鳥獣対策の技術披露 捕獲、運搬、処理 東京でジビエ利活用展とサミット
2019年11月21日

わなの作動をメールで通知するマスプロ電工の「ワナの番人」(20日、東京都江東区で)
全国の野生鳥獣の肉(ジビエ)振興の先進事例や消費の動きなどを共有する第6回日本ジビエサミットが20日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した。利用拡大に向け、鳥獣害対策の延長だけでなく、食材としての魅力を高めるために関係者が連携することの重要性が示された。22日まで。
日本ジビエ振興協会の主催。都内での開催は初めて。協賛したJA全中の中家徹会長は「ジビエを普及させることは、地方や農業の振興にも大きな役割を果たす」と期待を寄せた。
会場では、野生鳥獣の捕獲、運搬、処理からジビエとしての利用まで、最新の技術や道具が展示され、情報交流、商談が行われた。セミナーでは、食肉と豚コレラ(CSF)の安全性について講演を行った。
会場では、情報通信技術(ICT)を活用し、イノシシや鹿を捕獲するわなの見回り作業を軽減する装置が目立った。わなの作動をセンサーで感知し、狩猟者にメールで知らせる仕組み。これまでの製品は、わなに設置するセンサー(子機)と電波を集約して飛ばす親機の設置が必要だったが、アンテナメーカーのマスプロ電工は、子機だけで稼働するシステム「ワナの番人」を展示。導入にかかる総経費を割安に設定したこともあって、来場者の評判を呼んでいた。
捕獲した野生鳥獣の処理を効率化する機器も注目を集めた。フロンティアインターナショナルの「バイオベーター」は、残さを堆肥化するコンパクトなドラム式処理機。エー・ワンの小型焼却炉「クリーンファイア」は骨まで灰にできるのが特徴だ。
講演では、麻布大学の押田敏雄名誉教授がジビエと豚コレラの関連について解説した。「豚コレラの発生によりイノシシの食肉利用を控える店が出ているが、豚コレラに感染したイノシシを人が食べても人体に影響ないことを、もっと周知する必要がある」と指摘。また、豚コレラの感染リスクを高めない狩猟方法についても紹介した。現場で解体しない、ブルーシートに包んで運搬、残さの正しい処理などのポイントを挙げていた。
日本ジビエ振興協会の主催。都内での開催は初めて。協賛したJA全中の中家徹会長は「ジビエを普及させることは、地方や農業の振興にも大きな役割を果たす」と期待を寄せた。
会場では、野生鳥獣の捕獲、運搬、処理からジビエとしての利用まで、最新の技術や道具が展示され、情報交流、商談が行われた。セミナーでは、食肉と豚コレラ(CSF)の安全性について講演を行った。
会場では、情報通信技術(ICT)を活用し、イノシシや鹿を捕獲するわなの見回り作業を軽減する装置が目立った。わなの作動をセンサーで感知し、狩猟者にメールで知らせる仕組み。これまでの製品は、わなに設置するセンサー(子機)と電波を集約して飛ばす親機の設置が必要だったが、アンテナメーカーのマスプロ電工は、子機だけで稼働するシステム「ワナの番人」を展示。導入にかかる総経費を割安に設定したこともあって、来場者の評判を呼んでいた。
捕獲した野生鳥獣の処理を効率化する機器も注目を集めた。フロンティアインターナショナルの「バイオベーター」は、残さを堆肥化するコンパクトなドラム式処理機。エー・ワンの小型焼却炉「クリーンファイア」は骨まで灰にできるのが特徴だ。
講演では、麻布大学の押田敏雄名誉教授がジビエと豚コレラの関連について解説した。「豚コレラの発生によりイノシシの食肉利用を控える店が出ているが、豚コレラに感染したイノシシを人が食べても人体に影響ないことを、もっと周知する必要がある」と指摘。また、豚コレラの感染リスクを高めない狩猟方法についても紹介した。現場で解体しない、ブルーシートに包んで運搬、残さの正しい処理などのポイントを挙げていた。
おすすめ記事
飼料米複数年に助成 10アール1・2万円、転作促す 農水省
農水省は2020年産米から、飼料用米や米粉用米の複数年契約に10アール当たり1万2000円の助成措置を新設する方針を固めた。取り組みに応じて、都道府県に対し、産地交付金を追加配分する。主食用米の需給安定に向け、転作拡大の柱となる飼料用米の作付けを促す。一方、19年産まであった多収品種への追加配分(同1万2000円)は廃止を含めて見直す方針だ。……
2019年12月15日

