マルチ作家の永六輔さんは、言葉集めの才人だった

 マルチ作家の永六輔さんは、言葉集めの才人だった。普通の人々のなにげない言葉に耳を澄ました。一番書きたかったのが「職人」の世界だった▼同名の著書には、気っ風のいい職人たちの言葉が並ぶ。「職業に貴賤(きせん)はないと思うけど、生き方には貴賤がありますねェ」。その生き方を端的に表すのがお金。「いいかい、仕事は金脈じゃない、人脈だぞ。人脈の中から金脈を探せよ。金脈の中から人脈を探すなよ」▼永さんには、お金にまつわる原体験がある。中学生の時、NHKの番組に投書して、初めて謝礼をもらった。それを聞いた近所の職人、ほめた後に言った。「(大人になったら)なぜくれたのかわかる金だけをもらえよ。なぜくれるんだかわからない金は、絶対もらうんじゃないぞ」。そして永さんは思う。「この言葉を政治家と役人に伝えたい」と▼永さんが逝って3年。訳のわからない金が飛び交っている。不透明な原発マネー、企業談合の裏金、「政治とカネ」の不祥事も後を絶たない。極めつけは、首相による公金を使った支持者接待の「桜疑惑」。供応を受ける側に反社会的勢力やマルチ商法の張本人がいたらしい▼公と私のけじめなく、金脈と人脈が入り乱れる花見の宴(うたげ)である。〈花開けば風雨多し〉。政権に冬の花嵐が吹き荒れる。
 

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは