血中コレステロール低減に効果があるとされる。国内流通量に占める国産の割合は1割に満たない。
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2019年12月08日
輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
財務省が発表した貿易統計を基に日本農業新聞が調べた。
農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
輸出額が伸び悩む背景には、最大の輸出先・香港の政情不安定化や、韓国との関係悪化などもあるとみられる。
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2019年12月08日
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
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2019年12月06日

豚肉在庫が最多水準 9月時点3割増に 輸入多く国産苦戦
豚肉の在庫量(輸入含む)が過去5年の最多水準に積み上がり、国産相場の不安材料になっている。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)の影響で国際相場に不透明感が増していることや、大型貿易協定で関税が下がったことで、食肉メーカーや商社が輸入品の調達を強めているためだ。国産は加工向けの下位等級を中心に需要を奪われ、苦戦を強いられている。
農畜産業振興機構のまとめによると、9月時点の推定期末在庫量は、前年同期比3割増の21万8205トン(国産品が同13%増の2万351トン、輸入品は同32%増の19万7854トン)。近年の在庫量は約17万トン前後で推移しており、過去5年で最多水準だ。
豚肉の国際相場は、世界最大の豚肉消費国である中国でのアフリカ豚コレラの拡大で、引き合いが強まった欧州産を中心に高値基調が続いている。大手食肉メーカーは「これからもう一段上げる可能性があり、高騰する前に調達を強めている」と明かす。
在庫過多の輸入品に押され、国産品にも影響が出ている。「国産、輸入ともに、裾物の在庫が多く、国産は加工筋などで需要を奪われている」(大手メーカー)という。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入品の関税が下がったことも、国産品の価格面での競争力に影を落とす。
国内生産量(と畜頭数)は、今年度上半期の累計が約788万頭で前年同期比ほぼ横ばい。しかし消費は鈍く、在庫が積み上がる状況だ。
全国指標となる東京食肉市場の29日の豚枝肉価格は1キロ459円(上物平均)で前年並み。一方、格付けで最も低い「等外」は300円台半ばで6月以降、前年を下回る取引が目立つ。
「10月以降、出荷量が例年以上に多くなっている」(市場関係者)など、この先は不安材料が多い。豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通も始まった。現状、目立った混乱は見られないが、取引動向には注視が必要だ。
大手食肉メーカーは「安価な輸入品に押され国産が苦戦する状況は長期的に続くだろう」と見通す。
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2019年12月02日

特産エダマメビールに加工 秋田・大館市 観光地域づくり法人発案
秋田県大館市特産のエダマメを副原料に使ったクラフトビール「秋田枝豆ビール」が登場した。地元の日本版観光地域づくり法人(DMO)秋田犬ツーリズムが発案し、同市産のエダマメを原料に供給。委託醸造を経て、酒類販売業のルーチェ(東京都大田区)が地元スーパーや首都圏のデパートなどで11月から販売している。同法人は同市産エダマメの知名度のアップと消費拡大を狙う。
同法人は市内の農家が朝に収穫したエダマメを仕入れ、ペースト状に加工し「田沢湖ビール」(秋田県仙北市)に供給し、ビールに醸造してもらう。後味にエダマメの風味が残るのが特徴だ。ラベルには、秋田犬がエダマメを食べているイラストを採用した。
同法人の大須賀信事務局長は「大館のエダマメは知名度がまだ低く、取引価格が伸び悩んでいる。ビールを通してブランド力を高めたい」と期待する。イベントで先行発売した際には、用意した500杯が完売するなど関心を集めた。
1瓶(330ミリリットル)700円(税別)。大館駅前の観光施設「秋田犬の里」や市内のスーパーで販売している他、東京・新宿のデパートでも扱う。今年度は5700本を販売する予定。飲食店向けに、たる詰めでの出荷も検討している。
秋田県では近年、転作作物としてエダマメの生産が盛ん。8~10月には、東京都中央卸売市場で1位の取扱量を誇る。
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2019年12月01日