「ごはん・お米とわたし」内閣総理大臣賞 作文・長町さん(香川) 図画・清和さん(静岡)
JA全中は9日、第44回「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールの審査結果を発表した。最優秀賞の内閣総理大臣賞には、作文部門で香川県の長町そよかさん(高松市立栗林小6年)の「広がれ! お米の可能性」、図画部門で静岡県の清和羽音さん(長泉町立北中3年)の「おむすびは勉強のおとも」を選んだ。
文部科学・農水大臣賞に計12人、全中会長賞に6人を選んだ。受賞者は次の通り。
◇作文部門▽文科大臣賞=青木舞桂(山形県米沢市立北部小3年)山口哲平(茨城県小美玉市立羽鳥小6年)辻紗季(福井市足羽中3年)▽農水大臣賞=桂木花音(さいたま市立大谷場小3年)園部杏莉(山形県庄内町立余目第三小6年)大貫桜和(神奈川県厚木市立相川中1年)▽全中会長賞=小濱啓太(沖縄県石垣市立登野城小3年)野元理彩(長崎県壱岐市立霞翠小4年)麦倉惟月(栃木県宇都宮短期大学付属中1年)
◇図画部門▽文科大臣賞=今鹿倉由羽(大阪府堺市立野田小3年)菊永優介(同市立東百舌鳥小5年)皆川泉(宮城県涌谷町立涌谷中2年)▽農水大臣賞=川原田すみれ(佐賀県小城市立桜岡小2年)石松祐(松江市立乃木小6年)荒木音羽(佐賀県伊万里市立国見中2年)▽全中会長賞=右近敏明(高松市立古高松小2年)白浜早也花(佐賀市立鍋島小5年)桝本陸斗(広島市立井口台中1年)
コンクールは「みんなのよい食プロジェクト」の一環。子どもに農業の学びを深めてもらい、ご飯や米の重要性を周知する。全国の小中学生から、作文5万660点と図画6万767点の応募があった。
表彰式は2020年1月11日に東京・大手町のJAビルで開く。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月10日
台風19、21号 農林水被害3180億円 営農再開に全力 農相
10月に東日本を中心に猛威を振るった台風19号の被害から2カ月がたつ中、農林水産関係被害額が3180億8000万円に上ることが農水省の調べで分かった。被災地では依然、営農再開のめどが立たない農家も少なくない。江藤拓農相は13日の閣議後会見で、現場の不安に向き合い、復旧に全力を尽くす考えを改めて示した。
江藤農相は「雪のシーズンが近づいてきていることもあり、来年のことについて、現場には大変な不安がある」との認識を示した。その上で「さまざまな手を使って、自治体との連絡を密にして農地の復旧に全力を尽くしていきたい」と強調した。
被害額3180億8000万円は12日現在で、台風21号に伴う大雨などの被害も含む。内訳は、農作物が149億2000万円、農業用ハウスが28億5000万円、農業・畜産用機械が71億4000万円、農地が771億1000万円、用水路などの農業用施設が1219億9000万円、林野関係が789億9000万円、水産関係が130億1000万円などとなっている。
一方、9月に関東地方などを襲った台風15号の被害額は5日現在で814億8000万円。これに19号などの被害額を合わせると3995億6000万円に達し、西日本豪雨の3409億1000万円を超える。
台風19号では、各地で河川の決壊が相次ぎ、水田や果樹園に土砂が堆積するなどの被害が広範囲に発生。政府は11月に復旧支援策を取りまとめた。
特に被害の大きいリンゴには、大規模な改植を余儀なくされる農家に対し、最大で10アール当たり150万円を助成する対策を打ち出した。ただ、被災地では業者の人手不足などで復旧作業が思うように進んでいないところもあるという。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月14日
古代中国の農業の神「神農」は薬草を探すため
