築200年の用水で小水力発電 小型EVに活用し地域の課題解決 猿パトロール成果 三重県多気町勢和地区

小型EVで地区内を回りながら発信機で猿の存在を確認する地主さん(三重県多気町で)

 三重県多気町勢和地区は、約200年前に作られた農業用水を小水力発電に利用し、地域活性化に役立てている。発電した電気は小型電気自動車(EV)に活用。農作物を荒らす猿の追い払いや、地区の高齢者の安否確認を行う見守り活動に取り組んでいる。(木村薫)
 

住民で法人 7台巡回


 農業用水「立梅用水」は1823年に完成し、全長30キロにわたり地区内を流れる。近年は農家が減ってかんがい用の利用が減少。地区全体で用水を地域づくりに役立てようと、町や土地改良区などが小水力発電に着目した。建設会社や九州工業大学、県なども協力し、2012年に発電が始まった。

 落差50センチの用水路を流れる毎秒0・2トンの水が、設置した発電装置のプロペラを回し、最大700ワット時を発電できる。発電した電気は1人乗り小型EVや街灯、雨量計の電力として地区内で利用している。

 EVは地域活性化のため設立された一般社団法人「ふるさと屋」が使う。同法人は農家をはじめ地域住民や、目的に賛同する県外の企業などで構成するが、所属する個人が所有するものを含め、7台を活用する。

 同法人の地主昭博さん(64)は、地区内の移動手段として小型EVを使いながら、週3回ほど猿の追い払いをしている。猿に付けた発信機を受信できる装置を載せて移動。猿に近づき鳴き声などを確認すると、場所や日時などをスマートフォンを使い、すぐに同法人のホームページ(HP)にある「ふるパト(ふるさと屋+パトロール)マップ」に反映させる。

 活動を始める以前は、猿にカボチャを200~300個取られたり、住民が襲われたりするなどの被害があった。しかし、地主さんらが追い払いを始めてから、猿による被害は減少。地主さんは「リアルタイムで猿の位置を反映するので、HPを見て自主的に追い払いをする住民もいる」と話す。

 「ふるパトマップ」では猿の動きが分かるよう、調査日や位置情報の精度もアイコンの色や枠線で示している。17年から本格的な運用を始め、現在では七つの群れを把握している。

 発電など、小水力利用の普及を進める全国小水力利用推進協議会の中島大事務局長は「小水力発電で小型EVを動かし、猿の追い払いに活用している事例は珍しい。有害鳥獣対策は今後の地域づくりで重要になってくるので有意義な取り組みだ」と評価する。

 地区の水稲農家で、同法人の理事も務める高橋幸照さん(63)は猿の動きについて小・中学校などからの問い合わせもあると言い「他地域では猿が児童を襲う事例もある。小・中学校への情報提供も強化していきたい」と意気込む。
 

単身高齢者 見回りも


 小型EVを、高橋さんは高齢者の見守り活動にも利用する。地区内にいる約100戸の1人暮らしの高齢者を定期的に訪問して、元気かどうか確認する。今後は三重大学と協力し、音声で操作を指示できるスマートスピーカーを置いてもらって、安否確認できる仕組みを作る予定だ。
 

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