世界都市農業サミット開幕 体験農園の魅力実感 5カ国が参加 東京都練馬区
東京都練馬区が主催する世界都市農業サミットが29日、同区で始まり、参加する5カ国(米国、英国、カナダ、韓国、インドネシア)の都市の行政関係者や専門家ら15人が区内の農業体験農園や観光農園、直売所を視察した。サミットは12月1日まで。
参加都市はニューヨーク、ロンドン、トロント、ソウル、ジャカルタ。都市農業の魅力と可能性を学び合い、発展の場にしようと区が初めて開いた。
参加者は区内でキャベツやネギを栽培する高橋正悦さん(68)の畑を訪問。高橋さんは「近隣の人とは直売所で新鮮な野菜を買ってもらい、良好な関係だ」と話した。
加藤義松さん(65)が運営する体験農園「緑と農の体験塾」も訪れた。加藤さんは「野菜の栽培方法を示すことで、初心者でもプロ並みの野菜が作れる」と説明した。
視察した韓国・ソウル特別市の都市農業課長は「体験農園の活性化について知見を深めたい」と述べた。インドネシア企業の植物防疫研究所長も「日本の都市で市民主体の農業が営めているのは興味深い」と、農園をカメラで撮影していた。
区の毛塚久都市農業課長は「都市の中に農地が必要という方向性は各国共通だと思う。サミットを機に世界の都市農業の発展につながれば」と期待する。
30日と12月1日に国際会議を開き、「サミット宣言」をまとめる予定だ。
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2019年11月30日
無洗米 SDGsに貢献 国連会議で東洋ライス
米の総合メーカー・東洋ライス(東京都中央区)は27日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権などに関する国際会議に参加し、同社の米の加工技術による環境や健康への貢献と、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)との関わりについて報告した。同社によると、日本の企業がSDGsについて国連で報告するのは今回が初めて。
会議は25~27日までの日程で開かれ、世界約190の国と地域から3日間で約2000人が参加した。
同社が独自に開発した「BG無洗米」の普及で、下水処理などで発生していた二酸化炭素(CO2)の排出量をこれまでに50万トン以上削減したことなどを紹介。加工過程で取り除いた米のとぎ汁成分を有機質資材として活用し、循環型農業を実現していることなども説明した。日本の主食である米に関する多様な事業を通じ、「気候変動に具体的な対策を」など、17項目を掲げるSDGsの目標のうち、14項目に寄与していることを報告した。
雑賀慶二社長は「(今回の報告を)日本の農業や米の文化が、SDGsの取り組みとつながっていることを国際社会に発信するきっかけにしたい」と話した。(ジュネーブ斯波希)
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2019年11月29日

汚泥肥料、ハウスの熱源、農業用水… “下水パワー”発揮 国交省と公共団体が推進チーム
全国各地で、下水道から発生する汚泥やメタンガス、再生水を農作物の栽培に有効活用し、ブランド化する自治体が増えてきた。国土交通省などは下水道を生かした農作物を「じゅんかん育ち」と名付け、地域と共に安全性や効果の分析、周知を行う。タマネギやニンニクなど“下水道パワー”で多様な農作物が育ち、食に大きく貢献している。
安全実証、広がる活用
汚泥や再生水の中には農業に欠かせないリンなどが含まれ、肥料にしたり、処理水を農業用水に活用したり、発生する熱や二酸化炭素(CO2)をハウス栽培の熱源として活用したりできる。下水道由来の肥料は、葉の成長を促す窒素の含有量が高いことが特徴だ。
同省は2013年から地方公共団体と「BISTRO下水道推進戦略チーム」を結成し、“下水道×農業”の普及を進めてきた。科学的に安全であることも実証されており、下水道法では現在、下水汚泥再生の努力義務が課せられる。
ただ、課題は下水道のイメージの悪さだ。そこで同省では名称を公募。現在は、人が排出した下水を作物の栽培に利用して再び生かすなど、食の循環に貢献することから「じゅんかん育ち」としてPRする。
同省によると、下水道から発生する汚泥は18年度で242万トン。そのうち肥料や土壌改良材に生かされる「緑農地利用」は14%に上る。処理水は18年度で155億立方メートル。全国各地で「じゅんかん育ち」食材が生まれている。
土壌改善、食味向上も
酪農が盛んな北海道標津町。役場は乾燥させた汚泥を農家に配布している。受け取った農家は窒素の含有量が比較的少ない牛ふんを混ぜた混合肥料を作り、牧草地の肥料にしている。同町汚泥肥料研究会によると、汚泥肥料の方が従来の化学肥料に比べて牧草の生育が良好で、窒素化学肥料の使用量も従来の3分の2まで減らすことができた。土壌中の栄養成分も増え、搾乳量の増加や肉質向上にもつながったという。
秋田県大仙市の上野台堆肥生産協同組合は、下水道由来の汚泥を発酵させた肥料「アキポスト」を製造・販売する。15年度の販売量は475トンで、全量を県内で売る。稲作を中心にそば、エダマメ、ホウレンソウなどの肥料として使われている。
アキポストを使う水稲農家の中には「米・食味鑑定コンクール」で米の味や色つやなどが評価され、5年連続で「ベストファーマー認定」を受けた農家もいるほどだ。一方で、安全性や効果の周知はさらに必要で、下水道の汚泥と聞くだけで否定的な反応をする人も少なくないという。
同組合の山岡和男専務は「適切な処理を施せば、汚泥は素晴らしい肥料になる。何より行政の後押しが必要だ」と訴える。
5ヘクタールの農地で枝豆を作る大仙市の農家、鈴木辰美さん(72)はアキポストを10年ほど利用する。「エダマメの味が良くなった気がする。糖度も上がり、甘くておいしいと評判だ」とうれしそうだ。
印象の改善や 管理周知必要
下水道資源による特産品の栽培や、循環型農業を学ぶ体験授業なども広がっている。一方で、製造方法によっては特有の臭気が気になる他、牛鶏ふんとの混合や攪拌(かくはん)する作業の手間、イメージの悪さなどの課題も残る。
東京農業大学の後藤逸男名誉教授は「国や地方自治体が農家に向けてガイドラインの作成や、効果や適切な管理方法の周知に力を入れていくべきだ」と指摘。また、再生エネルギーや下水道資源の活用に詳しい長岡技術科学大学の姫野修司准教授は「農業分野にとって下水道資源の活用は可能性のある分野。自治体やJAによる普及推進活動が必要だ」と説明する。
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2019年11月29日