古代中国の農業の神「神農」は薬草を探すため日に何種類もの植物を口にした。そして毒に当たるたび、この葉の力でよみがえった。「霊草」といわれた「チャ」、今の茶である▼永遠の命などあろうはずがないのに、不老不死の仙薬を求めて徐福を日本にまで派遣したと伝わる秦(しん)の始皇帝は、その効用を信じて飲み続けた。植物に詳しい静岡大学農学部の稲垣栄洋教授に教わった▼英国の産業革命を支えたのもお茶だという。当時、水が媒介する赤痢にかからないように労働者はビールなどのアルコール類を飲んでいた。これでは酔って仕事の効率が下がる。東洋からもたらされた抗菌成分を含むお茶は、疫病を防ぎ、眠気も覚ます。生産性は一段と高まった。英国の作家トム・スタンデージの『歴史を変えた6つの飲物』(楽工社)にもある▼例年より数週間から1カ月ほど早く全国的な流行期に入ったインフルエンザが勢いを増している。休校や学級閉鎖も増え始めた。ワクチンを接種したからといって油断は禁物。体力の落ちたお年寄りは特に警戒が必要である。頼りになるのはお茶。うがいもいいし、飲んでもいい。豊富に含まれるカテキンがウイルスの侵入を防ぐ▼寒い時でも暑い時でも「霊草」が簡単に飲める。始皇帝の恨めしそうな顔が浮かぶ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月16日
現政権とは〈似て非なるもの〉だろう
現政権とは〈似て非なるもの〉だろう。句をたしなむ文化人でもあった。心に残るのは、首相退任時に詠んだ〈暮れてなほ命の限り蝉(せみ)しぐれ〉である▼中曽根康弘元首相は、功罪あるが戦後政治に大きな足跡を残した。小欄でも何度か取り上げ、5月29日付では衆参ダブル選も念頭に亥(い)年選挙と101歳の誕生日に触れた。それからちょうど半年後、11月29日の「議会開設記念日」に亡くなるとは、やはり政治の“申し子”だったのか。今につながる政治の源流で、官邸主導の礎を築く▼旧制静岡高校から東京帝大法学部、内務省とエリート街道を進み、海軍主計中尉として敗戦を迎える。一転して政治を志し戦後初の衆院選に28歳の若さで当選した。リーダーシップの根底には旧制高校時代の古典的教養があった。読書と思索を欠かさず文化人、学者らの幅広い見識を求めた▼親米路線、改憲、政治主導と中曽根、安倍両氏は一見似ているが中身と手法が違う。言い訳に終始する現政権とは異なり、中曽根氏は真っ向勝負の論戦こそ求めた。半面で農業面では両政権に大差はない。市場開放問題に直面し農協批判も表面化した▼今年の漢字一字は「令」に。改元を踏まえたこの1年を表す。きょうは正月事始め、すす払い。政治の“大掃除”も急がねば。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月13日
経済の新着記事
WAGYU欧州で急増 日本産の遺伝資源 流通網の追跡を 畜産技術協会調べ
和牛の遺伝子を持ち、海外で飼養された肉用牛「WAGYU」の生産が欧州で急速に増えていることが、畜産技術協会の調査で分かった。米国やオーストラリアから和牛受精卵や精液が欧州に導入され、欧州産まれの和牛の純粋種や交雑種(F1)が、国境を越えて欧州内や中東に輸出されている。輸出を狙う日本産和牛肉との競合が懸念される一方、世界的な視点で和牛遺伝資源の把握が重要と同協会はみる。
和牛の遺伝資源が、国境を越えて頻繁に往来している実態が浮き彫りになった。1976年に米国へ流出したのを契機に、米国やオーストラリアを起点に各国で急速に生産が増えてきた。
ドイツでは2014年に94頭だった繁殖雌牛が17年に282頭と3倍に拡大。英国、スペインでは、2000年代前半に米国やオーストラリアから遺伝資源が導入され、2000年代後半に動きが本格化した。オランダやニュージーランドからも精液や受精卵が輸入され、受精卵移植(ET)を利用し、急速に増えている。受精卵は1個6、7万円ほど。精液はストロー1本が1450~2900円という聞き取り調査の結果も報告する。
購入した受精卵や精液を基に牛群を造り、14頭もの優良種雄牛をそろえた牧場もある。生産したフルブラッド(純粋種)の雄牛をアラブ首長国連邦(UAE)に売る予定があるという話や、ルーマニアやポルトガルに販売したとの聞き取り調査結果も紹介する。
純粋種、F1の取り組みは多様。出荷月齢は、14カ月齢の子牛で出荷する経営体がある一方、2歳を過ぎてから1年間の肥育期間を設ける経営体もあった。
英国の生産者は、系列レストランや直売所でWAGYU肉を販売し、香港への輸出経験もあった。ロンドン市内では、スペイン産や南米産のWAGYU肉が販売されている。和牛の遺伝資源も牛肉も国を越えて動いている。調査報告では生産・改良・流通を世界規模で「把握することが重要」としている。
調査は「Wagyu肉生産・流通等実態調査事業」。日本中央競馬会の助成を受けて昨年から始まり、英国やスペイン、ドイツで現地調査した。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月15日

