価格では戦えぬ 経営安定へ対策拡充を 日米協定強い懸念 乳用種産地の北海道士幌町

牛に牧草を与える力石さん(北海道士幌町で)

 北海道の畜産現場で日米貿易協定への危機感が強まっている。特に懸念されているのが、安価な米国産牛肉と肉質が近い国産乳用種。競合による価格低下が心配される。国産乳用種は、和牛より値頃感がある国産牛でテーブルミートとして需要は底堅く、農家の経営安定対策が求められている。

 北海道士幌町。乳用種頭数が約3万頭と全国屈指で、同町が管内のJA士幌町は乳用種去勢牛の産地化を進めてきた。ホクレンを通じ都府県のスーパーを中心に出荷している。消費地との関係強化にも注力。乳用種農家らでつくる同町肉牛振興会は毎年、スーパーの担当者を招き、給餌などを体験してもらうなど交流し、信頼を築いている。今年は地域団体商標を取得し、ブランド力向上にも余念がない。

 国産乳用種は、値頃感があり、海外産より安全・安心な国産牛として人気だ。しかし、相次ぐ大型貿易協定の発効や、日米貿易協定で関税削減が見込まれ、苦境に立たされようとしている。

 政府の試算では、米国など海外産の牛肉価格は競合する国産乳用種の6割程度。関税削減で価格差はさらに広がり、需要を奪われかねない。農水省によると、環太平洋連携協定(TPP)と日米貿易協定による牛肉の生産減少額は最大約786億円。全品目の中で最も多く、北海道は2割ほどを占める。

 さらに近年は、和牛生産に誘導するTPP対策などで乳用種雄の頭数は減少傾向で、子牛やもと牛の価格は上昇。枝肉価格は高まっているが、経営を圧迫する。

 こうした状況でも、振興会メンバーは、取引を続ける実需者への供給責任を果たすため、懸命にロス削減や効率化を徹底している。同振興会会長で乳用種約1000頭を飼う力石和彦さん(45)は「より良い牛をどうつくるか、一人一人が信念を持って取り組んでいる。価格では太刀打ちできない。意欲ある生産者が経営を続けられるような対策を打ってほしい」と訴える。

 産地は畜産経営の安定に向け、畜産クラスター事業の要件緩和などを求めている。

 JA士幌町は「今後も需要に応えていくためにも、農家が再生産できるような対策が必要だ」(畜産部)と要望する。
 

増える食品輸入監視強化を 安全検査実施1割


 2018年度の輸入食品の届け出件数が過去10年で最も多くなる一方、安全性を確認する検査割合が8・3%にとどまっていることが、厚生労働省のまとめで分かった。TPPなど大型貿易協定の発効で、輸入食品の増加が見込まれる中、国民の安全な食生活を守るためにも、国の監視体制の強化が必要といえそうだ。

 輸入食品の届け出件数は年々増えている。1975年は30万件を下回っていたが、貿易の自由化で右肩上がり。2010年度に200万件を突破、18年度は248万件の届け出があった。

 輸入食品は輸入時、届け出審査を経て、必要に応じ食品衛生法に適合しているか確認する検査を行う。①初輸入時など定期的に輸入者が行う指導検査②多様な食品を幅広く監視するため統計学に基づき計画的に国が行うモニタリング検査③違反の可能性が高いものは輸入の度、輸入者が行う検査命令──がある。

 18年度は指導検査約9万2000件、モニタリング検査約5万6000件、検査命令約6万件で合計は約21万件。届け出件数約248万件に対し検査割合は8・3%だった。検査割合は、中国製冷凍ギョーザ事件後の09年度(12・7%)をピークに減少している。

 こうした状況について食ジャーナリストの小倉正行さんは「輸入はさらに急増する。9割を超える食品が届け出審査だけで、検査を経ずに国内流通している。安全性は担保できるのか」と監視体制を疑問視する。

 また、大腸菌などの微生物や有毒物質に汚染し法違反となったのは780件(延べ813件)で廃棄や回収などの措置が取られた。検査命令約6万件に対する違反割合は0・35%だが、小倉さんは「安全性を高めるため、食品監視員や検査件数を増やすなどの対応が必要」と指摘する。
 

おすすめ記事

農政の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは