農村創生で交付金を 基本計画へ提言 全国町村会
2019年11月28日

全国926の町村で組織する全国町村会は27日、東京都内で全国大会を開き、食料・農業・農村基本計画の見直しに向け、「農村価値創生政策」の実施などを盛り込んだ農業・農村の政策提言を決議した。農業発展、農村振興、多面的機能発揮の三つの視点で、農村の価値を持続的、安定的に高める交付金創設などの必要性を主張。関係人口拡大などで多様な主体が活躍できる地域づくりを進め、都市農村共生社会を目指す。
提言した「農村価値創生交付金」(仮称)は、地域独自の多様な取り組みが展開できるよう、国が使途の大枠を決め、自治体に客観的な基準で配分する内容。……
提言した「農村価値創生交付金」(仮称)は、地域独自の多様な取り組みが展開できるよう、国が使途の大枠を決め、自治体に客観的な基準で配分する内容。……
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農業に遊び心注入 どやっ! JA鳥取西部青壮年部
JA鳥取西部青壮年部中山支部は、果樹の防除などに使うスピードスプレヤー(SS)を、3週間かけてカラフルなアート作品に仕上げた。部員らが協力してデザインから色付けまでを手掛けた作品は、鳥取県大山町のJA中山支所に展示されている。
SSの所有者でデザインなどを担当した同支部の鹿島竜太郎さん(35)は「小さい頃から見てきたなじみの機械。農業に遊び心を加えることでもっと楽しめるのではないかと思った。展示後もこのSSで作業したい」と話した。
同支部の林原正之部会長は「何か新しいことにチャレンジしたいと思った。農業の持つ自由さや多様性、魅力などを感じてほしい」と話した。作品はJA青年組織手づくり看板コンクールのアート部門にも出品。1月ごろまで展示する予定だ。
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2019年12月14日
五輪Vブーケ採用 国産花き回復に生かせ
2020年東京五輪・パラリンピックでメダリストに贈呈する副賞に、国産花きを使用した花束「ビクトリーブーケ」の採用が正式に決まった。花きの消費量と国産のシェアを反転拡大させる契機にするべきだ。
五輪と花の関係は深い。12年のロンドン大会では大会専用のバラが育種されるなど、その国や開催地の花き文化を象徴する花を扱ってきた。日本では1998年冬季の長野大会で県産アルストロメリアなど多様な花を使い、大きな話題となった。
しかし16年のリオ大会以降、ブーケは姿を消している。同大会のテーマ「持続可能性」を受け、花きの日持ち性や検疫の面から国によっては選手が自国に持ち帰れないことが課題に挙がり除外された。18年冬季の平昌大会も同様の対応となった。
日本の花き業界はブーケ復活へ結束した。17年に生産や流通、販売に携わる団体などが日本花き振興協議会を設立。自民党フラワー産業議員連盟を通じ、政府や大会関係者への申し入れなどを行った。産地側も早い段階から対応に動いた。大会期間が夏場のため、高温下でも耐えることのできる花の栽培実験を各地で重ねた。ビクトリーブーケは業界の悲願だった。
花材は東日本大震災で被災した東北産を中心に使う。「復興五輪」を掲げた大会で、被災地復興の後押しに期待がかかる。ブーケのデザインはオリンピック用、パラリンピック用の2種類。福島産のトルコギキョウと岩手産のリンドウを共通の花材として採用する他、宮城産のヒマワリとバラを使い分け、計約5000束を用意する計画だ。
大会組織委員会はプレスセンターや競技会場などの装飾で、被災地以外の花の活用も検討している。盛り上がりを全国の産地に広げる視点が欠かせない。
国産切り花は高齢化など生産基盤に課題を抱える。18年の出荷量は35億3400万本と過去20年間で最低だった。一方、外国産は安さや安定供給で攻勢を強め、同年の輸入量は13億本強と、最多だった12年に次ぐ水準だ。国産のシェア低下が続く。
五輪は国産花きの魅力をアピールする絶好の機会になる。日本は、花きの高い育種・栽培技術を持つ。今回ブーケに採用されたヒマワリやトルコギキョウには、花粉が落ちないよう改良された日本独自の品種を使う予定だ。生け花などで育んだ装飾技術も発揮される。日本花き振興協議会の磯村信夫会長は「世界に誇る高い品質の花きを届けたい」と強調する。
夏場の花の品質維持は容易でない。産地から定温で輸送し、選手に渡すまで会場では保冷剤を添えて保管する。期間中の交通規制で物流の混乱も予想されるなど課題は多い。業界一丸で態勢を整えるべきだ。