傷あっても味は抜群 イオン300店応援セール
イオンリテールは13日から、全国の「イオン」「イオンリテール」約300店舗で、今秋の台風で被災した地域の農産物を販売する応援セールを始めた。15日までの3日間、台風被害のあった長野産、岩手産リンゴを中心に、各地の特産品を販売する。「傷など外観はわけありでも、味は抜群」とPRし、消費拡大につなげる。
消費者が買って応援できる「がんばろう 生産地応援セール」と題し、被災地などの農産物を販売。イオン新浦安店(千葉県浦安市)では、傷などがある各地の「理由(わけ)ありリンゴ」が並んだ。
長野産サンふじ1袋(1・2キロ)537円、「ぐんま名月」同645円、岩手産サンふじ(4個入り)429円で販売している。千葉産のレモンやキャベツなども扱う。リンゴを試食した60代女性は「傷はあるが、実際に食べてみるとおいしかった」と購入していた。
リンゴ産地のJA全農長野生産販売部の長谷川孝治専任部長は「傷みがあり市場では売れない商品を提供できる。生産者にとってありがたい」と話す。イベントを主催するイオンリテール農産商品部の石井友和統括マネジャーは「生産地応援として、多くの農産物を販売していきたい」と意気込む。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月14日

花の水揚げ正確に 絵文字17種配送ラベルに印字 オークネット・アグリビジネスが開発
インターネットによる花き取引事業を展開するオークネット・アグリビジネスは、切り花の特性に適した水揚げ方法を示すピクトグラム(絵文字)を開発した。同社によると、花き業界では初の試み。商品の配送ラベルに印字し、ひと目で理解できるようにする。知識や経験を問わず、小売店の従業員が誰でも正しい水揚げができるようにし、消費者への長持ちする花の提供につなげる。
切り花に水を吸わせる水揚げは、品質維持に欠かせない工程。水や湯を使う、茎を割る・たたく・焼くなど、さまざまな方法がある。品目や品種、スプレイ咲きかスタンダード咲きかなど、商品ごとに方法も異なる。
同社は、衣服の洗濯表示マークに着想を得て、絵文字開発に着手。尾崎進社長は「正しい方法を分かりやすく伝えれば、誤った方法による商品ロスや、店員の教育負担も減る」と、ニーズを語る。
ひと目で方法を連想できる絵文字を、17種類作った。同社が扱う約140商品を対象とし、商品配送ラベルに印字する。同じく印字した2次元コード(QRコード)を読み取れば、湯揚げにかける時間、水揚げ後の水管理など、より詳しい情報を得られる。
千葉県の生花店「U・BIG花倶楽部(くらぶ)」は、絵文字を参考にブバルディアで水揚げを実験。従来は空切りしていたが、茎を焼いた上で湯に漬ける方法に変えた。「水の含み具合に差が出たためか、葉に張りが出た」と効果を実感する。
開発に当たり、札幌市で生花店「フルーロン花佳」を経営し、各地で品質管理の講習を開く薄木建友氏が監修を務めた。薄木氏は「農家も小売り側の水揚げの仕方が分かれば、出荷時の管理の参考になる」と、産地にも有益な情報となることを期待する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月13日

無洗米「SAKURA RICE」世界に 業務向けで高評価 全農子会社
農畜産物を輸出するJA全農の子会社、JA全農インターナショナルは、業務需要に開発したブレンドの無洗米「SAKURA RICE」(サクラライス)の輸出に乗り出した。世界で日本食の注目が高まる中、業務用を開拓、輸出拡大を狙う。日本産や無洗米による調理作業の効率化が売り。日本食店が多くあるシンガポールで今年から、複数のチェーン店が同ブランドの扱いを始め、手応えを得ている。
これまで同社の輸出米は家庭用主体だったが、業務需要に応えるブランドとして「サクラライス」を企画した。同社によると①国産のブランド価値②品質③無洗米による作業性の効率化──を売りに営業している。品質が一定化し、多くの用途に使えるようにブレンド米とした。東南アジア数カ国で販売している。
シンガポールの海鮮丼チェーン店「哲平食堂」では、現地法人の全農インターナショナルアジアの提案を受け、全7店舗で10月からサクラライスを使う。量は毎月約1トン。山下哲平オーナーシェフは「粒がしっかりして時間がたっても冷えてもおいしい」と強調する。山下シェフが展開するうなぎの専門店など、他店舗でも今後使っていく予定だ。
