厳しさ増す1次産業と流通 連携で難局乗り切れ ナチュラルアート代表 鈴木誠

鈴木誠氏

 今年も、残すところ1カ月。1次産業とその関連する流通業者などを含め、今年は年初から厳しい年と予想していたが、その予想を超える厳しさとなった。度重なる自然災害に加え、環太平洋連携協定(TPP)、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が相次いで発効し、農産物の輸入枠が拡大。さらに消費税増税などによる消費低迷と1次産業や地方経済の構造疲労による衰退。これらを踏まえると来年は、さらに厳しい年と覚悟しなければならない。

 今後、自然災害の頻発は、避けては通れない。災害が少なかった地域も、例外ではない。事前対策は全て行うことが求められる。栽培品目やビジネスモデルを変えるといった思い切った対策が必要となる。保険の見直しも必須だ。
 

輸出拡大で対応


 今年は、実質的に農産物の輸入解禁元年となった。スポット輸入ではなく、継続的にルーティンに組み込まれる輸入農作物が拡大した。今後も、輸入品がより大きな脅威になる。ただ、海外から攻め込まれるばかりでなく、日本側もグローバル産業に転換し、迎え撃つ必要がある。輸出拡大に向け、異業種や海外との連携がこれまで以上に大切だ。

 外食産業や量販店を見れば、食品関連の個人消費低迷は明らかで、来年もこの基調は続く。東京オリンピックによるインバウンド(訪日外国人)需要など、一時的な特需はあっても、総じて消費構造は弱い。高齢化・少子化・個食化で、食品が売れない時代になっている。

 そこで農家や漁業者は、過去の延長ではなく、競争優位性のある新たな未来型経営への転換が求められる。その他大勢の一人として、個性のない昔ながらの経営は限界だ。加工や冷凍などの高付加価値化もより重要になる。

 流通業者は、来年6月施行の歴史的な卸売市場法改正を契機に、本格的な自由競争に突入する。この期に及んで、まだ過去に依存する企業は淘汰(とうた)されていく。そもそも既存プレーヤーが多過ぎる流通業界では、合従連衡は待ったなし。単独で生き残れる企業は、ほぼ皆無だ。バスに乗り遅れる前に、直ちにアクションを起こすことが必要だ。
 

未来への投資を


 今後は、危害分析重要管理点(HACCP)対応など未来への投資もより重要になる。そのために、ファイナンス能力も強化する必要がある。業界特化型ファンドや、業界では実績が少ない上場も、選択肢になる。目先の生産や売買に明け暮れ、未来への投資ができなければ、企業や産業は衰退する。

 働き方改革も大きな負担となり、構造改革のトリガーになった。これを機に、IT化・人工知能(AI)化を進め、より少数精鋭で対応できる筋肉質な組織構築が求められる。

 ベンチマークは、同業者ではなく、他産業や海外勢。そして、このような難局を乗り越えるためには、何よりも勉強し、人材を育成することだ。新たな歴史を切り開くのは、いつの世も教育であり人だ。

 やるべきことは山積だが、何をすべきかは明らか。行動あるのみだ。現状維持は一見安全に思えるが、それが最大のリスクとなる。ただ、行動する意思はあっても、個々ではとてもハードルが高い。だから、合従連衡であり連携プレーだ。これまでの「独善的で属人的な」といった時代は終わった。これからは、協調性とバランス感覚を持ち、皆で力を合わせ、産業の構造改革と発展を導かなければならない。

 すずき・まこと 1966年青森市生まれ。慶応義塾大学卒。東洋信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)を経て慶大大学院でМBA取得。2003年に(株)ナチュラルアートを設立。著書に『脱サラ農業で年商110億円! 元銀行マンの挑戦』など。

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