年明けらしく〈1〉尽くしで

 年明けらしく〈1〉尽くしで。今年生誕111年を迎えた知の巨人ドラッカー。日本画の深淵さに魅せられた一人でもあった▼名著『マネジメント』は多くの経営者に影響を与えた。来春のNHK大河「青天を衝(つ)け」主人公で、新1万円札の顔・渋沢栄一との関係も深い。同著で渋沢を「歴史的な人物で偉大な明治を築いた」と描く。さらに「企業の社会的責任の先駆者」と評す。偶然にも命日も11月11日と同じである▼渋沢の真骨頂は〈論語と算盤(そろばん)〉に集約される。論語すなわち社会的道徳と、算盤に例えた経営は表裏一体であると。ドラッカーも共感した。もう一つの共通点は美術、芸術への深い愛着である。渋沢は経営者の傍ら、日本美術協会の評議員を務め帝国劇場設立にも関わる▼一方で、ドラッカーは日本画に傾倒した。千葉市美術館での「ドラッカー・コレクション水墨画名品展」でよく分かった。彼は「正気を取り戻し、世界への視野を正すために、私は日本画を見る」とも述べた。利潤追求に走る資本主義に警鐘を鳴らす理論構築の中で、日本画は一服の清涼剤の役割を果たした。現在評価が高まる雪村周継(せっそんしゅうけい)ら希少な室町時代の水墨画の逸品を多く収集したことに驚く▼2人の経営哲学者は、文化に造詣深く芸術の“目利き”でもあった。

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは