[ゆらぐ基 広がる危機](1) 疲弊する青果物輸送 5年で運べなくなる

九州からトラックを走らせた後、大田市場で青果物を降ろすドライバー(東京都大田区で)

 農村と都市を結ぶ農畜産物の物流が揺らいでいる。深刻なトラックドライバー不足や人件費高騰が理由だ。日々の食べ物を遠方に頼る消費者の暮らしに影響が出かねない。一方、農村の人手不足対策には政府がスマート農業の普及に力を入れる。大きな期待がかかるものの、全ての課題を解決する万能の技術ではない。食を支える現場を追った。

 全国の青果物が集散する東京都中央卸売市場大田市場。午後7時、翌朝取引する青果物を載せたトラックが、全国各地から次々と到着する。運転歴20年以上の40代ドライバーは、複数個を結束した重さ9キロのミニトマトの箱をトラックから降ろし、指定パレットに積み込む。ナンバーの地名は「佐賀」。1000キロを超える道のりを走破した後、この重労働に当たる。

 青果物輸送はトラックの荷台に直接荷物を載せる「じか置き」が多い。「手荷役に2時間、長い時は4時間以上かかる」。翌日は長野県に向かい、リンゴを積み、佐賀に戻る。「きつい仕事なので若手のなり手が少ない」とつぶやく。
 

「過重」で敬遠 時間外規制も


 輸送業者の本来の業務は輸送で、荷物を受け取るのは市場側の作業だ。しかし、青果物輸送はドライバーがサービスで荷役を請け負う。産地でも積み込みを輸送業者が担う事例が多く、青果物は他の荷より負担が大きい。九州の物流業者は「青果物を敬遠する業者が増えている」と明かす。

 輸送業者の負担を軽減しようと国は7月から監視を強化。荷物の出し手・受け手がドライバーに重い負担を強いた場合、企業・団体名を公表する。事務局の厚生労働省は「悪質な場合は指導する」との姿勢だ。

 「産地と市場が変わらなければ、5年以内に九州から関東へ荷を運べなくなる」

 福岡県内の輸送業者でつくる福岡県トラック協会の食料品部会役員らは明言する。2024年4月にトラックドライバーの時間外労働上限規制が始まるからだ。

 現状、多くの産地がドライバーの長時間残業を前提に、市場に青果物を運ぶようトラックを仕立てている。福岡から東京に運ぶ場合、夕方に受けた荷物を翌日の夜までに届けていたが、規制後に同じ日数で届けるのは難しい。遠隔地ほど安定供給が難しくなる。

 同部会部会長を務めるイトキューの中原理臣社長は「青果物流通は、輸送会社だけの問題ではない。産地と市場も自分事として受け止め、合理化に向けた話し合いの機会をつくってほしい」と要望する。青果物輸送は、産地や流通業者だけでなく、消費地の実需者や消費者にも影響を与える国民的な課題といえる。
 

産地体制を再構築


 輸送業者の窮状を受け、輸送体制の再構築に乗り出す産地もある。JA宮崎経済連は、選果場で集めた青果物の一部を、一度予冷庫で保存し、翌日出荷するようにした。前日に出荷量が確定するため業者はトラックの手配がしやすく、朝から積み込みができ余裕を持って荷物を運べる。

 収穫から市場に届く日数が1日伸び、生産者の反発があったが、予冷した方が鮮度維持できること、輸送業者が厳しい状況であることを担当者が根気強く説明し、理解を得た。輸送業者の業務は効率化できるが、産地は予冷庫を使うためコストがかかる。

 それでも改革に踏み切った理由について、経済連は「輸送業者は物流の基盤だ。今後も消費地に安定して運ぶには、歩み寄りが必要だ」と強調する。

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