機運の高まりを一過性にとどめてはいけない。課題への対応で連携をより強固にし、大会後の花き振興につなげ、停滞する生産や消費を盛り上げたい。
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2019年12月14日

奥伊勢えごま油 三重・JA多気郡
三重県のJA多気郡が販売するえごま油。大台町産のエゴマの実を、熱を加えず時間をかける生搾りで搾油した。色が濃く、純度が高いのが特徴だ。JA奥伊勢えごま倶楽部(くらぶ)が種まきから収穫、洗浄、選別まで手作業で行う。
エゴマには体内では合成できない必須脂肪酸オメガ3(αリノレン酸)が含まれ、「食べるアブラ」として注目されている。サラッとした口当たり。パンに付けたり、納豆やヨーグルトに掛けたり、幅広く利用できる。
1瓶(95グラム)2500円。町内のJA購買店舗や直売所スマイル明和、スマイル多気で販売する。問い合わせはスマイル明和、(電)0596(55)8484またはスマイル多気、(電)0598(38)7070。
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2019年12月12日
温暖化で植物適地移動 VoCCで分析 果樹転換参考に 長野県など研究
地球温暖化が現在のペースで進むと、国内の高山帯に生息する野生動植物は、21世紀末に生息適地がなくなる可能性がある──。長野県環境保全研究所などでつくる研究グループが発表した。全国1キロ四方ごとに温暖化の影響を推計したのは初めて。影響は市町村ごとに閲覧できるようにし、農業分野では作物転換の検討に使ってもらう。
推計には、気候変動速度(VoCC)という指標を用いた。現在のペースで温暖化が進むと、VoCCの全国平均は1年当たり249メートルとなる。樹木の移動は、最大で同40メートルといわれており、気候変動に追い付けない。これは、身近な自然が将来、緯度の高い所や標高の高い所でしか見られなくなるということを示唆する。
都道府県ごとに影響を見ると、沖縄が同2174・3メートルで、最も速度が速かった。次いで千葉、長崎となった。自治体ごとの影響は、環境省のホームページ内で確認できるよう準備を進めている。
農業分野では、将来の地域の気候がどの地域と同じになるのか判断でき、転換する品目・品種や転換のスケジュールの検討で参考になる。同研究所の高野宏平研究員は「果樹などの永年作物は栽培や転換に時間がかかる。苗木の準備計画に役立ててもらいたい」と話す。
<ことば> VoCC
ある地点で気候が変化した場合、将来同じ気温になる場所の最短距離を、変化した時間で割った速度のこと。例えば、年平均気温15度の場所が100年間で100キロ北上したら、VoCCは1年当たり1キロとなる。
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2019年12月10日

[あんぐる] 作る・自然の恵み 創る・自分の芸術 高須ハウス(茨城県取手市)
茨城県取手市に、芸術家が創作活動と農作業に取り組むアトリエ「高須ハウス」がある。かつてJAだった建物で作品制作、農家から借りた畑で作物と“半農半芸”の姿勢で活動に励み、住民が集まる芸術を生かした町づくりの拠点にもなっている。
この施設は、1999年までJA茨城みなみ高須支所だった2階建ての建物を改修して2013年2月にオープンした。広さ約120平方メートルの1階をアトリエなどに使っている。受付カウンターがあった一角など、あちこちにJAだったことが分かる跡があり、敷地にはブルーベリーの木も植えられている。
主な農作業の場は、近くにある広さがテニスコートほどの畑だ。素材として和綿を作ろうと考えた芸術家が15年に耕作放棄地を借り、その後も、同施設を使う芸術家が耕作を続けている。現在はシソやネギなどを植え、芸術家が自分で食べる他、市内にある東京芸術大学取手キャンパスの食堂にも提供している。
今までに壁画家や映像作家ら、11人と2組が、1、2カ月間利用した。芸術家は作り上げた作品を地域住民らに披露する展覧会を開いた後、当地を離れるのが恒例になっている。
この施設は1999年に発足した市と同大学、市民で展開する「取手アートプロジェクト(TAP)」の取り組みの一つ。NPO法人取手アートプロジェクトオフィスが運営し、芸術家が先生役となった糸紡ぎ体験など、市民が芸術に触れる機会を増やす場にもなっている。
畑で野菜の手入れをする秋良さん。農作業から作品に生かすアイデアを得たという(写真左)。高須ハウスの外観。窓が多く開放的で、制作の様子を見に来る地域住民も多い