哲平食堂のフランチャイズを手掛けるYCPダイニングシンガポールのショーン・タン代表は「在住日本人も当地の客も満足している。無洗米は店員の作業が楽で、現地で手に入れにくいので助かる」と評価する。
シンガポールでは哲平食堂の他、日本式の焼き肉レストラン「牛角」9店舗でも、サクラライスの使用が始まった。
全農インターナショナルは「米の輸出を増やすには業務需要を取り込むことが有効。全農のルートを生かし、青果など他品目とセットで販売拡大も期待できる」とサクラライスを起爆剤に、輸出拡大につなげる考えだ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月12日

[活写] こんがりきつね色
北海道滝上町の農家6戸がつくる「滝上町七面鳥生産組合」で、クリスマス向けの薫製作りが最盛期を迎えている。
各農家が7カ月ほど育てた七面鳥の半身を、ハーブや塩などが入った調味液に約2週間漬けて、蒸した後に桜のチップで約3時間いぶす。作業場には、きつね色に仕上がった七面鳥が並ぶ。
同組合の農家は畑作や酪農が経営の中心で、約30年前に冬の仕事として七面鳥の薫製を作り始めた。今では町の名物になり、全国から注文が入る。今年は今月6日に作り始め、18日までに約1800個を仕上げる予定。
組合長の畑作農家、佐々木渉さん(54)は「脂がのっておいしく仕上がった。クリスマスに家族で楽しんで」と勧める。値段は1キロ3000円。(富永健太郎)
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月12日

新米販売が苦戦 10月支出額前年割れ 消費増税影響か
新米の販売が苦戦している。消費動向が分かる総務省の10月の家計調査で、米の1世帯当たりの支出額が3年ぶりに前年を下回った。米離れに加えて、消費税増税による節約志向が影響したためとみられる。現状の小売価格は前年並みだが、米卸やスーパーは売れ行きの動向を見極めながら、価格の居所を探っている。
小売 動向探る
10月の家計調査では1世帯(2人以上)当たりの米の支出額は2944円と、前年同月を3・9%(実質)下回った。米の支出が年間で最も多くなる時期に販売が鈍化した。
消費税増税前の駆け込み需要の反動によって、消費支出全体が同5・1%減と11カ月ぶりに前年割れする中、軽減税率が適用される米でも減少が見られ、増税による節約志向が影響したもようだ。
米穀機構の11月調査でも、前年と比べた現状の販売数量の指数は、小売りや中食・外食業者が42で基準点の50を下回った。「減った」と回答する業者が多かった。
現在、スーパーなどの小売価格は前年からほぼ横ばいの展開となっている。全国のスーパー約1000店の販売データに基づく農水省公表の精米5キロの小売平均価格(10月)は、前年同月比0・5%安の2031円。秋田「あきたこまち」は1・8%安の1987円、新潟・一般「コシヒカリ」は1・4%高の2202円など小幅な上げ下げはあるが、前年並みの水準が中心だ。
米卸やスーパーの対応はまちまちだ。「購入数が増えにくいので、単価を上げて売り上げ増を目指す」(東京都内の中堅スーパー)との声がある一方「これ以上の価格上昇は消費を低迷させる」と特売で集客を狙う動きがある。「安くしても、大幅には販売が伸びない」(大手卸)との見方もある。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月11日

機能性食品 有機JAS… 日本規格を世界へ新たに推進プラン GFVC官民協
農水省やJA全農、食品関連企業で構成するグローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会は、食品産業の海外展開を加速させる新たな推進プランを策定した。2020年度から5年間の計画で、機能性食品や有機JASなど日本独自の食品認証の仕組みを海外に普及させることが柱。日本の食品企業が現地で販売しやすくし、日本産の食品や農林水産物の輸出拡大につなげる。
14~19年度の推進プランでは、海外市場の調査などを盛り込んでいた。今回の新プランでは、9の国・地域別に実践する具体的な取り組みを示した。協議会に参画する企業の海外進出数を現状の1・6倍(200社)に拡大する目標も掲げた。
