地域の課題へ本気度100% 中学・高校生が株式会社 農業、草刈り、人づく 熊本県氷川町

 熊本県氷川町で、女子高校生が社長、中学生らが役職員を務める株式会社が、耕作放棄地の解消や珍しい農作物の栽培実験などに挑戦している。古里の課題を解決し、持続可能な地域にしようと起業。大人たちとも物おじせずに交渉し、決算など難しい局面もがむしゃらに学んで奮闘する。
 

記者活動で問題意識


 同町の高校生や中学生が経営するのは「(株)氷川のぎろっちょ」。同社の役職員は、2ヘクタールでかんきつを栽培する農家で当時は新聞販売店を経営していた岩本剛さん(62)が立ち上げた「子ども記者クラブ」に参加する小中高生20人だ。

 会社の活動は年間およそ60日。農業部、草刈り部、ひとづくり部など五つの部署で、60アールの耕作放棄地の草刈りやアボカドをはじめ新たな地域の特産品になる農作物の栽培実験などを手掛ける。

 発端の子ども記者クラブは、自分の体験や地域のイベントなど“子ども目線”で取材、執筆し、新聞折り込みに入れるミニコミ紙で、町民に伝える活動を担うもの。クラブは当初、町内を中心に小・中学生15人が集まり、毎週末に取材に励んでいた。

 会社発足のきっかけは、記者クラブに設置した「まちの課題探究解決コース」。1期生だった中学生5人が、地域を歩く中で耕作放棄地や空き家、ごみが多いという地域問題に気付いた。

 解決に向け、草刈りや空き家を生かす事業に取り組みたくても、行動するには資金や信頼の担保が必要になる。会社の発足は自然な流れだった。

 「会社を作ればカッコイイし、大人に本気度も伝えられる」と社長になった高等専門学校2年生の竹山実李さん(16)。事業計画を練り、定款作成を学び、勉強会や研修を重ねた。最年長の竹山さんが印鑑証明を取得できる15歳になった2018年2月に会社を設立した。

 広報部長の中学3年生、堀川桃子さん(15)は「初めはお菓子を食べる時間につられて加わった。でも、ごみとか荒れ地とか地域の問題を知って何とかしたくなっ・た」と笑顔で明かす。
 

町の名前残したい


 学校では学べない経験は新鮮で楽しいという。設立には、お年玉などで集めた2万円を5人それぞれが出資。草刈り機など農機購入には、町内外から260人が寄付してくれた。

 活動を支える岩本さんは元役場職員。25年前に地域デザインを研究する早稲田大学の後藤春彦教授に出会って人生観が変わり、地域づくりに情熱を注いできた。

 後藤教授の教え子で全国各地で地域づくりに携わる研究者や大学生らと、子どもたちが交流する機会を何度もつくった。地域を真剣に思う大人や大学生と触れ合う中で、子どもたちは成長したという。

 「街づくりは100年かけてやるもの。子どもには地域を知り、提案ではなく行動してほしいと思った。3世代かけて人材育成をしたら地域は続く」との信念を岩本さんは抱く。その思いを中・高生起業家はしっかりと受け止めている。

 塾や部活で忙しくても「週末の1時間だけでも」と活動に顔を出す。決算など苦労が多い上、売り上げはほとんどなく赤字のため、保護者や岩本さんが資金を支援する。それでも社員の中学2年、寺岡拓海さん(14)は「氷川の名前をずっと残したい。八代郡の中でもピカイチの町なのでもっと有名にしたい」と、諦めない。

 同社は今後、人材育成事業を強化する方針だ。堀川さんは「将来は後藤先生みたいに建築家になって、建築の技術で地域をデザインする。そのためにも今、頑張る」と張り切る。

 同社はステップを踏んで、数十年後の最終目標に、氷川町で土地が有効に利用され、新たな雇用を生み出す事業が生まれ、町全体がにぎわっていることを据える。

 今後、現在の役職員は進学などで地域を離れるが、竹山さんは「後継者に安心して任せられる基盤をつくり、経営を軌道に乗せてバトンタッチする。年を取ったら、会社を運営する後輩を手伝うのが夢」と、将来を見据える。

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