鑑賞者を巻き込む劇場型の作品で知られる現代芸術家の秋良美有さん(25)は今年10月、台風19号で壊れた藤棚の木材を舞台芸術に活用する構想をここで練り、畑仕事にも打ち込んだ。
秋良さんは「畑は心に余裕がないと雑草だらけになるなど、自分の今を映す鏡のようで面白い。創作と私流の農業を両立させたい」と話す。(釜江紗英)
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2019年12月16日
農政の新着記事

[ゆらぐ基 広がる危機](1) 疲弊する青果物輸送 5年で運べなくなる
農村と都市を結ぶ農畜産物の物流が揺らいでいる。深刻なトラックドライバー不足や人件費高騰が理由だ。日々の食べ物を遠方に頼る消費者の暮らしに影響が出かねない。一方、農村の人手不足対策には政府がスマート農業の普及に力を入れる。大きな期待がかかるものの、全ての課題を解決する万能の技術ではない。食を支える現場を追った。
全国の青果物が集散する東京都中央卸売市場大田市場。午後7時、翌朝取引する青果物を載せたトラックが、全国各地から次々と到着する。運転歴20年以上の40代ドライバーは、複数個を結束した重さ9キロのミニトマトの箱をトラックから降ろし、指定パレットに積み込む。ナンバーの地名は「佐賀」。1000キロを超える道のりを走破した後、この重労働に当たる。
青果物輸送はトラックの荷台に直接荷物を載せる「じか置き」が多い。「手荷役に2時間、長い時は4時間以上かかる」。翌日は長野県に向かい、リンゴを積み、佐賀に戻る。「きつい仕事なので若手のなり手が少ない」とつぶやく。
「過重」で敬遠 時間外規制も
輸送業者の本来の業務は輸送で、荷物を受け取るのは市場側の作業だ。しかし、青果物輸送はドライバーがサービスで荷役を請け負う。産地でも積み込みを輸送業者が担う事例が多く、青果物は他の荷より負担が大きい。九州の物流業者は「青果物を敬遠する業者が増えている」と明かす。
輸送業者の負担を軽減しようと国は7月から監視を強化。荷物の出し手・受け手がドライバーに重い負担を強いた場合、企業・団体名を公表する。事務局の厚生労働省は「悪質な場合は指導する」との姿勢だ。
「産地と市場が変わらなければ、5年以内に九州から関東へ荷を運べなくなる」
福岡県内の輸送業者でつくる福岡県トラック協会の食料品部会役員らは明言する。2024年4月にトラックドライバーの時間外労働上限規制が始まるからだ。
現状、多くの産地がドライバーの長時間残業を前提に、市場に青果物を運ぶようトラックを仕立てている。福岡から東京に運ぶ場合、夕方に受けた荷物を翌日の夜までに届けていたが、規制後に同じ日数で届けるのは難しい。遠隔地ほど安定供給が難しくなる。
同部会部会長を務めるイトキューの中原理臣社長は「青果物流通は、輸送会社だけの問題ではない。産地と市場も自分事として受け止め、合理化に向けた話し合いの機会をつくってほしい」と要望する。青果物輸送は、産地や流通業者だけでなく、消費地の実需者や消費者にも影響を与える国民的な課題といえる。
産地体制を再構築
輸送業者の窮状を受け、輸送体制の再構築に乗り出す産地もある。JA宮崎経済連は、選果場で集めた青果物の一部を、一度予冷庫で保存し、翌日出荷するようにした。前日に出荷量が確定するため業者はトラックの手配がしやすく、朝から積み込みができ余裕を持って荷物を運べる。
収穫から市場に届く日数が1日伸び、生産者の反発があったが、予冷した方が鮮度維持できること、輸送業者が厳しい状況であることを担当者が根気強く説明し、理解を得た。輸送業者の業務は効率化できるが、産地は予冷庫を使うためコストがかかる。
それでも改革に踏み切った理由について、経済連は「輸送業者は物流の基盤だ。今後も消費地に安定して運ぶには、歩み寄りが必要だ」と強調する。
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2019年12月16日

国産食材だけでカロリー確保なら 夕食はご飯焼き魚だけ 自給力低下あらわに 農水省推計
ご飯1杯と焼き魚1切れ──。農水省がこんな衝撃的な夕食メニューを示した。輸入食材に一切頼らず、国内の農地を目いっぱい使って食料を生産し、できるだけ多くの供給熱量を確保しようとした時に想定される食事だという。
同省は、国内の農地を最大限に活用した場合にどれだけの食料を生産できるかを表す「食料自給力」を推計している。
2018年の農地面積などを基に同省が計算した結果、米や小麦、大豆を中心に作付けするパターンでは、荒廃農地を再生利用しても、国民1人1日当たりに供給できる熱量は、1829キロカロリーと、体重維持に必要なエネルギー量2143キロカロリーに満たず、終戦直後の摂取熱量2000キロカロリーも下回る。
