検証・首相在任最長 長きが故の弊害ただす

 安倍晋三首相の通算在任日数が19日、憲政史上最長に並んだ。長期政権は安定の証しだろう。問われるべきは、何を成し得たかだ。とりわけ農政は激変した。農産物総自由化、生産基盤弱体化の前で、「農は国の基」と言う首相の言葉は実体を伴っているか。改めて首相の目指す国家像と政治手法をただす。

 安倍首相の国家観には二つの大きな柱がある。一つは、「戦後レジームからの脱却」に代表される戦後体制の総決算路線。自民党の党是であり自らの宿願である憲法改正を実現し、「美しい国」づくりを目指す。歴史修正主義や復古的な国家観との批判もあるが、保守層の支持を得てきた。もう一つは、日米同盟を基軸とし、軍事・経済両面で国際社会での日本の存在感を高めることである。

 伝統的な国家観に立ちながら経済面は、「世界で一番ビジネスがしやすい国」づくりを掲げ、新自由主義的な市場経済、規制改革を押し進めてきた。次々と国民受けする課題を設定し、政権の推進力とした。「アベノミクス」「新3本の矢」「一億総活躍社会」「女性が輝く社会」「介護離職ゼロ」「働き方改革」などのスローガンを乱発。一定に成果もあるが「やっている感」も否めない。

 円安株高で大企業が潤う半面、非正規雇用は4割を占め格差の固定化は進んだ。異次元金融緩和の副作用も深刻で、景気は後退局面にある。修復困難な日韓の亀裂、膠着(こうちゃく)状態の日ロ平和条約交渉など外交面も行き詰まる。日米貿易協定は日本農業の犠牲の上に成り立つ不平等な条約となった。

 誇るべきは政権の長さではない。「権腐10年」という。絶対的権力は絶対に腐敗する。安倍政権もその伝を地でいくかのような「おごりと緩み」が目立つ。数々の閣僚の不祥事・辞任、自らの関与も取り沙汰された「森友・加計問題」、公文書の改ざん・隠蔽(いんぺい)。今また政府の公的行事「桜を見る会」を巡る首相の私的利用疑惑などで、説明責任に追われている。

 閣僚の「政治とカネ」の問題や自身の健康問題で、短命に終わった第1次内閣の反省から、政権に返り咲いた2012年以降は徹底した危機管理を敷き、統治改革を断行した。中央官庁幹部の人事権を内閣人事局で一元的に管理。国政選挙6連勝という力を源泉に自民党内も掌握し、「安倍1強」の「官邸主導」を進めてきた。その舞台回しが直轄の規制改革推進会議などで、農業・農協を岩盤規制に見立て、今なお改革の手を緩めていない。

 問題はこうした手法が、政治的「忖度(そんたく)」の温床となり、議員内閣制の形骸化を招いたことだ。為政者の倫理の欠如と無責任体制も目に余る。言論を封殺するかのような社会風潮まで生まれている。「政治は結果」だと首相は言う。誰のための政治かを改めて問う。国民もまた試されている。
 

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