教皇と言葉の力 弱者に添う姿勢に学ぶ

 多くの感動を残し、ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇が帰国した。改めて思うのは人々の心に届く「言葉の力」である。社会的弱者に寄り添い、平和を希求し、気候変動を憂う教皇の姿勢に学びたい。それは、協同組合の相互扶助、助け合いともつながる。

 ローマ教皇の来日は、平和へのメッセージを国内外に発した先のヨハネ・パウロ2世以来、実に38年ぶり。信徒13億人の頂点に立つ教皇の影響力は大きい。それだけに世界が直面する課題解決への具体的言及は重みを持つ。圧倒的な「言葉の力」を受け止めたい。世界では今、各地で紛争が起き宗教や民族対立、思想弾圧などが絶えない。こうした中で、武力ではなく、話し合いで問題を打開しようとのメッセージは説得力を持つ。

 世界が分岐点に立つ中で、教皇訪日の意味合いを考えたい。日本は唯一の被爆国で、国際平和運動を主導すべき立場だ。一方で、東日本大震災をはじめ相次ぐ災害にも懸命の復旧、復興を進めてきた。気候変動が大災害を引き起こす中で地球温暖化対策は待ったなしの課題だ。近隣では北朝鮮の非核化は進まず、香港での民主化運動弾圧は深刻な事態を迎えつつある。

 教皇の言葉は、核廃絶、格差是正、環境保護といった直近のあらゆる社会問題と向き合う。全ての人々の命を慈しむ姿勢である。世界を覆う「分断」「自国第一主義」「不寛容」と対決すると言ってもいい。

 教皇は、1549年に日本にキリスト教を伝えたフランシスコ・ザビエルと同じイエズス会出身で、日本に強い関心を持ってきた。キリスト教の浸透と信徒弾圧、そして被爆の地・長崎をまず訪れた理由でもあろう。

 協同組合の運動とも重ねたい。協同組合の先駆者・賀川豊彦は、大正、昭和期のキリスト教社会運動家でもある。社会的弱者の救済を目指し、生協や共済、農民組合などを立ち上げた。「農民よ、団結せよ」との言葉も残した。地域貢献にも力を入れるJA共済のポスターにある「農業を母に。助け合いを父に。」の言葉は賀川の相互扶助を受け継ぐ。

 ほぼ同時期に酪農民の団結を促し、北海道酪農の礎を築いた黒沢酉蔵。北海道酪農義塾を開き人材育成に努め、キリスト教に基づく三愛主義も掲げた。神を愛し人を愛し土を愛す。健やかな土が大地を豊かにし、良い食物をもたらし健やかな民を育てる意味の「健土健民」の4字に結実する。循環農法の大切さと日本酪農・乳業のあるべき本質を示す。今も雪印メグミルクの社訓として生き続ける。

 JAグループの合言葉「耕そう、大地と地域のみらい。」もそうだ。食と地域の未来は、助け合いながら自ら耕すことで開けてくる。国連の持続可能な開発目標(SDGs)達成にも強い意欲を示す教皇の言葉も重ねながら、協同組合運動の意義も考えたい。

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