冒頭の夕食はその食事の一例だ。牛乳は3日にコップ1杯、鶏卵は10日に1個、焼肉は5日に1皿しか食べられない。
栄養バランスを一定に考慮すると、供給可能な熱量はさらに低下し、1429キロカロリーとなるという。
一方、芋類を中心に作付けすれば供給可能な熱量を2633キロカロリーまで上げることができ、輸入を含めた供給熱量の実績2443キロカロリーを上回る。ただ、この時の夕食は焼き芋2本、野菜炒め2皿、粉吹き芋1皿、焼き魚1切れといった具合だ。牛乳は5日に1杯、鶏卵は3カ月に1個、焼肉は19日に1皿になる。
食料安保か 飽食優先か
今回の推計は「日本の食料の潜在生産能力を示し、国民の共通理解を醸成する」(同省)狙いだ。
冒頭の食事メニューを見て、食料安全保障のためにも国内の農地や農業をきちんと守らなければならないと考えるのか、国産だけで豊かな食生活を続けるのは無理だから輸入に頼るしかないと思うのか。人によって反応は分かれそうだ。
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2019年12月16日
飼料米複数年に助成 10アール1・2万円、転作促す 農水省
農水省は2020年産米から、飼料用米や米粉用米の複数年契約に10アール当たり1万2000円の助成措置を新設する方針を固めた。取り組みに応じて、都道府県に対し、産地交付金を追加配分する。主食用米の需給安定に向け、転作拡大の柱となる飼料用米の作付けを促す。一方、19年産まであった多収品種への追加配分(同1万2000円)は廃止を含めて見直す方針だ。……
2019年12月15日

「森林サービス」創出 健康需要で産業化へ 林野庁
林野庁は、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出した。森林空間そのものを活用し、これまでの木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すのが狙い。どれだけ多くの民間団体・企業の参入を促し、定着させることができるかが鍵となりそうだ。
同庁は、健康志向の高まりに加えて、企業が従業員の健康管理を考える「健康経営」の考え方が広まっていることや、インバウンド(訪日外国人)需要が伸びていることに着目。「健康」「観光」「教育」の観点で森林を活用して、新たな需要を取り込むのが「森林サービス産業」の狙いだ。子育て層を対象にした森林体験、企業の研修・保養利用などを想定する。
具体策を検討するため、同庁は有識者らでつくる森林サービス産業検討委員会(委員長=宮林茂幸東京農業大学教授)を設置。①エビデンス(効果)②情報共有③香イノベーション──の専門部会で議論に着手。19年度中に報告書を取りまとめ、20年度以降、モデル育成を本格化させる。
香イノベーション部会では、スギやヒノキなどを精油の原料として有望視。新たな市場形成を見据え、精油の効用やアロマテラピーでの使用状況などを調査する。
エビデンス部会は、森林浴などが健康に与える効果のデータを集積し、事業化を後押しする。今年度は研究成果などの情報を集める。
情報共有部会では、森林サービス産業に関心を持つ企業や団体、自治体などを引き合わせるプラットフォームの創設を構想。同庁は「Forest Styleネットワーク」を発足した。12月3日時点で63の企業や団体、地方公共団体などが加入。今後、新たな事業が生まれるきっかけを生み出す交流の場としたい考えだ。
同庁は「民間や自治体と協力し、モデル地域の育成を進めていく」(森林利用課)としている。
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2019年12月15日

農地減少 政府想定上回る 荒廃、転用2倍ペース 対策見直し必須
耕作放棄や農地の転用による農地面積の減少が農水省の想定を上回って進んでいる。2015~19年の5年間に発生した荒廃農地は7万7000ヘクタール、農地転用は7万5000ヘクタールに上った。それぞれ同省が想定した2・5倍、1・5倍のペースで増えた。農地の再生が一定程度進んだものの、新たな荒廃農地の発生や転用に追い付かない状況だ。
農地は1961年をピークに一貫して減少し、2019年は439万7000ヘクタールまで落ち込んだ。政府が15年に策定した食料・農業・農村基本計画に掲げる25年の確保目標440万ヘクタールを既に下回った。
