[風をとらえる] スマート農業 有効利用へ地域連携を

 あなたの経営に必要な「スマート農業」は何か、と問われたとき、最初に思い浮かぶのは何だろうか。無人で動くトラクター、病気をいち早く予測してくれる人工知能(AI)。必要な機械・機器を有効利用できるよう、これまで以上に農家同士の情報交換やJA営農指導員の役割が重要になる。

 生産現場のあらゆる場面で「スマート農業」という言葉が浸透してきた。期待が高まる一方で、それは一体何なのかという不安も付きまとう。

 農水省が公開するスマート農業技術カタログでは、申請があった265の機具・サービスなどをまとめた。そこでは、大きく分けて①資材や売り上げ、労務などを扱う「経営データ管理」②気象や熟練農家のノウハウなどを使う「栽培データ活用」③水田の水管理や畑のかん水、ハウスの温度管理などをする「環境制御」④農機の運転アシストなどの「自動運転・作業軽減」⑤センシング・モニタリング──に分類している。

 経営管理以外の作業について多くのシステムに共通するのがセンサーだ。センサーの価格が下がり手に取りやすくなったことが、商品の増加を後押しした。人間が見たり感じたりできない部分を数値化し、それを使って作物の管理に役立てる。

 ここからが農家の腕の見せ所だ。センサーでは、設置した部分だけの数値しか分からない。また、故障することもあるだろう。モニターに映る数値は、間違うことはないか。どの位置に設置することが最善か、判断が作物の成長として結果に出る。

 どの機器をどう使うか、なかなか個別の農家だけで見極めることは難しい実態もある。取材していると、同じような数値が測定できる機器を複数導入し、項目によってどの機械のものを使うかを判断している経営が増えているように感じる。一方で期間を決めて試用品を使っている例もある。高額で頻繁に買い替えるのは難しいものもある中で、普及が進むにつれて今後、こうした試用品を用意するメーカーは増えていくだろう。

 試用する際は個々の農家ではなく、地域の仲間と共に多様な機種をさまざま使い方で計画的に並行して試してみる。そうすることで、有効な機器の選定と効果的な使い方にたどり着きやすくなるはずだ。それには計画の立案・調整役も必要になる。

 九州のトマト産地では、肥料成分などの環境が推奨値から明らかに外れた状態でも、高収量を上げている農家がいる。現時点の知見に合わせた栽培は大失敗は防げるが、推奨値で得られる以上の成長を期待するのは難しい。

 地域農業の持続的な発展には機械・機器や数値に振り回されず、気候や風土に根差した工夫ある栽培を産地で共有することが大切だ。スマート農業の導入でも、農家のつながりとともに、企画・調整役をはじめJA営農指導員への期待は大きい。

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