新プランによると、企業進出数が多いタイやフィリピンなどでは、現地で高まる消費者の健康志向への対応を強める。現地に進出した日本企業が、日本と同基準の機能性食品を流通しやすくするため、輸出先国へ、日本に準ずる基準の整備などを働き掛ける。ベトナムなどでは、農業生産工程管理(GAP)や有機JASなど日本型の規格や制度を普及して、日本食品の高付加価値化を進める。
オーストラリアでは、日本と季節が逆転する地理的条件を生かし、日本で栽培されているアスパラガスやメロンなど青果物の生産を拡大。アジア圏など第三国への農産物の通年供給を推進する。
このほか、①複数企業が連携した海外進出計画の策定②日本食材の現地での加工や料理として提供③スマート農業技術の海外展開──で取り組みを支援する。
同省は「日本企業の海外進出支援は、農産物自体の輸出拡大にとって重要」(国際部)と説明。同省では来年4月、政府の農林水産物輸出の司令塔組織となる輸出部が設置されるなど、農産物輸出拡大に向けた動きが加速化している。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月11日

機能性に魅力 実需が国産要望 もち麦1年で3・5倍
もち性大麦の2019年産生産量が8000トンを超え、前年産に比べ3・5倍と急増した。健康食品としての認知度が高く、国産志向もあり市場が拡大。機能性成分が多く、各地の気候に適した新品種の導入が進み、実需の要望で産地が形成されつつある。急増してもなお需要が供給を上回っている状況で、国産の増産への期待が高まっている。
19年8000トン超 需要伸び品種充実 産地追い風
農水省がまとめた大麦の農産物検査結果(10月末時点)によると、もち麦の検査数量は8581トン、18年産実績を6000トン上回った。
県別で最も多いのは福井県の2357トン。機能性成分が多い新品種「はねうまもち」を導入し、約800ヘクタールを作付けた。4JAが取り組み、大手精麦メーカーに仕向ける。「メーカーの強い要望に応じ、従来の大麦品種を転換した」とJA福井県経済連。交雑や異品種の混入を防ぐため、産地を限定する。
次いで増やしたのが福岡県。九州が栽培適地の「くすもち二条」を前年の4倍、1243トン生産する。うち、JA全農ふくれんは県内の精麦メーカーの求めで試験的に約70ヘクタール栽培した。20年産はこれを上回る注文があるが、「他の麦類の要望もあり、そうは広げられない」(全農ふくれん)と悩ましい現実もある。
宮城県はもち麦「ホワイトファイバー」を前年の11トンから764トンに拡大。実需の関心が高く、県は種子の生産体制を整え一般栽培に踏み切った。今後も増やす計画だ。
もち麦の普及は、県が奨励品種にして、産地品種銘柄として流通させることが欠かせない。産地品種銘柄の採用は、この3年間で6県から18道県に拡大した。大半が、健康機能性が多い品種への転換だ。ビール麦産地の栃木県は、ビール麦から県育成品種「もち絹香」に替えた。「健康志向で今後の需要が見込まれるため」(生産振興課)だ。
もち麦品種は、3年前の5品種から8品種に増えた。国内最大面積となった「はねうまもち」は農研機構が開発、17年に品種登録を出願した。寒冷地向きで、新潟県、北海道でも展開中。暖地向けは「くすもち二条」「ダイシモチ」がある。各地の気候に適した品種開発も、産地化を後押ししている。
農林水産政策研究所企画広報室の吉田行郷室長は「需要に対応するには産地がまとまって品種を統一したり、十分な生産量を確保したりする必要がある」と指摘する。
もち麦は食物繊維の一種、βグルカンを豊富に含む。腸内環境改善や血中コレステロール低減に効果があるとされる。国内流通量に占める国産の割合は1割に満たない。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月08日
輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
財務省が発表した貿易統計を基に日本農業新聞が調べた。
農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
輸出額が伸び悩む背景には、最大の輸出先・香港の政情不安定化や、韓国との関係悪化などもあるとみられる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月08日
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日