19年までの5年間の減少面積は12万1000ヘクタールに及ぶ。同省が変動要因を分析したところ、5年間で新たに発生した荒廃農地と農地以外に転用された面積は、合計で15万2000ヘクタールに上る。一方、再生された農地面積は3万2000ヘクタールにとどまり、減少要因が増加要因を大きく上回った。
基本計画では、荒廃農地と農地転用を合計で8万1000ヘクタールにとどめつつ、2万7000ヘクタールの農地を再生することで、農地の減少を5万4000ヘクタールに抑える想定だった。
同省は、中山間地域等直接支払制度や多面的機能支払制度を使って農地保全に取り組んだ地域は耕作放棄が抑制され、農地の再生も想定以上に進み、政策が効果を発揮したとみる。一方、「高齢化の進展や担い手不足などで新たな荒廃農地の発生が大きく見通しを上回った」(農村振興局)と認める。
現行の対策だけでは、農地減少が十分に食い止められていないことが明らかになった格好。将来にわたり農地を確保するため、より踏み込んだ対応が求められそうだ。
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2019年12月14日
台風19、21号 農林水被害3180億円 営農再開に全力 農相
10月に東日本を中心に猛威を振るった台風19号の被害から2カ月がたつ中、農林水産関係被害額が3180億8000万円に上ることが農水省の調べで分かった。被災地では依然、営農再開のめどが立たない農家も少なくない。江藤拓農相は13日の閣議後会見で、現場の不安に向き合い、復旧に全力を尽くす考えを改めて示した。
江藤農相は「雪のシーズンが近づいてきていることもあり、来年のことについて、現場には大変な不安がある」との認識を示した。その上で「さまざまな手を使って、自治体との連絡を密にして農地の復旧に全力を尽くしていきたい」と強調した。
被害額3180億8000万円は12日現在で、台風21号に伴う大雨などの被害も含む。内訳は、農作物が149億2000万円、農業用ハウスが28億5000万円、農業・畜産用機械が71億4000万円、農地が771億1000万円、用水路などの農業用施設が1219億9000万円、林野関係が789億9000万円、水産関係が130億1000万円などとなっている。
一方、9月に関東地方などを襲った台風15号の被害額は5日現在で814億8000万円。これに19号などの被害額を合わせると3995億6000万円に達し、西日本豪雨の3409億1000万円を超える。
台風19号では、各地で河川の決壊が相次ぎ、水田や果樹園に土砂が堆積するなどの被害が広範囲に発生。政府は11月に復旧支援策を取りまとめた。
特に被害の大きいリンゴには、大規模な改植を余儀なくされる農家に対し、最大で10アール当たり150万円を助成する対策を打ち出した。ただ、被災地では業者の人手不足などで復旧作業が思うように進んでいないところもあるという。
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2019年12月14日

農水補正予算5849億円 政府・与党 和牛倍増へ奨励金
政府、与党は12日、2019年度農林水産関係補正予算案を固めた。総額は5849億円で、18年度に比べ152億円(2・5%)減。このうち来年1月に発効する日米貿易協定などの国内対策費は3250億円。目玉となる和牛生産の倍増に向けた「増頭奨励金」は、中小規模の農家への支援を手厚くするため、飼養頭数が50頭未満の繁殖農家に1頭当たり24万6000円を交付する方針だ。
増頭奨励金の交付単価は、50頭以上の農家が同17万5000円、都府県の乳用後継牛が同27万5000円とする。
奨励金を含む和牛・乳用牛の増頭・増産対策には243億円を計上。日米協定での牛肉輸出枠の拡大や中国への輸出解禁をにらみ、35年までに和牛生産を30万トンに倍増させる計画だ。
畜産地帯での機械や施設の整備を支援する畜産クラスター事業には409億円を充てる。規模要件を緩和し、中小農家の規模拡大を後押しする。
産地生産基盤パワーアップ事業(旧・産地パワーアップ事業)は348億円。流通拠点やコールドチェーンの整備に加え、中小・家族経営の継承の円滑化や堆肥を使った全国的な土づくりにも支援する。
担い手育成対策などには64億円を計上。40歳前後の就職氷河期世代に就農準備交付金を支給する他、50代の就農研修にも助成する。
棚田地域振興法の制定を受け、棚田・中山間地域対策に282億円を盛り込む。
公共事業費は2991億円。うち農地の大区画化・汎用化に270億円、水田の畑地化などに566億円を計上する。台風19号などの復旧対策は公共、非公共合わせて2144億円。
危害分析重要管理点(HACCP)に対応した輸出施設整備などに108億円、豚コレラ(CSF)やアフリカ豚コレラ(ASF)などの家畜伝染病予防費に57億円、先端技術を活用したスマート農業技術の開発・実証プロジェクトに72億円を計上する。
農林水産関係補正予算案は同日、農水省が自民党農林合同会議に示し、了承された。政府は13日にも補正予算案を閣議決定し、年明けの通常国会に提出する。
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2019年12月13日

「スマート」上積みへ 20年度予算 17日にも大臣折衝
政府・与党は12日、2020年度農林水産関係当初予算の詰めの調整に入った。転作助成や農地集積など重要施策の財源規模が固まる中、当初予算総額の前年度超えを目指し、「スマート農業実現」「輸出力強化の体制整備」の関連予算額を17日に予定する大臣折衝事項に設定した。予算の上積みに向けて、江藤拓農相の手腕が問われる。
農水省は同日、自民党農林合同会議で、20年度予算について、財務省との折衝状況を報告。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は当初予算比で165億円減の3050億円、人・農地プラン実質化や農地中間管理機構(農地集積バンク)による農地集積・集約の執行見込み額は212億円とした。
大臣折衝は、17日に江藤農相が麻生太郎財務相と面会する。会合に出席した江藤農相は「災害もあり、一連の経済連携協定も出そろう中、(農家に)希望を持ってもらえるよう先頭に立って頑張る」と決意表明した。
党農林・食料戦略調査会の塩谷立会長は当初予算案の内報額を「枝ぶりのいい内容」とした上で、大臣折衝事項について江藤農相に「しっかり交渉していただきたい。激励を申し上げたい」とエールを送った。JA全中の中家徹会長は「現場実態に合ったスマート農業、輸出拡大の加速化を実現してほしい」と期待を寄せた。
大臣折衝事項のうち、「スマート農業実現」については、中山間地域など条件不利地の担い手、労働力不足解消に向けて、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの先端技術を現場で導入・実証するための予算獲得を重視する。
輸出力強化に向けて同省は、農林水産物・食品輸出促進法に基づき、今後設置される政府の司令塔組織による輸出証明書の申請・交付システムの構築などを進めたい考え。欧米への牛肉輸出には危害分析重要管理点(HACCP)の認定が必要なことを踏まえ、HACCPに対応した施設など輸出拠点の整備も課題に挙げ、予算の確保を目指す。
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2019年12月13日

イノシシ捕獲に手引 環境、農水省 ウイルス拡散を防止
環境省と農水省は、豚コレラ(CSF)、アフリカ豚コレラ(ASF)対策として野生イノシシの捕獲に関する防疫措置の手引を作成した。国がイノシシ捕獲の手引を作成するのは初めて。野生イノシシの捕獲を強化する必要がある一方で、捕獲でウイルス拡散の恐れがあることから、狩猟者に防疫の手法を徹底する。
手引では、これまで農水省がイノシシ捕獲に関して通知していた文言や特定家畜伝染病防疫指針などを踏まえ、捕獲作業の事前準備から帰宅後の対応までを写真と共に掲載した。
現地に到着し、わなの設置や見回りをする前に手袋や長靴を装着するなど、作業ごとのポイントを解説。手袋は二重に装着し、内側のゴム手袋は洋服の袖口を覆うように着用するなど詳細に注意を呼び掛けた。
防護服や靴底の泥落としに使うブラシなどの持ち物チェックリストも併記している。環境省は「イノシシを捕獲する中で、豚コレラが拡大してしまうことを防ぐため、あらゆる捕獲に関する防疫手法をまとめた。手引を参考に、各地域で必要な防疫対策をしっかり行ってほしい」(野生生物課)と呼び掛ける。
手引は、アフリカ豚コレラが発生した際にも活用できる。
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2019年12月13日
来年度予算 農水2・3兆円台で調整 閣僚折衝で上積みへ
政府は11日、2020年度の農林水産関係予算を、19年度と同水準の2兆3000億円台とする方向で調整に入った。農水省は閣僚折衝で上積みし、総額の前年度超えを目指す。転作助成金に当たる水田活用の直接支払交付金は、当初予算比で165億円減の3050億円の方向。一方、19年度農林水産関係補正予算の総額は5849億円とする方針が固まった。……
2019年12月12日